ミシュラン、新スタッドレスの「X-ICE SNOW」発表


投入市場は日本・北米・中国・ロシア・北欧、SUVに対応しサイズ数は大幅増に

日本ミシュランタイヤ(本社:東京都新宿区、代表取締役社長:ポール・ペリニオ)は6月30日、スタッドレスタイヤ新製品発表のオンライン記者会見を開いた。投入する新スタッドレスタイヤは「ミシュラン エックス アイス スノー(X-ICE SNOW)」シリーズで、アイス性能と雪上性能をともに向上したのが特徴だ。8月11日から順次、発売する。新スタッドレスタイヤの投入は3年ぶり。(佃モビリティ総研・松下次男)

ペリニオ社長は新スタッドレスタイヤについて、「トータル・パーフォーマンス」を提供する冬用タイヤだと強調した。冬季の使用環境、ユーザーニーズを徹底的に分析し、どんな路面環境でも「より安全に移動できる」よう、多機能で、かつ高いレベルで性能発揮できるものという。

新型コロナウイルス感染症の影響で移動の制限もあり、「モビリティの重要性が改めて認識された」とし、現代社会においてモビリティがもたらす恩恵はとても大きいとの見方を示したうえで、ユーザーの「より良い体験に貢献できる」ようになることを願っているとも述べた。

また、新型コロナ感染症の影響が懸念される中での投入となるが、ペリニオ社長は「4、5月の市場は厳しかったが、6月に入ってからはニーズ、トレンドに持ち直し兆しが出てきている。特にハイパーフォーマンス製品への関心が高まっている」と述べ、市場回復に期待感を示した。特に市販用タイヤは「今年発売の新車用と異なり、市場に出回っているすべてのクルマが対象となる。冬季に求める人は多い」とした。

投入する「エックス アイス スノー」は14~22インチの合計84サイズ。投入市場は日本のほか、北米、中国、ロシア、北欧。こうしたグローバル展開に加えて、人気車種であるSUVへの対応を充実させたことで、サイズ数が大幅に増えた。価格はオープン。

アイス性能と雪上性能ともに向上、アイスブレーキング性能9%向上

ミシュランタイヤは、1982年にわが国でスタッドレスタイヤを最初に市場投入した先駆者だ。また、開発も北海道の士別でテストするなど日本で主導。海外メーカーという不安は「全くない」と黒谷繁希ブランドマネージャーは述べた。

新スタッドレスタイヤはこのように日本の冬季路面を時期、地域、時間帯などのあらゆる角度から分析、想定されるすべての路面環境で高いレベルの性能を発揮できるよう開発。その性能が装着初期だけでなく、履き替え時までなく続くようコンパウンド、溝形状、サイプの深さや数などを全面改良したものだ。

その性能を、評価の高い現行のスタッドレスタイヤ「エックス アイス3」と比べても、アイスブレーキング性能で9%、雪上ブレーキング性能で4%それぞれ向上。また、性能維持力、ロングライフ性能についても「明らかに向上が分かる」と強調、剛性感を保ちつつ、かつしなやかさが長持ちする製品に仕上がったという。

こうしたタイヤ性能が発揮できようになったのが新たに採用した新コンパウンドや形状の改良だ。
「エバー・ウインター・グリップ」と名付けた新コンパウンドは、剛性の高いポリマーベースの材質を配合し、ベースコンパウンドとの摩擦差により微小な凹凸を生成。この凹凸がエッジ効果と水膜を破って接地し、アイスグリップを高める効果、雪上に対しては「雪踏み効果」を発揮する。

また、形状では「新世代Vシェイプトレッドパターン」を採用。サイプの長さを従来品より28%増加することで、エッジ効果を強化、シャーベット路面やウエット路面で効率よく雪や水を排出し、安定したグリップ性能を発揮できるようにした。
販売目標については、具体的な数値は示さなかったものの、「市場の伸びを上回る成長を目指す」と述べ、スタッドレスタイヤ市場のリード役を果たす意向を示した。

取材・執筆:松下次男
1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。