NTN、e-Axle用「樹脂モールド絶縁軸受」の量産を開始

NTN(本社:大阪市北区、取締役 代表執行役 執行役社長 CEO:鵜飼 英一)は5月16日、EVの駆動源としての役割を担うe-Axleに使用される軸受としてEV特有の課題である電食を抑制する「樹脂モールド絶縁軸受」の量産を開始した。

通常、e-Axleを駆動する電流が軸受内部を通過すると、軸受の軌道面が損傷する電食が発生することがある。損傷が進行すると振動や異音などに繫がるため、e-Axle用の軸受には電食対策が求められる。

今回発表した「樹脂モールド絶縁軸受」は、軸受の外輪外径面及び、幅面に樹脂絶縁層を射出成形することで電食の発生を抑制する役割を持っている。

耐電圧1,000V以上の絶縁性を確保している他、樹脂絶縁層は材料面及び、成形技術面から優れた耐久性を有し、広範囲の温度変化にも対応可能で、かつ軸受の組み付け時にも剝がれにくい特長を持つという。

そんなe-Axle用「樹脂モールド絶縁軸受」が、海外の自動車メーカーが製造するEVのe-Axleに採用された。

採用までの流れは、採用車種の軸受の使用条件などを踏まえて、耐電食軸受のラインアップから最適な商品として同商品を提案したところ、絶縁性能や耐久性を評価され量産受注に至った。

EVバッテリーは、航続距離の延長やバッテリーの充電時間の短縮などを目的に高電圧化が進んでおり、将来的には約800Vのバッテリーの普及が予想されている。

バッテリーが高電圧化すると通電による軸受の損傷が大きくなるが、耐電圧1,000V以上の絶縁性を実現している自社商品は800Vのバッテリーにも使用可能であり、同社では今後、益々の採用拡大を見込んでいるとしている。

NTNでは今後も、導電性ゴムシールを採用した導電軸受などの耐電食軸受の商品ラインアップの拡充を進めると共に、通電による損傷から振動や異音に至るメカニズムの解明や電食寿命の予測方法の確立などの研究にも取り組み、耐電食ニーズに対して最適な電食対策の提案を進めていきたい考え。

なお同商品を含む耐電食対応の各種軸受商品は、5月21日~23日にパシフィコ横浜で開催される「人とくるまのテクノロジー展 2025 YOKOHAMA」に出展する。

製品の特長は以下の通り

1.耐電食性
軸受内部の電流通過を低減する絶縁性に優れた樹脂を軸受の外輪外径面に加え、幅面に射出成形することで耐電圧1,000V以上の絶縁性を実現した。今後増加が見込まれる800Vのバッテリー電圧にも対応する。
*e-Axle用軸受にかかる電圧をバッテリー電圧の10%以下と想定

2.耐久性
樹脂はこれまで温度変化による亀裂が課題となっていたが、広範囲な温度変化に於いても必要な強度を維持できる樹脂材料と、樹脂絶縁層全体に十分な強度を持たせる成形方法を採用することで、e-Axle用軸受に求められる幅広い温度環境でも使用できる耐久性を実現している。

用途:EV・HEV用e-Axle(モータ、減速機)