アームとソフトバンク、次世代AI研究でCMUなどを支援へ

全ては国際的なAIリーダーとして両国の結びつきを強めるもの

カーネギーメロン大学(CMU)、アーム(Arm)、ソフトバンクグループ(SBG)は5月15日(米ペンシルベニア州ピッツバーグ発)、AI技術のグローバルな進化を加速させる。

このためにArmとSBGは、CMUに総額1,550万米ドルを寄付。併せて慶應義塾大学とのパートナーシップについても支援していく。

米国と日本は昨年、AIのグローバルな進展を加速させるための研究パートナーシップを立ち上げた。その一環としてカーネギーメロン大学と慶應義塾大学、ワシントン大学と筑波大学がそれぞれ連携。それはいずれも、AI分野に於ける国際的なリーダーとしての両国の結びつきをさらに強めていくものだった。

また、Amazon、Arm、Microsoft、NVIDIA、SBGなど複数のグローバル企業と、日本企業によるコンソーシアムが、総額1億1,000万米ドル寄付し、この研究パートナーシップを支援することも表明した。

そして迎えた今年、ArmとSBGは同研究パートナーシップを更に支援するべく、カーネギーメロン大学へ総額1,550万米ドルを寄付する。

これは、カーネギーメロン大学の研究者が最先端の商用ツールやモデルにアクセスすることを可能にし、AIが革新的な影響をもたらす領域の基礎研究の推進を支援するものとなる。

AIの先駆的なブレークスルーが、新たな道を切り拓く

これを受けてカーネギーメロン大学のコンピュータサイエンス学部(School of Computer Science)・学部長のマーシャル・ヘバート氏(Martial Hebert)は、「カーネギーメロン大学は、AIによる革新的な技術発展を推進するArmとソフトバンクグループからの支援に感謝しています。

AIは、ロボティクスや生物医学の分野で科学的発見を加速させ、研究者が複雑なシステムを理解し、より高い精度で結果を予測する上で大きな助けとなっています。

カーネギーメロン大学と慶應義塾大学のパートナーシップは、世界中で研究の可能性を広げていくでしょう。専門性を持つ産業界からの大きな支援を受け、AIがもたらす先駆的なブレークスルーが示す新たな道を切り拓いていきます」と述べた。

なおこのパートナーシップの重要な要素は、ArmがAcademic Accessモデルを通じて、カーネギーメロン大学の研究者にハードウエア及びソフトウエアのIPと各種ツールへのアクセスを提供することにある。

これにより、研究者はArmの最新技術を用いて、イノベーション、評価、設計、製造に取り組むことが可能となる。また、同社からの寄付はカーネギーメロン大学と慶應義塾大学が共同で行う研究や卒業研究プロジェクト、インターンシップ、その他の学生向けプログラムの支援にも活用される予定という。

技術の進化だけでなく、未来人材への投資も行っている

Armで教育研究担当シニアディレクター(Senior Director, Education and Research)を務めるハレド・ベンクリッド氏(Khaled Benkrid)は、 「AIの未来は、最先端の研究、世界水準の技術、そして実践的な応用が交わるところにあるとArmは考えています。

このソフトバンクグループとカーネギーメロン大学とのパートナーシップは、AIイノベーションを加速させると同時に、次世代を担う人材の育成にも繫がります。

産学連携により、技術を進化させるだけでなく、未来を築く人材への投資も行っているのです」と支援の意味について説明した。

併せてSBGは、今寄付により「ソフトバンクグループーArm フェローシップ」を創設。AI研究に取り組むカーネギーメロン大学博士課程の学生を支援する。

また、卒業研究プロジェクトやインターンシップなどの学生向け学術プログラム、学部生向け夏期研究プログラムも支援していく構えだ。

ソフトバンクグループで執行役員 CLO 兼 GCO 法務統括を努めるティム・マキ氏は、「AIの真の可能性は、多様なアイデア、厳格な学術研究、そして戦略的な国際連携が交わるところで開花します。

このたびのカーネギーメロン大学と慶應義塾大学の取り組みを支援することにより、私たちは単にイノベーションを促進するだけでなく、日米両国の基盤となる絆を強化し、グローバルなリーダーシップを担うビジョンを持ったAI人材の育成に繋げていきたいと考えています」と話している。

今後は4つのAI主要分野に精力的に取り組んでいく

また今回のArmとSBGによる支援のもと、カーネギーメロン大学と慶應義塾大学の研究者は「マルチモーダルおよび多言語学習」「ロボティクスにおけるエンボディドAI」「人間との共生を目指す自律型AI」「ライフサイエンスおよび科学的発見のためのAI」の、4つの主要分野に於いて精力的に研究に取り組む。

そのために両校の共同研究は、2024年秋に慶應義塾大学の研究者がカーネギーメロン大学を、2025年春にはカーネギーメロン大学の研究者が慶應義塾大学をそれぞれ訪問するなど交流を深めている。

最後に、カーネギーメロン大学と慶應義塾大学の研究者間では、エンボディドAIに関するプロジェクトが進行中だ。

これはロボットが自らの能力をより正確に理解し、家庭内などでの限られた空間でのタスクをより効率的に遂行するシステムの開発を指すものだ。

また、マルチモーダルおよび多言語対応の学習分野では、大規模言語モデルが画像やその他のマルチモーダルデータを解析する際に発生するハルシネーション(幻覚)問題を低減する方法の研究が予定されている。

加えて人間とAIの共生に関するプロジェクトでは、非言語コミュニケーションの理解、ロボットアームとの相互作用、ソーシャルナビゲーションなどに関する研究が進められる。

科学的発見のためのAI活用を目指す研究者は、バイオメディカル画像解析、研究室の自動化、分子測定データのAI解釈などAIの自動制御による実験やデータ分析を実施するプロジェクトも進んでいる。