旭化成( 本社:東京都千代田区、社長:工藤 幸四郎 )、Nobian Industrial Chemicals B.V.
( Nobian = ノビアン インダストリアル ケミカルズ / 本社:オランダ・アメルスフォールト、CEO:Michael Koenig )、フルヤ金属
( 本社:東京都豊島区、社長:古屋 堯民 )、Mastermelt Ltd
( Mastermelt = マスターメルト / 本社:イギリス・ロンドン、CEO:Rick Reidinger )の4社は共同で、食塩電解用セル・電極の金属リサイクルの共同実証を開始する。
これは旭化成が、食塩電解用のセルと、その内部に組み込まれる電極に使用される金属リサイクルに取り組みを介してクロールアルカリ事業に於ける完全な金属リサイクルのエコシステム構築を見据えてのことだ。
( *上記の「クロールアルカリ事業」とは、塩水を電気分解して苛性ソーダと塩素を生産する産業領域。そこからの生産物は、有機物、無機物、医薬品、石鹸・洗剤などの多くの最終用途に使用される )
さて今日、食塩電解セルの電極に使用されているイリジウム・ルテニウムなどの貴金属は、その産出量に限りがある。
また近年の電池・電子部品需要の拡大。水素製造技術のひとつである固体高分子( PEM )型水電解装置に掛かる注目度。特定分野での高耐久部材や触媒用途への期待の高まりなどから、年々、稀少金属への需要が拡大し続けている。
それゆえ価格の上昇や調達難のリスクが高まっており、そうした意味で、上記の「クロールアルカリ事業」に於いても、貴金属の安定確保と効率的な循環利用は、中長期的な課題として重要性を増しつつある。
そこで旭化成はこれらの課題に対処するべく、去る2023年より、貴金属のリユース・リデュースを軸に、蘭・Nobian( ノビアン )と共同で、欧州地域でのセルのレンタルサービス実証を進めてきた。
食塩電解用セル・電極の金属リサイクルに係る各社の役割
そうしたなかで、まず旭化成がNobianから耐用年数を迎えた電極を回収。次に英・Mastermelt( マスターメルト )とフルヤ金属が、電極から触媒剥離と次工程に向けた剥離物の加工を行い、剥離物から貴金属を抽出・高純度化させる。
その後に旭化成が抽出された貴金属を原材料に、触媒を塗布した電極( リサイクル触媒電極 )を製造する流れて稀少金属のクローズドループを完成させる。
また、先のリサイクル触媒電極を使用してNobianが食塩電解を行うことにより、苛性ソーダと塩素の資源循環も初めて可能となる仕組みだ。
このように4社が連携。使用済みのセル・電極から貴金属を含む金属を回収・再利用するリサイクルプロセスの確立を共同で推進していきたい考えだ。
旭化成は、この取り組みをエンドユーザーとサプライヤー間の取引だけに留めることなく、国際的なクロールアルカリ産業全体へと拡げていき、セル・電極の安定供給を通じて、プロセス全域のエコシステム構築を目指す。
そして将来的に旭化成は、このエコシステムにトレーサビリティを付与することによって循環性と可視化を高め、リサイクルした貴金属を含む金属を活用したセル・電極の導入を更に大きく推進させていきたい考え。結果、一連の取り組みを通じて、グリーン水素製造用の水電解分野への応用・展開に取り組んでいきたいのだと話している。
以下は参画各社に掛かる企業情報となる
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旭化成並びに同社の交換膜事業
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旭化成が自社単独で行ってきたイオン交換膜法食塩電解プロセスは、1975年に販売を開始して以来、50年に亘る実績とワンストップで供給できる食塩電解プロセス技術の幅広さにより、多くのステークホルダーから高い信頼を得ている。
このようなクロールアルカリ事業は、2024年の世界需要で約1億トン(2024 World Analysis – Chlor-Alkali – Appendix)となっている。
そのうち旭化成の技術は、全世界で30か国、160工場以上(2024年12月現在)で採用されており、その累積受注量は3,000万トン(100%苛性ソーダベース)を超え、まさしくグローバルな実績を持つサプライヤーとしての立ち位置にある。
ちなみにイオン交換膜法食塩電解プロセスとは、イオン交換膜を使用して食塩水を電気分解し、塩素、水素および苛性ソーダを生産する一連のシステムを指す。
このプロセスは、水銀やアスベストなどを使用するプロセスに比べ、省エネルギーである点が高く評価されている。特に高い技術力を活かした低電圧膜と電解槽の組み合わせは、電解プロセスに於ける電力消費量を減らすことからCO2排出量の低減に貢献できるのが大きな特徴でもある。
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ノビアン インダストリアル ケミカルズについて
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カーライル・グループ並びにGICの傘下にあるノビアンは、100年を超える歴史の蓄積を超えて、高純度の塩、塩素アルカリ、クロロメタン、水素を供給している。
オランダ、ドイツ、デンマークの拠点で1,600人超の従業員を擁し、安全性、効率性、持続可能性に注力している。
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フルヤ金属について
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フルヤ金属は1968年に設立。産業界で幅広く利用されているプラチナ族金属(PGM)を工業製品に加工しているメーカー。
PGMの中でもイリジウム・ルテニウムという金属を40年に渡り取扱い、原料の調達から超高純度精製技術、高度な加工技術に加え、リサイクル技術とリサイクル能力を有し、大規模なグローバルシェアを得ている。
イリジウム・ルテニウムは、様々な産業で用途が広がっており、フルヤ金属では産出量の少ないこれらの金属を安定供給するためにリサイクルに取り組んできた。
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マスターメルトについて
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1985年に設立されたMastermeltは、貴金属リサイクルの世界的リーダーだ。クロロアルカリ産業から重要な貴金属を回収してきた25年以上の経験を持つ。
英国、ドイツ、シンガポール、米国に拠点を構え、電極からの貴金属回収に特化した技術を持っているため、広く産業界に付加価値のあるサービスをグローバルに提供できる立場にある。