FIAフォーミュラ・ワン世界選手権、第5戦スペインGP(開催地:スペイン・バルセロナ・モントメロ・シルクイート・デ・カタルニア<コース全長:4.655km・決勝66周>、開催期間:5月13~15日)の決勝レースが4月15日(日曜日)に実施された。
レースは、1列目スタートのメルセデス陣営2台が、ダブルリタイアとなる波乱の展開で始まった。
コース上に残った後続のレッドブルの2台と、フェラーリの2台が首位争いを繰り広げ、最終的には元トロ・ロッソのマックス・フェルスタッペン(レッドブル)が2位に終わったライコネン(フェラーリ)の追撃を退け、レッドブル移籍後初戦での優勝を果たした。
これによって、1997年生まれのフェルスタッペンは、オランダ人F1ドライバーとして初優勝を飾っただけでなく、18歳227日で歴代F1史上最年少優勝記録(これまでは2008年イタリアGPのセバスチャン・ベッテル、21歳73日)を更新している。
3位はセバスチャン・ベッテル(フェラーリ)、4位ダニエル・リカルド(レッドブル)となっている。マクラーレン・ホンダ陣営は、ジェンソン・バトンが9位。今季初のQ3進出を果たしたしたフェルナンド・アロンソは、マシントラブルによりリタイアとなった。
前日14日の予選では、ルイス・ハミルトン(メルセデス)がPP、僚友ニコ・ロズベルグ(メルセデス)が2番手で決勝のスタートポジションに着いた。
その後方には、ダニエル・リカルド(レッドブル)、フェルスタッペン(レッドブル)が並ぶ。
決勝当日は、気温21度・湿度51%・路面温度40度のドライコンディション。グリッドに並ぶほぼ全車がソフトコンパウンドのピレリを履いてのスタートとなった。
スタート後のターン1への進入で、ロズベルグがハミルトンをアウト側から被せる形でオーバーテイク。
次にターン2、ターン3をそのままやり過ごした2台は、ターン4の進入で接触してリタイヤ。レースは始まって早々にフルコースコーションに入る。
その後3周目にレースは続行され、コース上のポジションはフェルスタッペン(レッドブル)、カルロス・サインツ(トロ・ロッソ)、セバスチャン・ベッテル(フェラーリ)、キミ・ライコネン(フェラーリ)、バルテリ・ボッタス(ウィリアムズ)、セルジオ・ペレス(フォース・インディア)、ジェンソン・バトン(マクラーレン)、フェルナンド・アロンソ(マクラーレン)、ロマン・グロージャン(ハース)と続く。
初回のタイヤ交換は10周目以降に行われ、大半のドライバーがソフトコンパウンドからミディアムに変更した。
この時点でのフォーメーションは、リカルド(レッドブル)、フェルスタッペン(レッドブル)、ベッテル(フェラーリ)、ライコネン(フェラーリ)、ボッタス(ウィリアムズ)、サインツ(トロ・ロッソ)、ペレス(フォース・インディア)、バトン(マクラーレン)、アロンソ(マクラーレン)、フェリペ・マッサ(ウィリアムズ)と続いた。
21周目に、ニコ・ヒュルケンベルグ(フォース・インディア)がマシントラブルでリタイヤ。
29周目と30周目にリカルド(レッドブル)、ベッテル(フェラーリ)が2度目のタイヤ交換でソフトコンパウンドにスイッチ。
35周目にフェルスタッペン(レッドブル)、36周目にライコネン(フェラーリ)がミディアムコンパウンドのタイヤに履き替え、39周目にはベッテル(フェラーリ)も、ミディアムコンパウンドに履き替え、44周目にリカルド(レッドブル)が最終のタイヤ交換を実施するまで上位陣のタイヤ交換が続いた。
その後47周目に、アロンソがマシントラブルでリタイアとなったこの時点で、首位を争う上位陣営は、フェルスッペン(レッドブル)、ライコネン(フェラーリ)、ベッテル(フェラーリ)、リカルド(レッドブル)に絞れられる。
レースはライコネンが執拗に、フェルスタッペンの攻略を行うもオーバーテイクには至らず。
その後方では、ベッテル(フェラーリ)とリカルド(レッドブル)の3位争いが展開される。
この3位争いの均衡を破ったのは49周目。接戦の中、リカルド(レッドブル)が左リアタイヤトラブルでピットインを余儀なくされる。
一方、首位争いはフェルスタッペン(レッドブル)がライコネン(フェラーリ)を退けてトップポジションを守り切ってゴールラインを跨いだ。
3位はベッテル(フェラーリ)、4位リカルド(レッドブル)、5位ボッタス(ウィリアムズ)、6位サインツ(トロ・ロッソ)、7位ペレス(フォース・インディア)、8位マッサ(ウィリアムズ)、9位バトン(マクラーレン)、10位ダニール・クビアト(トロ・ロッソ)と続いた。
なお今回、首位を勝ち取ったマックス・フェルスタッペンは、父親が元F1パイロットのヨス・フェルスタッペン。
カートレース経験を持つ母ソフィの勧めで4歳にレーシングカートに乗り始め、2012にカート界を席巻し、翌2013年に4輪レースにデビュー。2014年のヨーロッパF3選手権で最多勝を挙げ、世界戦のマスターズF3で優勝し、F1に参入した。
1位、マックス・フェルスタッペン
「すごく特別な気分だ。勝てるとは想定していなかった。表彰台でオランダ国家が流れて、父のことを考えずにはいられなかった。この勝利は父のおかげだ。
レース中は、集中してベストなドライビングを心掛けた。特に最後のタイヤ交換後、残り32周を走り切るため集中した。
残り5周でライコネンが、タイヤを痛めて少しスピードダウンしたのが分かったから、後はさらに慎重に走ることを心掛けた。今は最高の気分で言葉がない。またライコネンは以前、父ともレースをしていたので、それについても感慨深い」
レッドブルチーム責任者、クリスチャン・ホーナー
「デビュー戦で、史上最年少ウイナーとなったマックスにとっては、きっと忘れがたい1日になっただろう。
オープニングラップでメルセデス勢がリタイヤしたことで、我々は大量得点が可能な好位置につけていた。しかしフェラーリ勢が上位集団に居たため、勝利を得るのは簡単ではなかった。
このためレースでは、2ストップと3ストップで戦略を分けた。2ストップはギリギリのところだと考えていたが、マックスが最後までタイヤを持たせた。
ダニエルは、フレッシュなタイヤを履いて巻き返しを図ったのだが、残り数周のところでパンクチャーに見舞われてしまった。それがなければ彼も、きっと表彰台に上っていたことだろう。
この先も実績を積み上げていけると思うが、今日、ひとまず表彰台の頂点に戻って来られ、気分は最高だ」
2位、キミ・ライコネン
「スタートの印象は悪かった。クラッチを離したら、ひどいホイールスピンが起きたから。
それでも最初の数コーナーで何台か抜いてリカバーして、フェルスタッペン(レッドブル)に追いついた。
クルマの仕上がりは良かったし、スピードも充分あったのだが、トップを追って何周も攻略し続けていくと、タイヤには悪い影響を与える。そして僕はグリップとダウンフォースを少し失ってしまった。
マックスは最終コーナーがすごく速かったから、接近してついていくことは難しく、本格的に仕掛けることもできなかった。
あそこまで近づけたのに勝てず少し落胆したが、難しい週末の状況を踏まえたら、この結果を喜ぶべきだろう。
マックスは勝者に値する。ただそれは僕にとっては驚きじゃない。彼は去年からとてもいい仕事をしていたし、今日はいいクルマを手に入れて勝ったのだ」
3位、セバスチャン・ベッテル
「今日は勝てるチャンスがあったが、それも最後のピットストップを終えてコースに戻った時点まで。そこで自分の立場を理解した。
僕らはミディアムタイヤで苦戦していたけど、レッドブルは強かった。だからキミと僕はアタックできなかった。ソフトタイヤでは僕らも強かったが、戦略は2台で分けることにした。
3ストップの僕は、上位に攻撃を仕掛けて成功したけど、フレッシュタイヤを履いたダニエル(レッドブル)と僕は、結果的にトップに届かなかった。その結果を理解して今後に活かす必要がある。
クルマに悪いところはない。うまく機能している。フェルスタッペンにはおめでとうと言いたい。初勝利の瞬間は最高だよ。本当に特別な経験だ」
フェラーリチーム責任者、マウリツィオ・アリバベーネ
「我々は現実的になる必要があるだろう。もしメルセデス勢が2台ともレースに生き残っていれば、結果が異なっていたであろう事実は受け入れなければならない。
今日はたまたまチャンスを得たが、アドバンテージを生かせなかった点は反省点だ。
コース上で速いマシンだったが、結局、予選で経験した問題の代償を支払う格好となった。レース中にも、その問題に再び襲われている。今後はそれらのトラブルを解消し、そこから前に進んでいかねばならない。
今回はF1初勝利を遂げたマックス・フェルスタッペンにおめでとうと言おう」
1周目リタイヤ・ルイス・ハミルトン
「僕はポールからまずまずのスタートを切ったが、ターン1コーナーでスリップストリームを使われてリードを失った。
ターン3を抜けて急速にニコに追いついたから、空いていた右のスペースに入った。隙間はあったんだから、レーシングドライバーなら飛び込むのが当然だろう。
その後どうなったかは見たままさ。僕も傷ついたし、チームが43ポイントも失ってしまい落胆している。
チームは僕のために仕事をして、レースをする機会を与えてくれた。あのグラベルトラップの中に止まった時、僕の頭に浮かんだのはチームへの申し訳なさだけだった。それには心が痛む」
1周目リタイヤ・ニコ・ロズベルグ
「最高のスタートを決めて、ターン1のアウト側からルイスを追い抜いた後は有頂天だった。あの瞬間、このレースは僕の勝ちだと思った位だ。
しかしターン3を抜けた時点で、パワーが落ちているのに気づいた。エンジンモードのスイッチが間違ったところに入っていたせいで、違うモードが選択されていた。
ルイスが近づいてきていたから、できるだけ早く分かりやすい動きで右を攻めようと思った。彼に、そっちはダメだよって示すためにね。
しかしルイスがインサイドに来たから驚いた。もうそうなったら次にどうなるかは分かる。グラベルにはまった。
ショックでたまらない。自分のことだけじゃない。チームを思うと本当にショックだ。ドライバーとして最悪の気分だ」
メルセデス・ベンツチーム責任者、クリスチャン・トト・ウォルフ
「過去数週間に渡って取り組んできたすべてのハードワークを考えると、ノーポイントに終わったことは非常に残念でならない。
とはいえ、私は今回のことはレーシングインシデントだと思っている。ドライバーたちはポジションを争っていたわけで、どちらかを責めようとは思わない。
ふたりと話し、画像とデータを見ながら、何が起きたのかを判断した。われわれのように、ドライバーたちに自由にレースをさせていると、こういったことは起き得るものだ。
今日はチームの懸命な作業がグラベルトラップで終わることになってしまった。当然、こんなことは望んでいない。
両ドライバーとも、レース週末の度にどれだけのハードワークがなされているかを分かっているだけに、マシンをしっかりと持ち帰る責任がある。
チームとして、この数年で成熟してきたつもりなので、モナコでは再び戦いへと戻る。
我々にとっては最悪の1日だったが、マックスはこのスポーツのマジックをうまく生かした。彼には心からの賛辞を送る。きっと、今後多く起こるであろう勝利のほんの1勝目に過ぎないと確信している」
以下はマクラーレン・ホンダ陣営の決勝終了後のコメント
フェルナンド・アロンソ
MP4-31-02
スタート 10番手
レース結果 45周目にリタイア
ファステストラップ 1分29.750秒 41周目(トップとの差 +2.802秒、13番手)
ピットストップ 2回:11周目(ピットストップ時間 2.41秒)および 40周目(ピットストップ時間 3.40秒) [オプション→プライム→プライム]
「午後のレースではマシンにまずまずの感触があったものの、私はいいスタートを切ることができず、そこですべてを失ってしまった。私のレースは1コーナーに到達するまでに事実上終わった。
その後50周にわたってジェンソンを追従したが、今日のレースでは常にトラフィックに引っかかっていたので、なんの制限もない状態で走ったり、マシンの真の速さをみせつけることができなかった。
レース終盤には、パワーを失ってしまった。それまではマシンの競争力がそこそこあったにもかかわらず、我々はそれを活かすことができなかった。
今日はメルセデスの両ドライバーがリタイアしたので、ポイントを獲得する良いチャンスだったが、それができなかった。我々は引き続き改善する必要がある」
ジェンソン・バトン
MP4-31-03
スタート 12番手
レース結果 9位
ファステストラップ 1分30.260秒 39周目(トップとの差 +3.312秒、18番手)
ピットストップ 2回:10周目(ピットストップ時間 2.63秒)および 37周目(ピットストップ時間 3.13秒) [オプション→プライム→プライム]
「私はフェルナンドとコース上で共に走っていたので、彼がリタイアしたのは残念だ。自身は今日、私は良いスタートを切った。全ドライバーの中で一番いいスタートだったろう。
ただ、レース自体はそれほど容易なものではなかった。マシンにはグリップが全くなく、なにをしてもうまくいかなかった。ただ一方でレース終盤は先頭集団のマシンもそれほど速くはなかった。
終盤、私の後方を走っていたベッテル(フェラーリ)とリカルド(レッドブル)、その後ろにはクビアト(トロ・ロッソ)がいて、彼らは新品タイヤを履いて走行していたので非常に難しい状況となった。
幸いにも、私は彼らよりもわずかに速いペースで走っていたため、その3台のマシンの前のポジションをキープすることができ、クビアトは私を追い抜くことができなかった。
ここでポイントを獲得するのは難しいと分かっていたので、今日の結果はそれほど悪くはない」
エリック・ブーリエ、MCLAREN-HONDA RACING DIRECTOR
「今日のスペインGPでは様々なドラマがあったので、ジェンソンが落ち着いて、いい判断をした結果、9位で完走したことに注目した人は、観客やTVで観戦していた視聴者の中にもほとんどいなかったと思います。
我々は、ダブル入賞を果たした2週間前のソチに続いて、本日のレースでもポイントを獲得したのです。
一方、フェルナンドはソフトウェアのコマンドの不具合によりICE(内燃機関)が停止してしまったため、今日はポイントを獲得することができず、地元のファンにとっては残念な結果となりました。
問題が発生するまではフェルナンドは懸命な、いい走りをみせていたので、トラブルによってレースを終えていなければ、彼もトップ10圏内で完走することができたかもしれません。
ただ、前にも言ったように、我々McLaren-Hondaは多少のポイントを稼ぐことを目指しているわけではありません。表彰台、勝利、そしてワールドチャンピオンの座を勝ち取ることが我々の目標であり、いずれ実現することは間違いありません。
次のモナコGPは特有の難しさがありますので、次戦の予測はしないつもりです。それでも我々は有名なモナコ公国の容赦ないコースで知られるストリートサーキットにおいて、まずまずの結果を出すために懸命な走りをするつもりです。
最後になりましたが、本日のレースでF1史上最年少優勝者となった若手のマックス(レッドブル)に対してお祝いの言葉を述べたいと思います。
それまでの8年間に同記録を保持していたのはセバスチャン・ベッテル選手であり、それ以前の5年間はフェルナンド、またそれ以前の44年以上にわたって最年少優勝者であったのは、わが社の創立者である偉大なブルース・マクラーレンです」
長谷川 祐介、本田技術研究所 主席研究員 F1プロジェクト総責任者
「今週末のスペインGPは期待が高かっただけに、ほろ苦い結末となりました。
アロンソの方は、エンジンのモードを切り替えてしまう、予期せぬ指令が送られたことによりパワーユニットがレース中に停止し、レースを終えることになりました。
幸い、パワーユニットそのもものトラブルではないので、エンジンの状況を確認次第、今後のレースにも適用できると考えています。
チームとしては今後こういったことが起こらないような対策案を考えたいと思います。
ジェンソンはすばらしいスタートを切った後、タイヤの磨耗に注意をしながらポジションを守るという難しいレースだったと思いますが、今週末ずっとトラクション不足に悩まされていたことを考えると、ポイント圏内でレースを終えられたことで喜びは大きいです」
スペインGP 2016 決勝リザルト
順位/カーNo・ドライバー/チーム/タイム
1/33・Mフェルスタッペン/レッドブル1:41’40.017
2/7・Kライコネン/フェラーリ/+0.616
3/5・Sベッテル/フェラーリ/+5.581
4/3・Dリカルド/レッドブル/+43.950
5/77・Vボッタス/ウィリアムズ/+45.271
6/55・Kサインツ/トロ・ロッソ/+1’01.395
7/11・Sペレス/フォース・インディア/+1’19.538
8/19・Fマッサ/ウィリアムズ/+1’20.707
9/22・Jバトン/マクラーレン/+1周
10/26・Dクビアト/トロ・ロッソ/+1周
11/21・Eグティエレス/ハース/+1周
12/9・Mエリクソン/ザウバー/+1周
13/30・Jパーマー/ルノー/+1周
14/20・Kマグヌッセン/ルノー/+1周
15/12・Fナッサー/ザウバー/+1周
16/94・Pウェーレイン/マノー/+1周
17/88・Rハリアント/マノー/+1周
–/8・Rグロージャン/ハース
–/14・Fアロンソ/マクラーレン
–/27・Nヒュルケンベルグ/フォース・インディア
–/44・Lハミルトン/メルセデス
–/6・Nロズベルグ/メルセデス