日野自動車(本社:東京都日野市、社長:小木曽聡)は6月10日、商用車領域の競争力強化に向けて、羽村工場(所在:東京都羽村市)のトヨタ自動車への移管で合意した。
今回の羽村工場のトヨタへの移管は、日野と三菱ふそうトラック・バス(MFTBC/本社:川崎市中原区、社長:カール・デッペン)の経営統合を契機に、商用車の未来をつくり、持続可能なモビリティ社会の実現を目指すトヨタと日野で、最適な役割分担を再定義していくものだという。
そんな羽村工場は、1963 年の生産開始以来、両ブランドの小型トラック(デュトロ等)及びトヨタのハイラックスやランドクルーザー250 などの生産を担ってきた。
今発表に伴い日野は、「羽村工場は、60年以上(1963年の生産開始)の歴史を通じて積み重ねたモノづくりの知見を活かし、今後はトヨタグループに於けるフレーム構造車両の中核工場のひとつとして、〝もっといいクルマづくり〟に貢献し、お客様や地域の皆さまのご期待に応えてまいります。
具体的な移管の詳細については、今後両社で協議してまいります。なお、日野は三菱ふそうと経営統合し、〝移動を通じて、豊かな社会に貢献したい〟という共通の想いのもと、商用車メーカーの競争力強化に取り組んでまいります」と述べている。
具体的な移管の概要は以下の通り
・日野自動車の100%子会社として新会社を設立し、羽村工場を新会社へ承継。
・日野が保有する新会社の株式を全てトヨタに譲渡 (2026年4月1日の予定)。
<参考>
今後設立予定の新会社概要 (2026 年 4 月 1 日 移管完了時点)
出資比率: トヨタ 100%
事業内容: SUV、小型トラック等の自動車製造、自動車部品製造
代表者(予定) 青木 是篤 ※2025年6月10日付けでトヨタから日野へ出向、CMO 付執行職に任用。
移管の目的
・ 羽村工場は、主にトヨタ製品の工場という歴史的経緯があり、製造しているものの多くはSUV(Prado)などトヨタの車種であり、一部当社の小型トラックも製造している。
一方、日野は、事業環境の変化に対応するため、経営統合により商用車・トラック製造に資金をはじめとする経営資源を集中していくことで経営の効率化・生産性を高めていく。
対して羽村工場は、長年に亘りトヨタ車の生産を通してものづくりの力を築き上げてきた工場であり、トヨタの 100%子会社となることで更なる競争力の強化が見込まれる。
その結果、他の相手によって購入される場合に比して、トヨタが購入する場合には、その価値を他社と同等かそれ以上に評価する可能性が認められる。
ひいては日野としても、エンジン認証問題に関連して生じる金銭的負担に備えるためのまとまった資金を調達できる。
・ そのため羽村工場事業をトヨタ自動車に売却し、事業環境の変化に対応し、トヨタの 100%子会社として本羽村工場事業の競争力を強化し、ステークホルダーの期待に応えること、また日野に必要な資金を得ることが本移管の目的としている。
また移管を適正な価格によって実行することは、今回の経営統合に於いて、統合比率を決める日野にとって有利な要因となり得るものであり、少数株主の利益にも資し得るものだと結んでいる。
つまり、上記に伴い日野は、トヨタへ羽村工場を1500億円で売却。加えてトヨタに普通株と種類株を割り当てて約2000億円を調達。これらによりトヨタからの借入金の返済に充てる構え。
対してトヨタ自動車は、日野から自社プランドの商用車に係る生産インフラを承継。新たな日野と三菱ふそうり統合会社への関与を薄めつつ、今後は小型商用車の開発・生産については独自で舵を執っていく。
結果、今回の日野と三菱ふそうの経営統合に伴い、日野は、トヨタ自動車グループの傘下企業としての立場を離れ、三菱ふそうと共に独立して自社の未来を決めていくことになる。