TMFタテシナ会議、交通安全プロジェクトをバンコクで開始


一般財団法人トヨタ・モビリティ基金(TMF = Toyota Mobility Foundation/理事長:豊田章男)は4月28日、企業の枠組みを超えた交通事故死傷者ゼロに向けた取り組み「タテシナ会議」の海外分科会の活動として、バンコク首都圏庁、国連人間居住計画(国連ハビタット)、アジア工科大学院、トヨタ・モーター・タイランドの4者と交通事故低減に向けた覚書を締結した。

今後、車両プローブデータを始めとする各種データを活用した交通安全プロジェクト(TRUST:Thailand Road Users Safety through Technology)を推進していく。

なお同日バンコクで行われた締結式には、バンコク首都圏庁 Dr. Chadchart Sittipunt、国連ハビタット Mr. Srinivasa Popuri、アジア工科大学院 Professor Manukid Parnichkun、トヨタ・モーター・タイランド Mr. Surapoom Udomwong、TMF理事の松田進氏が出席した。

1.背景
タイでは、2021年の交通事故による1万人当たりの死亡者数が25.4人と、世界平均の15人を大きく上回っており、交通安全は喫緊の社会課題となっている。

これを受けて、政府機関をはじめ、民間企業や非営利団体などが連携し、事故の抑止に向けた様々な取り組みが展開されてきた。

しかし、長年に亘る努力にも関わらず、死亡者数や事故件数の大幅な減少には繫がっていない。

その要因の一つとして、事故原因を的確に把握するためのデータ基盤や分析方法の整備が進んでいない点が挙げられる。

実効性のある対策の実現に向けて、客観的なデータに基づいた根本原因の分析と再現性のある対策立案の手法を確立することが求められている。

2.内容
(1) 従来の取り組み (2024年6月~2025年5月)
そこで覚書の締結に先立ち、TMFはアジア工科大学院との提携により、チャチュンサオ県に於ける警察および損害保険会社の事故データや、トヨタ車両のプローブデータを活用した分析を実施。

車両プローブデータには、位置情報、車速、加速度などが含まれており、チャチュンサオ県では約16万台を対象とした分析を実施した。

分析の結果、車両プローブデータより抽出された急ブレーキ多発地点は、警察や損害保険会社のデータから得られた事故多発地点と一致することが明らかとなり、車両プローブデータから事故リスクの高い地点を特定できることを確認した。

車両プローブデータ解析例

(2) 本覚書における取り組み (2025年5月~2027年4月)
覚書では、交通量が多く、事故の発生数が多いバンコクのチャトゥチャック区を対象とし、従来のデータに加えてCCTVカメラの映像データを活用した分析の高度化を行なう。

また、覚書の締結者に加え、Road Accident Victims Protection Co.,Ltd.(RVP)がデータパートナーとして参画し、事故データの提供に協力する。

なお、本取り組みでは統合的なデータ分析により得られた結果および知見を活用し、他地域でも幅広く適用可能な「再現性のあるデータを活用した交通事故分析・対策の手法」を策定することを目指している。

これらの成果は、他の自治体や関係政府機関にも共有し、タイにおける交通安全の進展への貢献を目指す。

当該プロジェクト参画者の主な役割は以下の通り

1.覚書締結者
▷トヨタ・モビリティ基金 : 本プロジェクト全体の企画・運営
▷バンコク首都圏庁 : CCTVカメラ映像などのデータ提供、安全対策の推進
▷国連ハビタット : 関係省庁との協力関係の構築と地域における交通安全施策の展開
▷アジア工科大学院 : データを活用した交通事故原因分析および対策立案
▷トヨタ・モーター・タイランド : 車両プローブデータの提供および交通安全啓発活動の支援

2.データパートナー
▷Road Accident Victims Protection : 交通事故データの収集および提供