VWグループ傘下のV8エンジン製造、ポルシェに集約するためツッフェンハウゼンに新工場を竣工


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新たな時代の到来に合わせ、電気自動車の製造に必要な基盤整備も新設へ

ポルシェAG(本社:ドイツ、シュトゥットガルト 社長:Dr.オリバー・ブルーメ)は、プレミアムカーの代名詞となった同ブランドラインのみならず、VWグループ全域のV8エンジンを生産するための新工場を竣工し、エンジン製造事業をこれまでとは異なる新たなステージへと進む。

叩き上げで卓越した功績を挙げて「博士」の称号を持つに至ったフェルディナント・ポルシェ氏(Ferdinand Porsche)が育み、同ブランド・ライン車の大量生産の礎を築いたシュトゥットガルト-ツッフェンハウゼンの地。

その地に竣工された新工場は、時代を先取りする最先端の生産方式によって管理され、フル稼働時に於いては、400名の従業員が1日当たり約200基のV型8気筒エンジンを生産するに至っている。

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ポルシェは、この新しい生産施設に対して、今回約8,000万ユーロの投資を行った。この大型投資について、ポルシェAG・現社長のオリバー・ブルーメ氏は、「ポルシェとい名前は、設計から生産に至るまで、スポーティな高性能エンジンを造り出すブランドの象徴でもあります。

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これを踏まえ私達は、この新しいエンジン生産事業を開始することによって、このプレミアムな領域に於いてブランドラインの更なる強化を図っていきます。

具体的には未来に向けて、ポルシェのブランドラインを好まれるお客様へドライビングの愉しさを保証するだけでなく、従業員に対しても、新エンジン事業を糧に将来の仕事の確保のみならず、各々の人生に於ける未来のビジョンも約束します。

それと同時にポルシェというブランドラインを、今後は未来に向けて、エレクトリックモビリティの新時代へと導くため、この分野に於ける重要な基盤造りにも着手していく事になるでしょう」と述べている。

新工場は、フォルクスワーゲングループ内全体の企業価値拡大にも貢献していく

なお、このポルシェが構えた新しいエンジン工場は、ポルシェ単独のブランドラインの強化のみならず、実はフォルクスワーゲングループ内全体の企業価値拡大にも効果を発揮する事になる。

というのは、今後、VWグループ内に於ける全てのV型8気筒エンジンは、このシュトゥットガルト-ツッフェンハウゼンにて製造される予定となっているからだ。

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この決定について、ポルシェAGの労使協議会議長のウーヴェ・ヒュック氏は、「ツッフェンハウゼンはポルシェの伝説が生まれた場所であり、それは今も脈々と生き続けています。

最初の市販車である初代ポルシェ356モデルは、66年前にここで製造されました。当時は108名の従業員が働き、年間369台が製造されました。それが今日では、エンジンの生産のみで1,200名以上の従業員を雇用するまでに至りました。

ポルシェの魂はエンジンの中に存在します。そして今、ポルシェは魂を生み出す新しい拠点を持とうとしています。

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しかし、ポルシェは新しいテクノロジーと建物だけに投資する訳ではありません。人にも投資し、従業員のために相応しい労働条件を提供します。なぜならポルシェが成功を収めるためにもっとも重要な要素は、従業員だからです。

新しいエンジンの生産施設は、「ツッフェンハウゼン」、「シュトゥットガルト」及び「バーデン=ヴュルテンベルク州」、そして「スポーツカー製造の未来」、そしてとりわけポルシェの従業員に対する大きな責任を担うことになります」とコメントしている。

新工場のマネジメントの核となるのは、生産システムとの柔軟な連携

新設されるエンジン工場に於いてマネジメントの核となるのは、製造とオートメーションが調和して効率的に連結されるべく設計された柔軟な生産システムになる。まずこのシステムの恩恵は、ニューパナメーラに搭載されるV型8気筒エンジンの組み立てに反映される。

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この新たな取り組みについて、ポルシェAGの生産およびロジスティック担当取締役のアルブレヒト・ライモルド氏は、「私達はエンジン製造チームを、工場竣工計画の前段階から集中的に関与させ、彼らは新しい工場のために450以上のアイデアを発案しました。

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これらの要望と、価値あるアイデアは、職場環境への最高の貢献となり、生産品質と作業条件の双方でプラスになっています。

例えば人間工学的な先例となるアッセンブリー・ステーションでは、各従業員が個別の体格や仕事のやり方に合わせフレキシブルに調節することができます。

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また従業員は、単調さを避けるために、様々な種類の作業に携わり、組み立て工程全体について段階的に訓練を受けています。なぜなら私たちの工場に於いて誰が求められる究極の目標は、全ての作業者がエンジン全体の組み立てや設計そのものに精通することにあるからです。

彼らは最新のマシンと、当ブランドラインが生みだした工場専用の工具によってサポートされ、100を超えるイノベーションが生産システムに組み込まれています。

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例えば、ポルシェは従業員による設定が可能な産業用運搬車両を導入しました。これは、リチウム-チタンバッテリーを積んだ電動運搬装置です。

この装置は、工場の2つのフロアを跨いで設置された16,000個の磁石によるグリッドネットワークによって導かれ、自由自在に動き回ります。と云うのは、こうした柔軟な対応力を持つことによって、今後の製品変更や新方式に対して、生産工程を容易に適応させることができるようになるからです。

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電子制御ツールでも、柔軟性に優れたシステムを採用しています。例えば、電子生産ネットワークを介して、モノ造りの現場で日常的に使われるトルクや、スピードのプリセットもいつでも変更することができます。

つまり電子制御ツールは、特定の使用場所に限定されることなく、新しい仕事場に取り付けるだけで、原則的に組立工程で広く使用できるようになるのです。さらに、人間工学的に最適化された工具によって、使いや易さが向上し、作業はいっそう容易になります。

新しいエンジンの組み立ては3.5分ごとに始まり、95のワークピースキャリアが、全長432mのU形のラインに沿ってエンジンを運びます。110の作業サイクルのうち71サイクルが製造エリアにあり、8気筒エンジンが6.2時間で製造されます。

さらに新しいV型8気筒エンジンの生産工程に於いては、デジタル化とデータ管理機能の活用がさらに増えています」と語る。

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柔軟な成長を可能にする多機能な工場構造が、品質変動を検出して不具合の発生を防ぐ

一方、製造部門では、ポルシェAGのアグリゲートおよびコンポーネント部門の責任者であるクリスティアン・ウィル氏が、「エンジンが完成してテストされた後、各エンジンについて約2,300のデータユニットを回収することが可能です。製造開始からかなり早い時期に品質変動を検出して不具合の発生を防ぎます」と語っている。

彼は「2014年初頭に建設が始まった新しいエンジン工場は、ポルシェの主要生産拠点の西側の拡張ゾーンにあります。建物のフロア面積は約10,000m2で、工場は1階のロジスティクスと上階のエンジン組み立ての2つの階に分割されています。

多機能構造の生産エリアには、フレキシブルな使用を阻害するような恒久的な構造物はほとんどありません。そのコンセプトは、新しいテーマ内容と製品を追加する際の選択肢が失われないようにすることにあります。

そのため、新エンジン工場の区画と周辺には拡張のための準備がなされています。そして建物は、ポルシェが拡張するために取得した25,000m2の区画の北東ゾーンに建設されました。

更なる拡張工事のために建物の反対側のスペースを使用できるように、正面に沿ってオフィスとソーシャルスペースを備えた3階建てのエントランスエリアもあります。

内部には、上階にもうひとつの作業階を設けられるようにスペースを確保して設計されてもいます」と語っている。

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投資プログラムによって、より一層パワフルな成長を遂げつつある

加えてポルシェは、この新たな建造物の持続可能性についても新たなマイルストンを達成した。

新しい建造物が属する場所は、「ドイツ持続可能な建築物協会(DGNB)」からゴールド認証の事前証明書を受けた産業地区にある。

このため建物は、40の持続可能性基準に基づいて評価を受けた。とりわけ、建物の屋根の太陽光発電システムは、年間242,500kW/hの電気エネルギーを発生しなければならないとされ、これは従来の発電に比べ、発生するCO2に換算すると、105トンの削減となっている。さらに、広大な屋根が植物により緑化されており、大気環境の改善に寄与している。

ここ数年でポルシェは、3億ユーロ以上をシュトゥットガルト-ツッフェンハウゼンの主要生産拠点に投資してきた。

またポルシェは、新エンジン工場(以前のワイヤー工場)に隣接する旧トランスミッション製造施設を、中核ワークショップに変更することを計画している。

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併せて若いポルシェは、自社従業員のための新しいトレーニングセンターを以前の路面電車の停留所跡地に建設。さらにポルシェAGは、将来のプロジェクトに向けて中心部の事業用地をさらに開発するために、シュトゥットガルトの保有地を2倍以上の600,000m2に拡大している。

これは数年以内に10億ユーロを超える追加の投資計画となり、更なる成長を後押しするためには、さらなる資金の確保も必要だ。

こうした将来計画を立てるポルシェにとって、けん引役となるのは、初のフル電動スポーツカーにあるが、ツッフェンハウゼンだけでも1,000以上の新しい仕事が、この製品のために創出されるだろう。

ポルシェは約7億ユーロを主要生産拠点に投資し、今後の数年間に新しい塗装工場と単独の組立工場を建設する。エンジン工場は、電気駆動部を製造するために拡張され、既存のボディ製造ショップも拡張されることになるとしている。