EU理事会は6月12日、EU域内各国に於ける破産法基準について、近似化を進めていくことで合意した。この措置は、各国の破産制度の基準を相互に近づけることで、EUは外国投資家や国境を越えた投資家にとってより魅力的なものとしていく意図がある。
というのは現時点で投資家は、自国以外のEU加盟国に投資する際に、自国とは異なる各国の破産規則を考慮する必要があったからだ。統一された破産制度の欠如は、国境を越えた投資の障壁となっている。破産制度の統一化は、(外国)投資家にとっての確実性の向上とコスト削減に貢献する。
理事会に於いてポーランド法務大臣アダム・ボドナ氏は、「この法律は、投資家にとってEUをより魅力的なものにするための重要な一歩です。
加盟国間で破産法の差異が大き過ぎると投資判断に支障をきたす可能性がありますが、この法律によってこうした差異が縮小されるでしょう」との意見を述べた。
新しい規則の下、全てのEU加盟国でプレパック方式が利用可能になる。プレパック方式では、債務者の事業(またはその一部)の売却が、破産手続きの正式な開始前に準備され、交渉される。
これにより、会社の清算を目的とした正式な破産手続きの開始後すぐに売却を実行し、売却代金を受け取ることが可能となる。
つまり債務者の相手方の同意を得ることなく、債務者から事業の買主へ、事業の継続に不可欠な契約である未履行契約を自動的に移転することが可能となる。但し理事会は契約の自由を保護するためのいくつかの保障措置を盛り込んでもいる。
他に、同法律の新しい点は、一定の状況下に於いて全ての加盟国で債権者委員会の設置が義務付けられることがある。債権者委員会は、破産手続きでの債権者の立場を強化する。
例えば、資金の制約や地理的な近接性の欠如といった理由で、手続きに参加できない可能性のある個々の債権者の関与を確保する。
この措置は、債権者委員会の構成、委員会の権利と義務、委員の個人的責任など、債権者委員会の特定の特徴を加盟国間で調和させており、妥協案によると加盟国は債権者委員会の設置対象を大企業に限定できる可能性がある。
なお理事会は2024年12月に、指令案の他の側面、特に破産財団を保全するための措置、破産手続きの開始を要求する取締役の義務、透明性義務については既に妥協に達していた。
<以下参考>
破産法:理事会が中核資本市場連合法案に関する立場を決定(プレスリリース、2024年12月13日)
破産法の特定の側面を調和させる指令(2025年5月23日 )
欧州資本市場について( 背景情報 )