独・フォルクスワーゲンは9月8日、独ミュンヘンで開催されるIAAモビリティ(独時間の9月8日~14日)で、電動コンパクトSUVのエントリーモデル〝ID. CROSS Concept〟を披露する。
このコンセプトカーについてフォルクスワーゲンブランドの最高経営責任者(CEO)を務めるトーマス シェーファー氏は、「私たちの目標は、フォルクスワーゲンブランド史上で最も革新的なコンパクトEVを皆様にご提案することでした。
今回公開する〝ID. CROSS Concept〟は、極めて量産モデルに近い仕様でありながらも、これまでは上位クラスでしか見られなかった数多くの先端テクノロジーを採用しています。
また同モデルは、既存のステレオタイプのコンパクトカーとは異なり街中の移動だけでなく、長距離走行にも適した仕様に仕立てており、このモデルを介して私たちは、新たなモビリティへの未来像をお示ししたいとも考えています」と述べた。
同社によると〝ID. CROSS Concept〟は、2026年から市場投入される一連の新たなモデルシリーズの骨子となるモデルであるという。
そのデザインテイストについてフォルクスワーゲンのデザイン責任者を務めるアンドレアス・ミント氏は、「私たちは今回の新しいデザインランゲージを『ピュア・ポジティブ』と呼んでいます。
私たちは〝ID. CROSS Concept〟では、ピュアで力強いこと、明快であること、視覚的な安定性を持つこと、そしてポジティブで愛嬌のある個性を持たせることに腐心しました。
より具体的には、安定性と愛嬌に、秘伝のソースを付け加えるというもので、今後、全てのフォルクスワーゲンブランド車の柱になっていきます。
それは、いたずらに流行のトレンドに追随していくのではなく、ブランド独自のアイデンティティを未来へと繋いでいくための原型だと考えています。
だからこそ、〝ID. CROSS Concept〟には、ゴルフやVWバスといったフォルクスワーゲンの象徴的なモデルを意図的に想起させるものとしました。それはまさに絶妙な料理に『秘密のソース』をそっと添えるかのようなものです。
例えばCピラーや、完全に直線的なウインドウラインに見て取って頂けると思います。これほど独自の伝統を受け継ぐ量産ブランドは世界でもほんの僅かです。従ってこうした個性は、未来へと向かう私たちのものづくりに於いて、常に中核となっていくものとなるしょう」と語った。
なお、そんな〝ID. CROSS Concept〟の全長は4,161mm、ホイールベースは2,601mm。全幅1,839mm、全高1,588mmで、現行T-Crossと同等のサイズとなっている。一方で、ホイールとタイヤの組み合わせは現行T-Crossと異なるものとなっている。
デザイナーは今回の〝ID. CROSS Concept〟専用の21インチアルミホイール〝バルボア〟を開発した。タイヤもグッドイヤーとの協力により、ショーカー専用の235/40 R21タイヤが開発されている。
5人乗りで仕立てられたインテリアは、450リットルのラゲッジ容量を備え、ボンネット下の追加のコンパートメント(25リットル)がスペース上の余裕を印象付ける。
空間は、車幅の広さがもたらした開放的なインテリアデザインとしており、市街地での使用のみならず、家族や友人とのドライブにも適したオールラウンドな乗り心地と走行性能を持たせている。
それを示唆するのが〝ID. CROSS Concept〟専用のシートに現れている。このシートは完全に折り畳むとVWバス風のリクライニングエリアが生まれる設計としている。
インテリアに採用された素材は、心地よいオアシス空間を目指してファブリック素材の質感に拘った。また素材表面に選んだカラーも、温かみのあるベージュ色のバニラチャイとして、よりラウンジ感覚を強めたものとなっている。
コックピット廻りは、直感的なメニュー構造を備えたディスプレイ、自然な音声操作、ダイレクト機能を標榜するボタンデザインを取り入れた。マルチファンクション可能を持たせたステアリングホイールも、より高い操作性を目的に完全に再設計されている。
また全面のインパネ中央部には、デジタルメーター(28cm/11インチ)とインフォテインメントシステムの中央タッチディスプレイ(直径33cm/13インチ)の2つのディスプレイが視軸上に配置される。
パワーユニットは、MEBモジュラー電動ドライブマトリックスをベースとし、エンジン、バッテリー、ソフトウェアなどMEB+の改良を通して継続的に開発が進められた。
同機能についてフォルクスワーゲンブランド取締役開発担当のカイ・グリュニッツ氏は、「来年からMEBは新世代のソフトウェアとなり、お客様にとって多くのシステムの機能が大幅に向上します。
フォルクスワーゲン特有のモジュラーシステムの更なる進化により、上位セグメントの車両に使われていた様々な機能が追加されます。
今後MEB+を基とした〝ID. CROSS Concept〟以降のクルマは、新型ID. Poloといった次世代電気自動車を含めて、魅力的な価格で優れた製品特性を持つものにするための技術的な鍵になるモデルと言えるでしょう」と話す。
最後に駆動システムとしては、フロントアクスルに統合された電動モーターと、サンドイッチフロアにフラットに配置された高電圧バッテリーを組み合わせて、155kW(211 PS)の出力で前輪を駆動する。
また同車の想定WLTP航続距離は、最大420キロメートルを目指している。加えてキャンピングスタイルを好む欧州のファミリーユーザーへの配慮として、最大トレーラー重量は1,200kg(ブレーキ付き、8%の勾配)とする意向だと結んでいる。
ID. CROSS コンセプトの想定テクニカルデータは以下の通り
ドライブ:MEB+、前輪駆動
再考出力:155kW/211PS
航続距離:最大420 km(WLTP)
最高速度:時速175キロ
全長:4,161ミリメートル
全幅:1,839ミリメートル
全高:1,588ミリメートル
ホイールベース:2,601ミリメートル
5人乗車時の積載容量:450 l + 25 l フロントトランク
トレーラー重量(最大):1,200 kg(ブレーキ付き、勾配8%)
ホイール:235/40 R21