FIAT、ラストワンマイル輸送を担う三輪マイクロEVを発表

FIAT Professionalがマイクロモビリティ革命を巻き起こす

ステランティス傘下のフィアットで商用車市場を担うフィアット・プロフェッショナル( FIAT Professional )は5月21日、ラストワンマイル領域に特化した3輪EV「TRIS(トリス)」を発表した。

導入地域は、アフリカ及び中東 (MEA) がターゲット。これにより、同地域でのB2B輸送に係るソリューションを包括的にコミットメントするのみならず、最終的なラストマイル配送に対しても、おろそかにしないという積極姿勢を示した形となる。

上記の投入地域に合わせてモロッコで製造されるTRISは、フィアット・プロフェッショナルが掲げる「すべての人にモビリティを」というコミットメントを身を以て体現したものとなった。

イタリアのLe Centro Stile FIATで設計されたTRISは、手頃な価格の超軽量商用車として開発され、航続距離90kmを誇るマイクロ貨物EVに仕上がっている。

その構造は、多目的な新型車両としてシンプルさゆえにアイコニックで印象的。ターゲットとする地域でマイクロトランスポートのニーズに応えるべく、手頃な価格、使い易いゼロエミッションのビジネスソリューションとしてフィアットプロフェッショナルの車種ラインナップを完全補完する重要な役割を担う。

過酷な動作環境でも長期的な信頼性が確保されている

手頃な価格、使いやすさ、低いランニングコストは、新車購入に係る従来の障壁を打ち破って誰もが利用できる車となる。併せてリース購入のオプションも提供することで、地元の大手企業から起業家、日常の労働の足として使う家族経営にも供されるなど、より幅広いユーザー層の力となるだろう。

利用用途は、フラット ベッド、ピックアップ、シャーシ キャビンの 3 つを組み合わせたモジュラー構成により、果物、砂、家具など、ありとあらゆる商品の輸送に応えられる。

車両レイアウトは、ドライバー中心のエルゴノミクスさと、車格を超える居住性を優先。長時間のシフトでも快適性さを失わないスペースを確保した。

使い勝手では、クラッチやギアボックスなしで簡単に運転できる一方、内蔵の220V プラグで充電が可能なため、外部充電器自体を不要とした。

車体骨格は、耐久性を重視した設計で、シャーシが載せられたチューブラーフレーム構造は亜鉛コーティングにより腐食から保護されており、過酷な動作環境でも長期的な信頼性が確保されている。

全長は僅か3.17メートルのコンパクトなサイズを有しており、最小回転半径は3.05メートル。狭い市街地も楽々と走行できる。荷室は約2.25平方メートルの積載スペースがあることから標準的なユーロパレットを収容できる。また車両総重量(GVW)は1,025kg、RCE認証取得済みの最大積載量は540kgとなっている。

自宅の200Vコンセントからでも4時間40分でフル充電できる

インストルメントパネルには、5.7インチ デジタル クラスターを搭載し、残燃料距離やバッテリー レベルなどの重要な運転情報が表示される。

ダッシュボードには合計3リットルの容量を持つ密閉式グローブボックスをはじめ、複数の収納スペースを備えている。アクセサリーとしては追加の収納ネットや、頑丈な保護フロアマットも用意される。

車室内の電源アクセスも重視し、USB-Cプラグと12Vソケットを装備。外出先でも手持ちのデバイスを充電できる。またEUの安全基準に適合した3点式シートベルト、イグニッション連動ロービーム付きフロントLEDライト、バックブザー、ウォッシャータンクを備え、欧州の認証基準を満たした。

6.9kWhの容量を持つリチウムバッテリーは、90km(WMTC)の認証航続距離を実現。注目すべきは、このバッテリー技術はフィアット・トポリーノに搭載されている堅牢で実績のあるバッテリー技術と同一としている。

従って、その実用性能は既に市販車両によって実証済みとなっている。また充電は家庭用コンセントから3.5時間で0%から80%まで充電でき、4時間40分でフル充電される。

ドライブトレインは、性能、効率、コストパフォーマンスのバランスを追求。9kW(ピーク出力)と45Nm(最大トルク)を発生する48V電気モーターを搭載したTRISは、最高速度は45km/h。

ワイドトレッドのリアアクスル、拡大されたホイールベース、12インチタイヤなど、最適化された設計により安定性を確保し、都市部でも郊外でも優れた走行性能を発揮すると謳っている。

なおTRISは、他のFIAT Professionalモデルと同様に、フリートマネジメントや車両追跡といったコネクテッドサービスも提供していく予定で、今後さらなる開発が進められる予定だ。

TRISの持つ可能性はメーカーの想像を超えていくのではないか

フィアットでCEO兼ステランティス・グローバル最高マーケティング責任者を努めるオリヴィエ・フランソワ氏は、「TRISは単なる新車ではありません。都市交通に対する私たちの考え方を革新するものです。

そんなTRISという名前は、車両の3つの車輪、モジュール設計、特徴的な3灯LEDの配置からインスピレーションを得て名付けたものです。そのシンプルな名前は、複数の言語で発音しやすく、世界中の多様な層の心に響くでしょう。

また、それはイタリアならではの発想から生まれ、日常生活の実態に合わせて設計されています。今後、世界の都市が成長し、クリーンでアクセスし易い交通手段の必要性が益々高まるなか、私たちは根本的にシンプルかつ機能的な製品を提供する機会を模索してきました。

TRISはそうした要請に応え、自営業者や中小企業、加えて恵まれないコミュニティに対して、前向きになれるための費用対効果の高いゼロエミッションツールを提供します。

今回の中東とアフリカに於ける同車のデビューにより、TRISはラストマイルでのあるべきモビリティの理想形を変革させ、経済的自立と共に、社会を包み込む未来へ向けて新たな扉を開く存在となります。

その可能性は、おそらく私たちの想像を超えていくのではないかと信じています。また、この種のスマートで持続可能なソリューションを求める環境は、実のところ世界共通であることから、次の活躍の舞台はヨーロッパかもしれません」と語った。