日野自動車、大型車のプロフィアと中型車のレンジャーを完全刷新。次世代を担う新輸送車両の姿を追求


車両デザインだけでなく、設計思想そのものを一新。歩行者も検知する衝突被害軽減ブレーキなどの最新鋭機能を備える

日野自動車株式会社(本社:東京都日野市、代表取締役社長:市橋保彦、以下日野)は4月6日、首都圏のアリーナ会場に於いて14年振りの刷新となった大型トラック「日野プロフィア」、および中型トラック「日野レンジャー」の報道発表会を実施した。なお「日野プロフィア」のリリースは5月22日に、「日野レンジャー」は発表同日の4月6日となる。

発表会の筆頭では同社の市橋保彦社長が登壇。「今回のモデルチェンジでは、エクステリアデザインとインテリアデザインを一新しただけでなく、『日野プロフィア』はシャシから刷新し、トラックとしての基本性能を大幅に向上させ、『日野レンジャー』は『日野プロフィア』と同等の安全装備を大幅に高めて、安全性能の大幅進化を実現しました」と述べた。

続いて登壇した「日野プロフィア」のチーフエンジニアの渡邉良彦氏は、「車両に求められる『走る・曲がる・止まる』のうち、まず『止まる』では、新搭載されたPCS※1(衝突被害軽減ブレーキ)は機能を向上させ、停止車両だけでなく、歩行者も検知して衝突回避を支援することが可能になりました。

また『走る』では、従来型で搭載していた13リットルエンジンから、パワーユニットを新開発の9リットルエンジンにダウンサイズ致しました。

今回、総排気量そのものは縮小しましたが、エンジンに組み合わせるターボユニットを2段過給ターボ化。さらには空冷インタークーラー2基を搭載。

ターボユニットの立ち上がりチューニングを刷新したことにより、従来の13リットルエンジン勝るとも劣らない出力感を持たせています。

併せて12段プロシフトとの組み合わせたことで、平成27年度燃費基準に対してプラス10%を達成。大型トラック初の取り組みにより、大幅な燃費性能を達成しています」と語った。

さらに渡邉良彦氏は、「このエンジンのダウンサイジングで、燃費向上や軽量化が実現されたばかりではなく、こうした取り組みが本年9月から適用される『平成28年排出ガス規制』適合に大きく貢献しています。

またこのパワーユニットのダウンサイジング化は、そうした走行性能の向上に繫がっただけではなく、車両への積載量も従来型比300kg増を実現。

これに併せてエンジン搭載位置や、キャブバックの形状見直しなどにも取り組み、さらなる荷台容積の拡大も図った上で、エアサスの軽量化も実施。これらの複合的な施策を実施することで、より積載量を積める次世代トラックを実現しました。

このほか従来から標準装備していた安全装備もさらにワンランクアップを果たしています。

なかでも衝突被害軽減ブレーキは、標準装備であるPCS機能の向上を図っており、具体的にはミリ波レーダーと画像センサーにより、停止車両と歩行者を的確に検知して衝突回避の範疇が拡大しています。

しかもこれらの機能向上は、国内で来る2019年に強化される法規に先駆けて対応したものです。併せて夜間走行において、LED点灯と消灯を細やかに制御し、先行車や対向車のドライバーに対して直接照射する光量を自動的に制御。

夜間の歩行者発見に有利なハイビームを利用し易くする可変配光型LEDヘッドランプを採用。

さらに車両に搭載されたモニターカメラで、運転しているドライバーのわき見や目蓋の状態を検知し注意を促す他、走行状態のふらつきを検知。警報等で注意を促すなど、最新の安全装備を搭載して、ドライバーが誇りを持って、安心して乗れるトラックに仕立て上げました」と話す。※1 PCS(Pre Crash Safety)。「PCS」はトヨタ自動車株式会社の登録商標。

エクステリアデザインは、堂々とした存在感を主張しながら、空気抵抗の低減や、デイライトを備えたLEDヘッドランプの採用により夜間の視認性向上等の機能向上を実現。

強固な骨格構造としたことで、外装ボディ素材には大型トラックでは、革新的な樹脂外板採用も実現。その他、複合素材の採用など、各部の部材軽量化も併せて大幅な車体軽量化が実現されている。

開口部の大きく取ったドアを開いて、乗り込んだドライバーズシートから眺めるインテリアに関しては、ドライバーの業務環境に配慮した新型シートを搭載したことで、乗り心地が大きく向上している。

乗車感は、運転者を大きく包み込むインストルメント・パネル形状を持ち、7インチの液晶画面を備えた大型で確認しやすいメーター、操作しやすいステアリングスイッチなど、いずれもドライバーを第一に考えた快適な仕事場を思わせる仕上がりとなっている。

特にPro Shift(プロシフト。機械式自動変速機)搭載車は、既存車両のシフトレバーに替えて、ダイヤル式のギヤセレクターをインパネに設置。

併せて変速モードの切り替えやマニュアル変速操作が行えるシーケンシャルレバーを、ステアリングコラムに設けることで変速操作の負担軽減やキャブ内での移動性向上を果たしている。

日野によるとは、こうした安全装備を相次いで標準装備化することで普及促進することが交通事故削減に効果的と考えていると述べており、今回の改良で「日野レンジャー」にも「日野プロフィア」と同等の安全装備を標準装備※2とし、安全性を大幅に向上させていると云う。

※2「日野プロフィア」はPCS、スキャニングクルーズⅡ、ドライバーモニター、車線逸脱警報、車両ふらつき警報、VSC(Vehicle Stability Control、車両安定制御装置。「VSC」はトヨタ自動車株式会社の登録商標)をすべて標準装備している。

「日野レンジャー」はPCS、車線逸脱警報、車両ふらつき警報、VSCは全車に標準装備、スキャニングクルーズⅡは260・240PSエンジン搭載車に標準装備(210・190PSエンジン搭載車にはオプション)、ドライバーモニターはカーゴ車型に標準装備(建設系車型にはオプション)。 PCSとVSCはASV減税の対象となる。

一方「日野レンジャー」に関しても、渡邉良彦氏に続いて登壇した佐藤直樹チーフエンジニアが同車にダウンサイジング5Lエンジンを採用したと語っている。

新エンジンについて佐藤氏は、「パワーユニットのダウンサイジングにあたって、2段過給や摩擦抵抗を軽減するディンプルライナー※3などを採用し高効率を追求しています。

さらにエンジンと排出ガス後処理装置の改良により、燃費を向上させながら排出ガスを一層クリーンにし平成28年排出ガス規制に適合させました。

これにより、平成27年度燃費基準+10%達成車を新たに設定した『日野プロフィア』に続き、『日野レンジャー』においても同+5%の設定車型数を拡大しています。

なかでも『日野レンジャー』に関しては、お客様における車両運用の利便性を踏まえ、非尿素対象の車両バリエーションを拡大するなど、ビジネスの成果を確実に事業へと繋げていくための配慮を深め、今後も日本の輸送を担うお客様のご要望に応えて参ります」と話していた。

※3 ディンプルライナー:ピストン摺動部のシリンダーライナーにディンプル(窪み)を作ることで摩擦抵抗を低減。日本ピストンリング株式会社との共同開発した。

最後に「日野プロフィア」、「日野レンジャー」のいずれも、アライアンスグループにおけるトヨタとは異なる独自の取り組みを介した通信機能を開発・搭載した。この同通信機能では、日々の車両情報を日野に送るICTサービス機能を備えている。

通信機能をトヨタと異なる仕様として独自開発した理由は、利用ユーザーの活用環境がトラックの場合は大きく異なるためとしており、日野では、万が一の車両トラブルの際にも位置情報を把握し、適切な初動対応に繋げる。

加えて車両データに基づき運転状況のレポート提出や、適切な予防整備の提案をしていくことになると結んでいる。

東京地区希望小売価格(代表車型) (単位:円)

■年間販売目標台数
・日野プロフィアシリーズ全体     11,000台
・日野レンジャーシリーズ全体     17,000台