環状骨格によるボディ剛性の向上、VSCを日本でクラス初採用、さらに運転席と助手席にSRSエアバッグを標準装備するなど、優れた安全性を確保
トヨタ自動車株式会社(本社:愛知県豊田市、代表取締役社長:豊田章男、以下 トヨタ)は12月22日、東京都江東区青海のトヨタのショーケース「MEGA WEB」に於いて小型バス・コースターのフルモデルチェンジを公表し、全国のトヨタ店(大阪地区は、大阪トヨペット)を通じて2017年1月23日から発売すると発表した。
トヨタ自動車のコースターは、今から53年前の1963年。モータリゼーションの胎動期にあった当時の日本国内に於いて、25人程度の乗員が快適に乗り・移動できる小型バス需要の高まりを受け、同社から当初「ライトバス」という車名で誕生した。
その後、1969年のモデルチェンジを機に、車両名をコースターへと改称。以来、この車両ブランドは永く50年以上に亘って多くの利用者に親しまれてきた。
そんなコースターは今日に於いては、狭い日本国内市場を飛び出し、世界の様々な地域で人の移動を支え続け、多様かつ過酷な運転環境を問わず110以上の国や地域で販売。これまでの累計販売台数は、実に55万台以上に達するという国際商品になっている。
もちろん日本国内に於いても、日野からリリースされているOEM車「リエッセII」と合わせた年間販売推移で、常に3000台前後を記録(2016年1月〜11月期は既に3500台目前)しており、飲食店やホテル、幼稚園の送迎など様々なシーンで日々活躍している。
特に1993年発売の従来型モデル(3代目)は、永年、細かなマイナーチェンジを繰り返すことで車両の信頼性を着実に積み上げ、その高い安定感を糧に市場・業界を問わず一定の評価を得てきた。
但しその一方で、国際社会からの要請も受けて、新たな設計思想と安全装備の充実などが求められるようになっても来ていた。
新型コースターは、今年4月に発足した新組織「CV Company」から初リリースされる記念すべきフルモデルチェンジ車に
そこで今回のフルモデルチェンジでは、より永く愛され愛着を持って親しまれる息の長い製品であることを目指し「安全機能の充実」「快適性向上」「次世代の小型バスに相応しいデザイン」「信頼性の高いクルマ」の4つ観点で、車両各部を丁寧に磨いた。
加えてこの新型コースターの開発過程途中に於いて、商用車の開発から生産までを一貫して行う「CV Company」が今年4月に発足。新たなカンパニー制度が生まれた新組織を介して初リリースされるフルモデルチェンジ車になった。
このため、車両発表会の席上はCV Companyそのものの初披露も含む会見となり、トヨタ車体の代表取締役社長も務めるトヨタ自動車専務役員の増井敬二カンパニープレジデントがまずは登壇。
「世界各地の生活を支え続けるクルマ」を担当する社内カンパニーとして、トヨタ自動車・トヨタ車体・日野などトヨタグループ内に於けるCV造りの知見を結集すること。
そして、乗用車部門に倣う「もっといいCVづくり」を目指して、製品軸を束ねていきながら、世界各国に於ける利用者の生活を面で支えるクルマ造りに取り組んでいきたいと、1977年に京都大学法学部卒入社後、調達部門を経て生産管理部長も務めた「現場実践派」ならでは意気込みを語った。
室内高と室内幅の拡大、静粛性の向上、フラットな乗り心地で、乗客がゆったり過ごせる快適な室内空間を実現
今回フルモデルチェンジを果たした新型コースターの車両概要は以下の通り
ボディの高剛性化、安全装備の充実
車両説明にあたって、先の増井氏に続いて登壇したのは今回のコースターの開発を担った山川雅弘主査。
山川氏は、まず今回のコースターのボディ造りに関して、今後要求性能が高まってくると見られる国際基準を勘案して、ルーフ、側面、フロアの骨格をループ状に繋いてボディ骨格強度を高めた環状骨格を採用したと語る。
併せて、利用される高張力剛板の採用範囲も大きく拡大させ、骨格・鋼鈑の組み立てに於いては既存のスポット溶接からレーザー接着に移管して骨格構造の基本強度を大きく高めている。
そもそも新型コースターでは、バス車両に於けるボディ強度について世界的な安全評価基準である欧州統一車両法規(Economic Commission for Europe regulations)の「ECE基準」に適合させた他、そのECE基準で定めているバスの上部構造の強化に関する統一法規「R-6(ロールオーバー性能)」でも高い性能を持つ高剛性ボディとしたと云う。
実際、壇上では横転事故を模したロールオーバーテストの映像を交えて、不測の事態に於いてもボディ上面が大きく変化することのない堅牢なボディ骨格を紹介。
仮に実走行環境下で横転したとしても、細かなピラー部材による補強を施すなどで、現在の安全基準を上回る生存空間の確保が可能である理由を語ってくれた。
シンプルでスクエアなキャビンと力強いアンダーボディとの組み合わせにより、モダンかつ様々な環境で使用できるタフなイメージを予感させるスタイルを実現
静かな室内と、フラットで快適な乗り心地を実現
また車両の運動性についても、VSC(車両安定制御システム)を、日本国内に於いてクラス初採用(全車標準装備)し、コーナリング時の横滑りを抑制できたことも発表。これにより車両走行時の安定性が大きく改善している。
上記と同じ目的を目指して足回りでは、より良質なスタビライザーをフロントとリヤに装備すると共に、ショックアブソーバーの減衰力を最適化。ボディ剛性の向上と相まって、フラットな乗り心地も実現している。
併せて先の環状骨格化によるボディ剛性確保の他、エンジンカバーの構造変更、ボディシール構造の強化、防音材を最適配置するなどで、走行負荷状態であっても物理的な音圧を下げることで室内環境の静粛性を高めた。
加えてその室内では、運転席と助手席にSRSエアバッグを標準装備。さらに万が一の際、瞬時にシートベルトを巻き取り早期に乗員を拘束するプリテンショナー機構や、胸部に加わる力を低減するフォースリミッター機構を採用するなど、乗員の安全・安心を確保した。
もちろん先のECE基準に応えて、シートベルトは標準シートでは3点式ELRを全搭載。通路側折り畳み式の補助シートに関しても2点式ELRシートベルトを搭載している。
ドアステップの奥行きを65mm拡大し乗降性を向上。広く上質な室内空間も確保
外界の視界確保という面で運転席エリアは、フロントガラスの開口部を広げ運転時の死角を削減させた。
そのほか、ヒューマンインターフェース理論に沿って運転時の視線の動きについても配慮し、ドライバーが運転に集中し易いコックピット環境の実現に腐心している。
同じく機能スイッチでは、各々の役割毎に組み込み位置を最適化しただけでなく、携帯電話等の電子機器の収納スペースなども確保する等、現代社会に相応しい利便性と快適性を確保した。
その後方の客室エリアは、室内高を60mm高くした(室内高1890mm)事で客室空間の頭上のスペースを広げて快適性の向上を実現。
さらにシート窓側のスペースは肘が置ける程度(約40mm)外側へ空間を拡大。サイドウインドゥの上下高も50mm広げて、走行時の景色をより快適に愉しめるようした。
客室乗員への快適性の確保は、着座状態だけでなく、ルームラックも室内天井面とラックとの高さを60mm拡大し、荷物の収納力を高めている。
併せてラック位置自体も140mm外側へ配置移動したことで、客室内の移動に於ける自由度を高めただけでなく、着席時の圧迫感や不便さも大きく改善させている。
シンプルでスクエアなキャビンと力強いアンダーボディとの組み合わせにより、モダンかつ様々な環境で使用できるタフなイメージを予感させるスタイルを実現
UVカットガラスの採用により、外光からの影響低減も図る
開口部を大きく取った窓形状には外光からの刺激をやわらげるUVカットガラス(EX並びにGX仕様には濃色グレーサイドウインドウガラスを搭載)を採用。
さらに「EX」仕様では、シート表皮は合成皮革とファブリックを組み合わせ、成形縫製にダブルステッチをあしらう等高級感を演出。これに併せてシートクッション材に低反発ウレタンを採用することで着座時のフィット感も高めた。
エクステリアデザイン面では、ルーフサイドに面取りを効かせ、シンプルでありながら目を引くモダンなスタイルとした。
またサイドを上下分割したキャラクターラインは、タイヤ周りを強調したアンダーボディデザインを採用。このキャラクター上側はモダンキャビンコンセプトとして空間の広さや開放感を強調。
一方、下側のアンダー部は、そのデザインに相応しくキャビン自体の構造強度をより固める施策を行い、シャシー下部でボディ全体をしっかり支える構造としている。なお外板色では、ベージュメタリック、ホワイトを含む全6色が設定されている。
なお先代モデルと同様、永い視野の元で開発・生産されていく世界戦略車ではコースターは今後、同社の乗用車ブランドでは一般的装備なっている最新の安全装備群に関しても、追って追加搭載させていく意向と語っている。
まずはECE基準に合致した基本コンセプトで固め、今後はパワーユニットなども含め、新たな車両仕様も追加されていくものと見られる。
販売概要は、全国のトヨタ店(大阪地区は、大阪トヨペット)を介して月販目標台数は160台を想定。車両生産は、拠点自体を岐阜車体工業の本社工場に移管し、CV Companyに相応しい未来を見据えた生産体制構築を目指す構えだ。
メーカー希望小売価格
バス(北海道、沖縄のみ価格が異なる。単位 : 円)
ビッグバン(北海道、沖縄のみ価格が異なる。単位 : 円)
コースター 車両情報: http://toyota.jp/coaster/