東京R&D、チューリングと自動運転EVで戦略的提携


東京アールアンドデー( TOKYO R&D / 本社:東京都千代田区、代表取締役:岡村 了太 )は東京都港区で報道陣を募り記者会見を実施。完全自動運転車両の開発・販売に取り組むチューリング( TURING / 千葉県柏市、代表取締役:山本 一成 )と自動運転EVの開発・生産に係る戦略的パートナーシップの締結を発表した。( 坂上 賢治 )

同戦略提携により、東京R&Dが持つ車両開発に関する豊富な経験と、チューリングが強みとするAI・ソフトウェア技術をかけ合わせて、2025年に製造・販売を予定している自動運転EVを共同で開発する。

上記の戦略提携を宣言したチューリングは、2025年に自社オリジナルの自動運転EVを100台、2030年に「完全自動運転」を実現した上でステアリングを持たない10,000台の製造・販売を目指している。

より具体的には「We Overtake Tesla」をミッションに掲げ、完全⾃動運転EVの量産を⽬指す。

その源流は、世界で初めて名人を倒した将棋AI「Ponanza」の開発者である⼭本⼀成氏と、カーネギーメロン⼤学で自動運転を研究し、Ph.D.( 博士号 / Doctor of Philosophy )を取得した⻘⽊俊介氏によって2021年に共同創業した。

目下、千葉県柏市に本拠を据え、AI深層学習技術を⽤いた限定領域に留まらない「完全自動運転」の実現を目指している。そのコンセプトは、高性能なマルチセンシングシステムの充実を図るよりも前に、自動運転を司る高性能な頭脳(AI)に鍵があるとしている。

つまり車体各部に張り巡らせたセンサーによる情報収集よりも、そもそもの人間の脳と同じく、AIによる状況認知や判断が正確かつ優秀であるなら、自動運転は大きく進化するという考え方であるようだ。

対する東京アールアンドデーは、研究車両・試作車両などの受託開発を行う会社として1081年に発足。以来、量産試作車・競技用車両・関連部品などの研究開発、スポーツ用品の開発など幅広く活動している。

その一例では、スポーツカーVEMACの輸入・販売。慶応大学によるインホイール8輪EV「エリーカ( Eliica )」の開発。EV車両の開発。新潟県事業委託による小型燃料電池バス開発。環境省委託業務による燃料電池小型トラック開発。東日本旅客鉄道の気仙沼線BRT用電気バス( e-BRT )の開発などの数多くの実績を有する。

この両社はまず、2023年の取り組み( 今秋開催のJAPAN MOBILITY SHOR 2023出展を照準に据えている )として両社でオリジナルのシャシを設計・開発した上で機能を絞った「試作車」の製造を視野に据えた。

これらの取り組みについて東京アールアンドデー 代表取締役 岡村 了太氏は、「チューリングが目指す〝完全自動運転EVの量産メーカー〟と、東京アールアンドデーが目指す〝個性的でユニークなモビリティメーカー〟には、目指す方向性として共通するところが数多くあります。

そうした共通点を持つ両社は同じ目標に向かって突き進む同志です。この目標を達成するために、相互の得意とする能力を持ち寄り、一丸となって新時代のモビリティを創造して参ります」と述べた。

一方でチューリング 代表取締役 山本 一成氏は、「車両は非常に巨大かつ複雑なプロダクトであり、その製造には多くのノウハウや経験が必要です。

ゼロから完成車メーカーになることを目指しているチューリングにとって、東京R&Dが持つ長年の車両開発・製造経験はとても頼もしく、このような形でともに車両開発ができることを大変うれしく思っています」と話している。

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なお会見の実施に伴い、両社事業のロードマップとして概念的なロードマップを示していたが、現在のところ今回に限っては、具体的な内容を説明するには至らなかった。

ただ将来的に自動運転EVを目指すと言っても、筆者の限られた私見を踏まえても、日本国内に於ける政府の姿勢や、投資家のマインドを含めて我が国に於いては不確定要素が数多い。

仮に、2020年代・2023年代・・0240年代と個々の10年を区切っても個々の事業成長フェーズに適合する移動体事業の姿は、その様相を大きく変化させる可能性が高いと見ている。

実際、ここ数年を前提に据えても日本の移動体マーケットは国外とは大きく事情が異なる。近々の日本国内を限ると、国民全域に於いては高齢者が大きく増えていく状況にあり公共交通事業ベンチャーの、みちのりホールディングス・浅井康太ディレクターは「公共交通市場は2050年頃までに限ると成長産業だ」とする声もある。

視点を変えた国外でも、目下G7を筆頭とする先進諸国では乗用EV市場が伸びている一方で、それ以外の国際環境では、交通社会網の革新を喫緊の課題とする諸国は数多い。

例えばコロンビアでかつてボゴタ市長を務めたエンリケ・ペニャロサ氏( 1998年から2001年。更に2016年から1019年の任期で再選された )は「先進都市とは、貧しい人々が車を利用する都市ではなく、裕福な人々が公共交通機関を利用する都市です」と未来の交通社会が目指すべき社会像を語っている

従って乗用車市場に限らず、先の10年年単位の事業規模&期間によっては、公共交通に資する事業車両に注力する場面も有り得るかもしれない。

いずれにしても新たな移動体・移動市場を目指す中で、大きなマーケットを取る意欲に溢れるベンチャー企業の登場は、日本国内の未来を切り拓くための朗報と言えるだろう。