日産、欧州で第3世代「e-POWER」搭載の「キャシュカイ」発表

新世代「e-POWER」は燃費性能を向上させつつ高い静粛性を実現

日産自動車(本社:神奈川県横浜市西区、社長:イヴァン エスピノーサ)は6月26日、欧州で第3世代となる日産のハイブリットシステム「e-POWER」を搭載した「キャシュカイ」を発表した。

日産は、2016年の「e-POWER」市場投入以降、その性能を進化させてきた。この第3世代「e-POWER」は、同パワートレインならではの高い走行性能や、スムースで気持ちの良い運転体験を損なうことなく、燃費性能と静粛性を向上させている。エンジンで発電した電気を使い、100%電気モーターで走行する「e-POWER」は、モーターや制御をEVと共用することが可能で、将来のゼロエミッション社会への移行にも貢献するという。

ディーゼル車並みの航続距離と利便性に、EVライクな運転体験と応答性を融合

「e-POWER」は日産独自の電動パワートレインであり、エンジンを発電専用とし、駆動はすべて電気モーターのみで行うシリーズハイブリッドシステム。電気モーターのみで駆動するため、力強くレスポンスの良い加速と高い静粛性が特徴で、複雑な機構を必要とする他のハイブリッドと比較しても、より滑らかでEVのような運転体験を提供する。

またEVと同じように、回生ブレーキにより減速エネルギーを電気に変換してバッテリーに戻すことが可能。第3世代「e-POWER」はこのコンセプトを更に進化させ、セグメントトップ*となる燃費を実現し、最大航続距離もディーゼル車並みを誇ると謳っている。

– 燃費性能:4.5L/100km(WLTP)に向上し、セグメントトップクラスとなる最大航続距離1200kmを実現
– CO2排出量:116g/kmから102g/kmへ12%削減
– 静粛性:第2世代比で最大5.6dB低減し、EVのような静粛性を実現
– スポーツモード選択時に10kW出力上げるモードを採用し、よりスポーティーな走行体験を提供

モジュール化された新開発のe-POWERユニットと完全新設計の専用エンジン

新世代の「e-POWER」は、モジュール化された新開発の5-in-1 e-POWERパワートレインユニットを採用しました。このユニットはモーター、発電機、インバーター、減速機、増速機といった5つの主要部品をコンパクトで軽量な一つのケースに統合している。モーターの最高出力は11kW向上し151kW、バッテリー容量は2.1kWhと従来と同様のスペックを維持しながら、ユニット自体の高剛性化と軸構造の最適化により、走行時の音や振動を大幅に低減させた。

このユニットに組み合わされるエンジンは、1.5リッター3気筒のターボエンジンを採用し、e-POWER専用に完全新設計された。日産独自技術であるSTARC燃焼コンセプトを採用することで、シリンダー内燃焼の安定化を実現し、熱効率42%を達成した。

これにより、低速時でも静かで効率的な運転が可能。効率を最大化するための大型ターボや最終減速比の変更により、高速走行時のエンジン回転数を従来より約200rpm低くすることで、騒音の抑制にも寄与する。

e-POWER専用設計となって従来の可変圧縮比技術は不要に

e-POWER専用設計とすることで、従来搭載していた可変圧縮比技術は不要となり、また潤滑油を0W16にすることで、エンジン内部の抵抗を低減している。またオイルメンテナンスの距離が15,000kmから20,000kmに延長された点も優位点のひとつだという。

ADAC(ドイツ自動車連盟)の燃費評価に基づく独立試験では、現行「キャシュカイ」と比較して、実走行条件で最大16%の燃費向上、高速道路では14%の向上が確認されている。

こうした成果について日産自動車でチーフテクノロジーオフィサーを務める赤石永一氏は、「この第3世代e-POWERは、日産のハイブリッド技術を再定義するものであり、あらゆる状況で滑らかで応答性の高い走行を提供します。

約10年にわたる開発における知見を集約し、より効率的で洗練された、競争力のあるシステムを実現しました。キャシュカイでの導入は始まりに過ぎず、2026年度には日本と北米市場への投入を予定しており、その他の市場にも順次投入してまいります」と話している。

電動化へのスマートな選択肢、将来へのスムースな移行にも貢献する

従って刷新された「e-POWER」は電動化に移行する時代に於ける新しい選択肢のひとつとなる。EVと同じ電気モーターで走行するため、変速ショックや出力の遅れがない。一方で充電は不要で、今まで通りガソリンスタンドで給油すれば走行できる。「e-POWER」は、新しいものを求めながらも実用性を求めるユーザーにとって理想的な選択肢となりえる。電動駆動の楽しさや魅力を多くのユーザーが体感することで、将来の更なる電動化へのスムースな移行にも貢献する。

なおこの「キャシュカイ」は、英国サンダーランド工場で生産され、2025年9月より欧州市場で発売予定。その後、アフリカおよびオセアニア市場にも順次展開される。また、第3世代「e-POWER」は、日本市場に於いては2026年度の発売を予定している新型「エルグランド」、また北米市場に於いては2026年度中に発表予定の新型「ローグ」に搭載される計画であると結んでいる。