日産自動車株式会社(本社:神奈川県横浜市西区 社長:カルロス ゴーン)と、株式会社日産アーク(本社:神奈川県横須賀市 社長:浅見 孝雄)は5月16日、東北大学、物質・材料研究機構、高輝度光科学研究センター、および科学技術振興機構との共同研究により、リチウムイオンバッテリーの性能向上を図る電極材料として有望視されている、アモルファス(非晶質)シリコン酸化物(SiO)の構造を原子レベルで明らかにする手法を世界で初めて開発したと発表した。
この解析手法は、研究開発時に適用することで、同物質の充放電時の構造を把握することが可能となり、より大容量、長寿命のバッテリー開発を加速することが期待できる。
シリコン(Si)は、現在多く使用されているカーボン系の材料に比べ、多くのリチウムを蓄えることが可能なため、次世代の電極材料として注目されている。
しかし周期的な構造を持つ結晶性シリコンは、充放電を繰り返すと結晶崩壊が起こり、性能が低下するという課題があった。
一方、周期的な規則構造を持たないアモルファスシリコン酸化物(SiO)は、シリコンが持つ多くのリチウムを蓄えることが可能という特徴を持ちながら、結晶崩壊が起こりにくいため、以前から注目を集めていた。
しかしその基本構造が明らかになっておらず、実用化、量産化については大きな課題となっていた。
今回、日産の100%出資会社である日産アークは、東北大学、物質・材料研究機構、高輝度光科学研究センター、科学技術振興機構と共同で、その構造をこれまでにない解析手法の組み合わせとシミュレーションによって同物質の構造を原子レベルで明らかにする手法を世界で初めて開発した。
その結果、アモルファスシリコン酸化物は、その不規則な基本構造を生かしリチウムを柔軟に取りこむことで、性能を高めている可能性が明らかになった。
日産の専務執行役員で日産アーク社長の浅見孝雄氏は、「本解析手法の開発は、大容量の次世代リチウムイオンバッテリー開発に欠かせない、非常に重要な基盤技術となります。
本手法を研究開発に適用することで、ゼロエミッション車のさらなる航続距離の拡大に大きく貢献するものと期待しています」と語った。
一方、ゼロ・エミッションビークルおよびバッテリービジネスを担当する日産の副社長のダニエレ スキラッチ氏は、「今回の開発は、先進的でインテリジェントな技術革新をもたらす、という日産のコミットメントの証しです。
日産は、将来の自動車のために様々なエネルギー活用を検討しており、複数の技術へ継続的な投資をして参ります」と述べている。
なお、本発表内容は英国時間2016年5月13日10時(日本時間同日18時)に、世界的に権威のある学術誌である英国科学総合誌「Nature Communications< http://www.nature.com/ncomms/ >」にオンライン掲載されている。