トヨタの勝田貴元、WRCフィンランドで総合6位を獲得


2021年FIA世界ラリー選手権(WRC)第2戦アークティック・ラリー・フィンランドの最終日デイ3が2月28日、フィンランド北部ロヴァニエミの南側エリアで行なわれた。

69号車(カッレ・ロバンペラ、ヨンネ・ハルットゥネン)
69号車(カッレ・ロバンペラ、ヨンネ・ハルットゥネン)

今回は、当初第2戦として予定されていたシーズン唯一のフルスノーイベント、ラリー・スウェーデンが、新型コロナウイルスの影響により中止となり、その代替イベントとしてフィンランド北部を舞台とする「アークティック・ラリー・フィンランド」が、第2戦に組み込まれたという経緯がある。

このラリーの中心となる都市ロヴァニエミは、北極圏の入り口にあり、冬季は豊富な積雪に恵まれている。ステージ設定は、同じエリアで毎年1月に開催されるアークティック・ラップランド・ラリーと多くが重なったが、進行方向が逆であったり、新たなステージが設定されるなど、WRCのためにデザインされた、新規のラリーとして開催された。

ロヴァニエミの周辺に展開するステージは、その大部分が森林地帯のスノーロードで、最高速度が180km/h以上に達する超ハイスピードなセクションと、道幅が非常に狭くツイスティなコーナーが連続するテクニカルなセクションの両方がある複雑なステージ構成のラリーとなった。

1号車(セバスチャン・オジエ、ジュリアン・イングラシア)
1号車(セバスチャン・オジエ、ジュリアン・イングラシア)

トヨタWRCの緒戦、ロバンペラがドライバー選手権の首位に立つ

同WRCフィンランドで、TOYOTA GAZOO Racing World Rally Teamのカッレ・ロバンペラ/ヨンネ・ハルットゥネン組(ヤリスWRC 69号車)が総合2位。

エルフィン・エバンス/スコット・マーティン組(33号車)が総合5位。セバスチャン・オジエ/ジュリアン・イングラシア組(1号車)が総合20位でフィニッシュ。20才のロバンペラは史上最年少記録でドライバー選手権のトップに立ち、トヨタのWRCチームはマニュファクチャラー選手権で首位を守った。

69号車(カッレ・ロバンペラ、ヨンネ・ハルットゥネン)

競技3日目となったデイ3は、サービスパークの南側に展開する全長22.47kmの「アイッタヤルヴィ」を、サービスを挟むことなく2回走行する2本計44.94kmのステージで戦われた。

デイ2終了時点でトヨタのロバンペラは、首位と24.1秒差、総合3位のライバルと1.8秒差の総合2位につけた。続くデイ3オープニングのSS9で2番手タイムを記録。

その再走ステージとなる最終のSS10ではベストタイムをマークし、僅差で迫っていた総合3位のライバルを抑えきることに成功。これまでの自己最高位だった昨年のラリー・スウェーデンでの総合3位を上回る、総合2位でフィニッシュした。

最終のSS10は、トップ5タイムを記録した選手とマニュファクチャラーに対し、ボーナスの選手権ポイントが与えられる「パワーステージ」に指定されており、ベストタイムで最大ボーナスの5ポイントを獲得したロバンペラは、ドライバー選手権で初めて首位に立った。

勝田・バリット組
勝田・バリット組

トヨタの勝田貴元、WRCフィンランドで総合6位を獲得

デイ3に総合5位で臨んだエバンスは、10.1秒先行する総合4位のライバルを激しくチャージ。SS9では今大会2回目となるベストタイムを記録し、差を3.6秒に縮めた。

しかし、最終のパワーステージでは6番手タイムに留まり、逆転には至らず総合5位でフィニッシュ。エバンスとロバンペラが獲得したポイントにより、トヨタチームはマニュファクチャラー選手権首位の座を守った。

一方、デイ2の最終ステージでデイリタイアとなったオジエは、デイ3で再出走。不利な早い出走順での走行となったが、パワーステージでは5番手タイムを記録し、ボーナスの1ポイントを獲得した。

その結果、ドライバー選手権首位の座は失った。しかしエバンスと同ポイントで2位のライバルと4ポイント差の3位につけている。

なお、TOYOTA GAZOO Racing WRCチャレンジプログラムにより、ヤリスWRCで出場の勝田貴元は、最終のパワーステージでひとつ順位を上げ、前戦ラリー・モンテカルロに続き総合6位でフィニッシュ。2戦連続で8ポイントを獲得した。

そんな勝田は、過去に3度 国内選手権として開催されたアークティック・ラップランド・ラリーに出場しており、ステージの特徴についてはある程度理解していたが、WRカーでの出場は今回が初めてであり、新たな挑戦となった。

初日のデイ1は、2本のステージをともに8番手タイムで走行し、総合順位は7位。デイ2では7番手タイムを5回記録し、総合7位を堅持。最終日のデイ3ではSS9で5番手タイムを刻み、その再走ステージのSS10では順位をひとつ上げ、前戦ラリー・モンテカルロに続き、自己ベストリザルトである総合6位で完走。8ポイントを獲得した。

勝田は何度か小さなミスを侵したが、全体的に速さと安定性のバランスは良く、経験豊富なワークスドライバーと遜色ないタイムを何度も記録するなど、確かな成長を見せた。

合計10本251.08kmのステージを走行し、同じくヤリスWRCを駆り総合5位に入った、TOYOTA GAZOO Racing World Rally Teamのエルフィン・エバンスとのタイム差は36.3秒と、ラリー全体を通してのパフォーマンスはこれまでで1番とも言える 充実した内容の1戦となっている。

ヨンネ・ハルットゥネン、カッレ・ロバンペラ
ヨンネ・ハルットゥネン、カッレ・ロバンペラ

ヤリ-マティ・ラトバラ (チーム代表)
最終日カッレは総合2位を守り、パワーステージを制し、彼自身とチームのために多くのポイントを獲得するなど、今回のラリーでの彼のパフォーマンスは本当に素晴らしいものでした。

エルフィンは総合4位を目指して頑張りましたが、惜しくも届きませんでした。両選手権ともに首位をキープしているので満足するべきでしょうが、当然我々はさらに上の結果を狙っていました。

今回はチームにとってホームラリーだったので、優勝を期待していました。今回はクルマのセットアップに少し苦労し、ドライバーはラリーを通して完全にはクルマに満足していませんでした。

いくつかのステージでは速かったのですが、競争力のないステージもあったので、その理由を分析しなくてはなりません。

セバスチャン・オジエ (ヤリスWRC 1号車)
全体的に厳しい週末でした。できる限りのことはやりましたが、選手権首位でこのラリーに臨む我々にとって、厳しい戦いになることは最初からわかっていました。

それでも一生懸命戦ったのですが、昨日の最終ステージでの小さなミスが大きく響き、戦いから遠ざかることになってしまいました。今日のパワーステージは、我々の出走順を考えるとあまり多くを期待できませんでした。

路面には依然多くの雪がありましたが、これ以上は不可能なくらい限界ぎりぎりで走った結果、1ポイントを獲得できたのは良かったです。

33号車(エルフィン・エバンス、スコット・マーティン)
33号車(エルフィン・エバンス、スコット・マーティン)

エルフィン・エバンス (ヤリスWRC 33号車)
最終日は良いスタートを切ることができました。路面のグリップは予想以上に高かったのですが、最初の数コーナー以降は走りのリズムをつかみ、良いタイムが出ました。

しかし、その後のパワーステージではベストな走りをできませんでした。フィーリングは良かったのですが、タイムは狙っていたほどは良くありませんでした。

正直なところ、このイベントは我々にとってベストなものではなかったと思います。最終結果には失望しています。何度か速く走れた瞬間はありましたが、上位を狙えるほどの安定性はありませんでした。

カッレ・ロバンペラ (ヤリスWRC 69号車)
2位という結果には本当に満足しています。非常に困難な週末でした。とてもハードに攻めていたので適度なスピードを常に保つことはできませんでしたが、最後まで攻めの走りを続けました。パワーステージでは自分の全てを出し切って走り、それが上手くいき多くのポイントを獲得することができました。

初めてドライバー選手権をリードする立場となったことを、嬉しく思います。次のイベントには新たな状況で臨むことになりますが、今までのようにペースを守り、コンスタントに走る必要があります。

勝田貴元:この週末には満足していますが、さらにいい走りを見せたかったですし、ラリーが始まる前はもっといい結果を期待していました。

ステージはとても楽しく、区間タイムでは何度か最速でしたが、いくつかの区間では少し慎重になりすぎてタイムを失ってしまいました。コンディションが安定している時は自信を持って走れましたが、雪が緩んでいたり、大きな轍があるところでは、ドライビングを改善する必要性を実感しました。

表彰台に立ったり、優勝するためには、その部分に集中して取り組み、改善しなくてはなりません。まだまだ学ぶべきことは多くありますが、モチベーションは以前よりもさらに高まっています。

ユホ・ハンニネン(インストラクター):私としては、タカがヤリスWRCで出場したラリーの中で、今回がベストだったと思います。

もっと速く走り、より良い結果を得ることを彼が望んでいたのは知っていますが、それでもフィニッシュ時の上位選手とのタイム差は非常に小さく、間違いなくWRCでは過去最小の差でしたので、その点でも良いリザルトだと思います。大きなミスはなく、終始走りは安定していました。

もっと速く走ることもできたはずですが、クリーンで安定した走りを続けるためには、少しペースを落とす必要があることを彼は理解していましたし、それはとても重要なことです。今回のような結果が、今後のラリーで自信となることを確信しています。

豊田 章男(チームオーナー)
チームのみんな、雪の中のラリーフィンランドおつかれさまでした。カッレ、ヨンネ、2位獲得、パワーステージ1位獲得、そして、選手権ポイント首位おめでとう!
エルフィン、スコットも5位でポイントを獲得してくれました。
その仕事のおかげで、チームとしても首位キープができています。ありがとう!

今回は我々の地元フィンランドでの戦いでした。雪道のラリーがスウェーデンからフィンランドに移り、1つ増えたホームラリーで、チームは、なんとしても勝ちたいと思っていたはずです。ですので、ラリー直後に、チームから私に送られてきたメールの一言目は 「優勝を逃してすみません」でした。

途中でデイリタイアを喫したセブも、一番悔しいのは自分であるはずなのに、コースオフしてチームに戻ってきた時の一言目は「申し訳ない」だったそうです。本当に良いチームと戦えていると思います。チームのみんなに「ありがとう」と、こちらからは返しました。改めて言いますが、みんなありがとう!

今回のラリーは、チームとしては、決してベストコンディションではありませんでした。しかしチームは、起きた事に対して、すぐに優先順位を考えた行動をしてくれました。6位入賞の貴元も含め、こんなコンディションの中でのこの結果には感謝しかありません。

今シーズンは安全第一に加えて、健康第一も求められます。フィンランドでも3月からロックダウンが始まると聞きました。 健康に留意しながら「もっといいクルマづくり」、そして、「チャンピオン獲得」を目指していきましょう。

まずは来月のクロアチア戦に向けて、準備を進めてください。5ヶ月後には、もう一度、フィンランドでのホームラリーがあります。8月1日のフィンランドは、またあの場所でチーム全員が笑顔でヤリスを囲むことを願っています。

そこには私も、また笑顔で、シャンパンでベタベタになりながら立っていたいと思います。ファンの皆さまも健康第一で過ごしながら、引き続きTOYOTA GAZOO Racing World Rally Teamの応援をよろしくお願いします。

アークティック・ラリー・フィンランド デイ3の結果
1 _オィット・タナック/マルティン・ヤルヴェオヤ (ヒュンダイ i20クーペ WRC) _2h03m49.6s
2_ カッレ・ロバンペラ/ヨンネ・ハルットゥネン (トヨタ ヤリス WRC) _+17.5s
3_ ティエリー・ヌービル/マーティン・ヴィーデガ (ヒュンダイ i20クーペ WRC) _+19.8s
4_ クレイグ・ブリーン/ポール・ネーグル (ヒュンダイ i20クーペ WRC) _+52.6s
5_ エルフィン・エバンス/スコット・マーティン(トヨタ ヤリス WRC) _+1m01.5s
6_ 勝田 貴元/ダニエル・バリット (トヨタ ヤリス WRC) +1m37.8s
7_オリバー・ソルベルグ/セバスチャン・マーシャル (ヒュンダイ i20クーペ WRC) _+1m39.0s
8_ テーム・スニネン/ミッコ・マルックラ (フォード フィエスタ WRC) _+2m09.0s
9_ ガス・グリーンスミス/エリオット・エドモンドソン (フォード フィエスタ WRC) _+3m39.4s
10_ エサペッカ・ラッピ/ヤンネ・フェルム (フォルクスワーゲン ポロ GTI R5)_+6m07.0s
20_ セバスチャン・オジエ/ジュリアン・イングラシア (トヨタ ヤリス WRC) _+11m06.2s