FIAフォーミュラ・ワン世界選手権、第1戦オーストラリアGP(開催地:オーストラリア・ビクトリア州メルボルン市・アルバート・パーク・グランプリ・サーキット<コース全長:5.303km>、開催期間:3月18~20日)の予選セッションが3月19日(土曜日)に実施された。
新たな年を迎え、McLaren-Honda(マクラーレン・ホンダ)は2年目のシーズンとなった。
開幕初戦のアルバート・パーク・グランプリ・サーキットは、レース開催時以外は、一般車両が通行する公園であることから、レーストラックが平坦かつ路面のミューが比較的低く、さらにコースレイアウトの周囲が壁で囲われたストリートサーキットであるため走行ラインの自由度が狭く、本コースに合わせたマシン・セットアップが、タイムアップの鍵を握ると云う難しいコースのひとつだ。
なお今年から、レースで利用するタイヤをチーム側が選ぶ事となって、McLaren- Hondaチームでステアリングを握るアロンソ、バトン共にスーパーソフト(赤)・ソフト(黄)・ミディアム(白)の3種類を選択した。
またレース中に、2種類の異なるタイヤを使用しなければならないルールは先のシーズンと共通である。
加えて予選の方式が変更が予定され、個々の予選セッション(Q1、Q2、Q3)に於いて、時間経過によるノックアウト方式が追加された。
しかしこのルールは、最終セッションでドライバー達が早々にマシンから降りる切っ掛けを作ってしまい、開幕早々、波紋を呼ぶ展開となっている。
さてフリープラクティスから予選に掛けては、フリープラクティスの時点で大きく天候が崩れたが、予選セッションを迎えて、初めてコースがドライコンディションとなった。
そうした中で、今季初の予選ポールポジションを獲得したのはルイス・ハミルトン(メルセデス)。昨シーズンから引き続き、通算50回目となるポールポジションを獲得している。
しかも今回の予選では、緒戦の決勝を控えてか、本戦用タイヤを温存する選手も多くなったことから、ルイス・ハミルトンに追従する選手がおらず、同じチームでライバル関係でもあるニコ・ロズベルグも残り2分の段階でセッション終了。
唯一、メルセデスを追う立場のフェラーリの追走もない淡々とした内容となった。結果、ルイス・ハミルトンのPPがあっけなく確定するという盛り上がりに欠ける内容となってしまった。
ふたりは昨シーズンとは異なり、Q1を余裕を持って通過。Q2の序盤では積極的にタイムを詰めていたが、新品のスーパーソフトタイヤが残っていなかったこともあって、Q2の段階で予選セッションを切り上げた。
フェルナンド・アロンソ
MP4-31-01
FP3 1分27.263秒の11番手
(トップとの差 +1.639秒)
– Q1 1分26.537秒の3番手
(オプションタイヤ)
– Q2 1分26.125秒の12番手でグリッド確定
(オプションタイヤ)
【アロンソのコメント】「今日のマシンは素晴らしかった。今週末のマシンには良い感触を得ており、おおむね良好なパフォーマンスを発揮できたようだ。
ただコース上の一部のエリアでは、まだまだ絶対性能面で限界がある。ただ予想していたよりも競争力があり、今後、数戦のうちに新しいパーツが導入されることを考えると、今後の競争力向上は確実だろう。
また新しい予選方式の是非に関しては、もう少し様子を見る必要があるように思う。ただ我々のように若干、競争力が不足するチームには不利に傾くかもしれない。
とにかく予選では、当初、Q1で2セットのスーパーソフトタイヤを使って3番手までポジションを上げたものの、その分、Q2で走るチャンスは1回しかなかった(予選セッションではスーパーソフトタイヤを3セットのみ使用可能)。
トップチームは、Q1でスーパーソフトタイヤを両セットとも使う必要はないので、我々も再びトップに返り咲き、Q1ではオプションタイヤ1組だけで乗り切れるようにならなければならない。
結果、12番手というポジションだが、メルセデスチームのラップタイムからはわずか1.2秒差なので、決勝でも頑張れるだろう。
いずれにしても明日は興味深い一日になる。我々チームの両マシンがポイント圏内で完走できるよう願っている。
ジェンソン・バトン
MP4-31-03
FP3 1分27.341秒の12番手
(トップとの差 +1.717秒)
– Q1 1分26.740秒の7番手
(オプションタイヤ)
– Q2 1分26.304秒の13番手でグリッド確定
(オプションタイヤ)
【バトンのコメント】「12番手および13番手というグリッドは、我々がここに来る前に予想していたポジションよりも良い結果となった。
マシンの感触もそれほど悪くない。ただ、今日はどのドライバーも、FP3から予選までの間で気温が大きく下がったことに悩まされていたようだ。
この予選終了に至るまで、我々は、マシンをドライブするのを愉しめたと思う。ただしQ2の終盤に使用可能なスーパーソフトタイヤが残っていなかったのは残念だ。
新しい予選方式に関しては、ピットレーンの混雑が気になった。我々がピットにマシンを止めてタイヤ交換をし、再び出走しようとしている時、既に敗退した4台のマシンがメカニックの手によってガレージへ下げられているところに出くわした。
いずれにしても先の開幕前テストに於いて、走行距離は、まずまずの結果ながら、走行ペースについては、それほどポジティブなものではなかった。
従って、ウイリアムズやフォース・インディアと、我々のマシンとのペース差は、チームメンバーにとって嬉しいサプライズだった。
また我々のマシンは予選用よりも、本戦用の方がうまく仕上がっており、これも好感触だ。マシンのデプロイメントも他チームのものとほぼ同じぐらいまで良くなっており、これによって決勝レースでは、さらにその恩恵を受けることになるだろう。
エリック・ブーリエ
McLaren-Honda Racing Director
「今日の予選は、最初の数分間こそエキサイティングな内容でしたが、その後は非常に残念な結果となりました。
F1というスポーツを代表して、他チームで私と同じ立場にいる多くの皆さんと同様、私も、新しい予選方式があのような活気のないショーを生み出してしまったことを、残念に思っていると言わなければなりません。
我々の予選12番手と13番手という今日の結果は、特に取り立てて言うような結果ではありませんが、Q2の中盤という予選順位であったため、明日のレースでは、スタートタイヤを自由に選択することができます。
ですから、我々はF1というスポーツに対して何の利益にもならなかった今日という一日を忘れて、自分たちのレース戦略を最適なものにすることを目指して、これからデータを精査します。
励みになるのは、両ドライバーとも我々のマシンに対しては非常にいい感触を得ていることです。マシンのバランスが取れていて、いいクルマを手にしたときの感触でプッシュできると話してくれています。ですから、MP4-31がうまくまとまっていることは明確ですし、同マシンの開発を急ピッチで継続します。
長谷川 祐介|(株)本田技術研究所 主席研究員 F1プロジェクト総責任者
「いよいよ2016年シーズンが開幕します。2016年のパワーユニットは、信頼性とERSの効率向上、内燃機関(ICE)のパワーアップなどを中心に、短いオフシーズンの準備期間で昨年課題となっていた領域の改良を図り、バルセロナでの2週間のテストで、基本システムやエンジンモードなどの確認をしてきました。
テストは概ね順調でしたが、レースで実際にサーキットを走ることによって、昨年からの進化と開発の方向性を定めることができるため、メルボルンは重要な一戦となります。
マシン自体のパフォーマンスは、テストに対して大きく前進し、午前中のフリープラクティスから比較的安定した走行ができています。
予選では、新しい予選方式とタイヤの使用ルールによって走行タイミングが難しくなり、マシンのポテンシャルは高かったものの、残念ながらQ3への進出はならず、12番手、13番手に終わりました。
ただ両ドライバー共に、マシンには満足しており、明日16時(日本時間14時)からのレースではポイント獲得を狙います。