グッドイヤー、住友ゴム工業との国際提携解消で新たな事業展開へ


住友ゴム工業との国際提携の解消を契機に攻めに転じる

グッドイヤー・タイヤ・アンド・ラバー・カンパニー(Goodyear Tire and Rubber Company・本社:米オハイオ州アクロン、CEO:リチャード・J・クレイマー)は、10月1日付けで住友ゴム工業株式会社とのグローバル・アライアンスを解消したことを発表した。(住友ゴム工業も自社の立場で同様の発表を実施)

同社の会長兼CEOのリチャード・J・クレイマー氏は、「過去16年間に亘る、住友ゴム工業とのアライアンス解消の手続きが無事完了し、収益を伴う成長をめざす素地が整いました。

今後は、より確かなパフォーマンスと、変わらぬ価値を皆様にお届けしてまいります」と述べ、さらに「世界経済は大きく変化していますが、タイヤ産業は依然として長期的な成長が見込まれています。

今回の解消合意によって、グッドイヤーは新たな成長戦略を追求し、世界市場で、グッドイヤーのブランドプレゼンスを高めていく道が拓けたのです。

今後、我々が世界の主要市場で存在感を強めていく上で、当社の技術力とブランド力は大きな力になるでしょう」と語っている。

提携関係を背景にした世界シェア確保を捨て、独自戦略の実施へ

これまで住友ゴム工業とグッドイヤーの両社は、1999年にグローバルな提携関係を締結。北米と欧州に各1社、日本に2社設けた合計4社の合弁会社による共同事業を展開してきた。

つまり、住友ゴム工業・グッドイヤーが持つ「ダンロップ」並びに「グッドイヤー」事業については、日本では住友ゴム工業75%・グッドイヤー25%出資の合弁事業を、欧米ではグッドイヤー75%、住友ゴム工業25%の合弁事業を展開してきた。

しかし今後グッドイヤーは、提携解消に伴う合意条件に基づき、ブランドシェア拡大にあたって熾烈な生存競争に勝ち残っていく必要があるものの、米国、カナダ、メキシコの補修用タイヤ市場及びに、非日系自動車メーカへ対して、ダンロップタイヤを排他的に販売する権利を保持出来るようになった。

また、これまで住友ゴム工業・グッドイヤー双方で互いに譲り合ってきた欧州市場についても、新車・補修用タイヤ市場で、グッドイヤーがダンロップタイヤを排他的に販売する権利を保持出来るようになる。

併せてグッドイヤーは、日本国内市場でグッドイヤータイヤを排他的に提供する権利も回復する。なお提携解消手続きの完了を受け、2014年1月に申し立てられた係属中の仲裁手続きも解消する(後述)。

高いブランド認識を背景に日本市場のシェア確保・拡大へ意欲

これらを受けて日本グッドイヤーは、過去63年間に及ぶ日本に於ける活動実績を踏まえて、新たな事業展開を目指す。

具体的には、グローバル・ブランドを有する世界有数のタイヤメーカーとして、日本市場での事業拡大に大きな可能性があると考え、同市場を積極的に攻略していく構えだ。

その証左としてグッドイヤー・アジア・パシフィック・リージョン社長のダン・スミッカ氏は、「当社は日本屈指の海外タイヤブランドです。そうしたなか日本は、世界で最も重要な自動車市場のひとつです。

その日本の補修用・新車用タイヤの両セグメントに於いて、今後はグッドイヤーブランドのプレゼンスを高めていきます。日本に於いて、今後もこれまでと変わることのない力強いコミットメントをお約束します」と述べた。

加えて、日本グッドイヤー新社長のダイル・ブラッキン氏も、「日本に於ける当社ブランドの変革期に、舵取り役を指名して頂き光栄です。

グッドイヤーは、イノベーションで世界をリードする会社として、日本で継続的な投資をしていきます。また、お客様に密接に寄り添い、ご要望をより深く理解して、お客様が求める高品質な商品をお届けしていきます」とコメントしている。

今後両社は、飽和する欧米で拮抗、成長する途上国市場ではライバル同士として激突する関係に

ちなみにグッドイヤーという企業体は、フランク・A・セイバリング(Frank A.Sei berling)氏をファウンダーとして1898年(明治31年)に、13人の工員を抱え、自転車や馬車のタイヤ、蹄鉄のゴム詰め物などの製造を主体に設立されている。

そんなグッドイヤーは、1926年に世界最大のゴム会社となって以降、現在、国際市場に於いてシェアトップをひた走る日本のブリヂストン、2位の仏ミシュランに水を空けられているものの、現在、世界3位のタイヤメーカーとしての地位につけている。

その社名は、米コネチカット州ニューヘイブン生まれで、加硫ゴム発明者のチャールズ・グッドイヤー氏の名前が用いられているが、これは会社設立38年前に死去したグッドイヤー氏の功績を称えて名付けられたものであり、グッドイヤー氏との直接的な関係は持っていない。

さて近年の事業環境に於いては、一時、住友ゴム工業傘下にあった英国法人のダンロップタイヤ(住友ゴムが株式の25%を保持)は、現在グッドイヤーの子会社となっている(グッドイヤーが株式の75%を保持)。この経緯を踏まえ、北米・欧州マーケットで販売されるダンロップタイヤはグッドイヤーが開発・生産してきた。

一方、1952年(昭和27年)にグッドイヤー自身が100%出資の子会社として設立した日本グッドイヤー株式会社は、1999年9月1日に住友ゴム工業の子会社となっていた。

こうした事業状況に鑑み、グッドイヤーが2014年2月、住友ゴム工業に対して国際提携解消の申し入れを行い、併せて国際商業会議所に仲裁を申し立てた。

グッドイヤーが仲裁を申し立てた理由は、同提携契約について、住友ゴム工業が優先的な提携解消権を持つ一方で、グッドイヤーはそうした権利を持たなかったためで、提携解消を自らの意思で実行するには仲裁を申し立てるしかなかった。

そしてこれが2015年6月4日にようやく決着し、住友ゴム工業がグッドイヤーから約271百万米ドル(当時の約325億円相当)を受け取ることで提携解消が合意に至った。

この住友ゴム工業との国際提携解消に伴い、日本グッドイヤーは今後、国産および輸入品のグッドイヤーブランドタイヤを、日本国内の補修用タイヤ市場と新車用タイヤ市場で販売していくことになった。

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