国交省、タイヤの車外騒音・ウエット路面の摩擦力・転がり抵抗の国内基準を策定


国土交通省は、「自動車の環境性能の向上」と「国際的な基準調和」を踏まえ、国連欧州経済委員会の『タイヤの車外騒音・ウエット路面上の摩擦力・転がり抵抗に係る協定規則(第117号)』を採用、これを国内基準に導入すると発表した。

また、既に日本が運用する「年少者用補助乗車装置に係る協定規則(第129号)」等の改訂が、国連会合で採択されたことを受け、道路運送車両の保安基準等を改正し、併せて10月9日付けで公布・施行される。

(1)四輪車のタイヤ騒音等に関しては、国連欧州経済委員会のタイヤの車外騒音・ウエット路面上の摩擦力・転がり抵抗に係る協定規則(第117号)を採用。

試験法等は国際基準と調和させ、以下のスケジュールで義務付ける。
– 新型車の場合:平成30年4月1日以降順次
– 継続生産車の場合:平成34年4月1日以降順次

(2)年少者用補助乗車装置に関しては、協定規則第129号の改正に伴い、前向きのチャイルドシートに対して、新たに装置型式指定等を取得するものから原則5点式ベルトを義務付ける。

上記に係る概略は以下(一部抜粋)

道路運送車両の保安基準、装置型式指定規則、道路運送車両の保安基準の細目を定める告示等の一部改正について

1.背景
自動車の安全・環境基準に関して、国際連合の「車両等の型式認定相互承認協定」(以下「相互承認協定」という。)に平成10 年に加入。以来、相互承認協定に基づく規則(以下「協定規則」という)について段階的に採用を進めてきた。

この協定規則のうち、新たに「タイヤの車外騒音・ウエット路面上の摩擦力・転がり抵抗に係る協定規則(第117号)」を採用する。

また、既に日本が採用している「年少者用補助乗車装置に係る協定規則(第129号)」等の改訂が、国連欧州経済委員会自動車基準調和世界フォーラム(WP29)第165回会合において採択されている。

これを受けて、道路運送車両の保安基準(昭和26年運輸省令第67号。以下「保安基準」という)、装置型式指定規則(平成10年運輸省令第66号)、道路運送車両の保安基準の細目を定める告示(平成14年国土交通省告示第619号。以下「細目告示」という)等について改正を実施する。

2.改正概要

【1】 保安基準等の改正
(1−1)空気入ゴムタイヤの車外騒音、ウエット路面上の摩擦力及び転がり抵抗(保安基準第9条、細目告示第11条関係)
「タイヤの車外騒音・ウエット路面上の摩擦力・転がり抵抗に係る協定規則(第117号)」の採用に伴い、以下のとおり改正する。

【適用範囲】
– 空気入ゴムタイヤを備える自動車(二輪自動車、側車付二輪自動車、三輪自動車、大型特殊自動車及び小型特殊自動車を除く)。

【改正概要】
– 空気入ゴムタイヤの車外騒音・ウエット路面上の摩擦力・転がり抵抗に関し、細目告示第一節※1に於いて、「タイヤの車外騒音・ウエット路面上の摩擦力・転がり抵抗に係る協定規則(第117号)」の技術的要件及び表示要件に適合することを義務付ける。

※1 指定自動車等であって、新たに運行に供しようとする保安基準の細目。

試験:自動車を騒音測定区間の十分前から走行させ、一定地点からエンジンを停止し、惰行走行させた時の騒音測定区間における最大騒音値を測定する。

図1:車外騒音試験法
ministry-the-frictional-force-and-the-rolling-resistance-domestic-standards-of-exterior-noise-and-wet-road-surface-of-the-tire-development20151009-1 クラスC1: 乗用車用タイヤ
クラスC2:小型商用車用タイヤ(単輪でのロードインデックス≦121 かつ速度記号≧N のタイヤ)
クラスC3:中型・大型商用車用タイヤ(単輪でのロードインデックス≦121 かつ速度記号≦M 又は単輪でのロードインデックス≧122 のタイヤ)
スノータイヤ:そのトレッドパターン、トレッドコンパウンド又はトレッド構造が、雪路における自動車の運転に関し、車両が走行を開始、維持または停止する際において、ノーマルタイヤよりも優れた性能を有するように設計されたタイヤ。
エクストラロードタイヤ、レインフォースドタイヤ:ISO 4000-1:2010 に規定された標準空気圧で対応する標準タイヤが支える荷重よりも、より高い空気圧でより大きい荷重を支えるように設計されたタイヤ。
シビアスノータイヤ:トレッドパターン、トレッドコンパウンド又はトレッド構造が、過酷な降雪条件下で使用するように特別に設計されたスノータイヤで、そのスノー性能に関して、一定の要件を満たすタイヤ。
特殊用途タイヤ:オンロードとオフロードの両方を対象にした走行条件又はその他の特殊な走行条件の下で使用されることを目的としたタイヤ。
トラクションタイヤ:「TRACTION」という表示がされており、さまざまな状況において力の伝達をするために、主に車両のドライブアクスルに装着することを目的としたクラス C2 又は C3 のタイヤで、その構造に関して一定の幾何学的要件を満たすタイヤ。

○ウエット路面上の摩擦力
ministry-the-frictional-force-and-the-rolling-resistance-domestic-standards-of-exterior-noise-and-wet-road-surface-of-the-tire-development20151009-2

○転がり抵抗
ministry-the-frictional-force-and-the-rolling-resistance-domestic-standards-of-exterior-noise-and-wet-road-surface-of-the-tire-development20151009-3ministry-the-frictional-force-and-the-rolling-resistance-domestic-standards-of-exterior-noise-and-wet-road-surface-of-the-tire-development20151009-4 ※2 新規検査時においてシビアスノータイヤを装着した自動車への適用時期については、継続生産車等への適用時期と同じとする。

※3 PHP(Preferential Handling Procedure)自動車とは、少数輸入自動車のために特別に設けられた認証制度で、あらかじめ試験データ等について、提出された書面によって安全や環境の基準への適合性について審査を行い、その結果を運輸支局等での車両 1 台ごとに行う新規検査において活用する自動車をいう。

(1−2)空気入ゴムタイヤの強度、滑り止めに係る性能等(細目告示第11条第3項関連)空気入ゴムタイヤの強度、滑り止めに係る性能等については、協定規則を採用し細目告示第1節※1に技術基準を規定しているが、これら基準を協定規則に完全に整合させることにした。

【適用範囲】
– 空気入ゴムタイヤを備える自動車(大型特殊自動車、小型特殊自動車を除く。)(現行通り)

【改正概要】
– 乗用車用及びトラック、バス、トレーラー用空気入ゴムタイヤについては、協定規則に基づく表示要件が追加される。(性能要件は現行どおり)
– 二輪車用空気入ゴムタイヤについては、協定規則に基づき、最高許容速度における遠心力の影響に係る要件等の性能要件及び表示要件が追加される。

【適用時期】
乗用車用及びトラック、バス、トレーラー用空気入ゴムタイヤを備える自動車。
(1−1)と同じ
二輪車用空気入ゴムタイヤを備える自動車 平成38年4月1日
(1−3)その他
○ 年少者用補助乗車装置(細目告示第32条関係)に関し、協定規則第129号の改正に伴い、前向きのチャイルドシートに対して新たに装置型式指定等を取得するものから原則5点式ベルトを義務付ける。

○ 窓ガラス(細目告示第39条、第117条、第195条関係)に関し、協定規則第43号の改正に伴い、硬質プラスチック合わせガラスに係る要件の追加を行う。

○ その他の既に日本が採用している各協定規則について、誤記訂正、項目の整理等に伴う改訂がなされたこと等を踏まえ、必要な改正を行う。

【2】 装置型式指定規則の改正
「タイヤの車外騒音・ウエット路面上の摩擦力・転がり抵抗に係る協定規則(第117号)」の採用等に伴い、第5条(指定を受けたものとみなす特定装置)の改正を行う。

【改正概要】
○ 第 5 条(指定を受けたものとみなす特定装置)関係
車外騒音・ウエット路面上の摩擦力・転がり抵抗に係る空気入りゴムタイヤは、「タイヤの車外騒音・ウエット路面上の摩擦力・転がり抵抗に係る協定規則(第117 号)」に基づき認定されたものについて、型式指定を受けたものとみなす。

3.スケジュール
公布・施行:平成27年10月8日
※ 協定規則(原文)については次の通り。
http://www.unece.org/trans/main/wp29/wp29wgs/wp29gen/wp29ap_mar15.html