トヨタ、2015第3四半期の連結決算で連続最高益を発表。ただし車両の世界販売は減少


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トヨタ自動車株式会社(本社:愛知県豊田市、社長:豊田章男、以下、トヨタ)は2月5日、2015年4-12月期(第3四半期)の連結決算(米国会計基準)を発表した。

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営業利益では2兆3056億円(9.0%増)と2年連続の最高益を記録

それによると、第3四半期連結累計期間に於ける売上高は、21兆4313億円(前年同期比6.5%増)となり、営業利益では2兆3056億円(9.0%増)と2年連続の最高益を記録した。

税引前純利益は、2兆4529億円(4.1%増)、純利益も同社同期としては3年連続での更新・過去最高益となる1兆8860億円(9.2%増)となっている。

なお車両の世界販売実績では、649万3000台(3.7%減)。日本国内販売は147万7000台(3.4%減)、海外全域で501万6000台(3.7%減)といずれも減少(日本、欧州、アジア、その他(中南米、オセアニア、アフリカ、中近東で減少)した。

平成28年3月期第3四半期決算短
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為替影響と原油安による米国市場の好況が、利益増の下支えに

同社自身の見立てによる営業利益増の要因は、為替変動の影響が3100億円(為替相場が前年同期より1ドルあたり約15円の円安・ただし対ユーロではマイナス影響があり、その他通貨でもマイナス影響がある)。

原価改善の努力が2350億円、その他の要因が208億円とした。

なお一部エリア業績面に限っては、諸経費の増加(2800億円)、販売面での影響(950億円)による営業利益源もあったとしている。

併せて、取材側の立場として考える大きな要因としては、原油価格の低下に伴う北米市場に於ける大型高級車の販売増が、好影響をもたらしたと見られる。

つまり、米国内エリアの市場好況が同期増益に大きく貢献したものの、車両の世界販売面に限っては、今後のマイナス要因も残す結果となったと考えられる。

連結決算要約(2015第3四半期)
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好結果を享受したトヨタ、ただし今期以降に於ける影響要素も

通期連結業績見通しでは、持分法による投資利益の200億円増加分を加味し、純利益を前回予測から200億円増の2兆2700億円としている。

総じて業績を俯瞰(ふかん)すると、過去累計の営業益によるまとまった貯金があるため、当面の不安要因を払拭出来るだけの体力はありそうだ。

ただし今期以降の収益にもたらす影響要素はある。

例えば、新型プリウスから始まった新たな車台「TNGA(Toyota New Global Architecture)」採用に伴う今後の投資償却分(今期日本国内の営業利益影響での前年同期320億円減の3927億円)が今後も発生すること。

米国内に於いて、カムリやミニバンのシエナ等で販売奨励金が増加していること。資源安影響によるロシア経済低迷による販売減(同期営業利益で38%減の205億円)などが考えられる。

増益要因(2015第3四半期)
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各セグメントに於ける概要(一部抜粋)は以下の通り

1.経営成績に関する説明
(1)業績の状況
世界に於ける同期連結累計の販売台数は、649万3000台。前年・同期連結累計比で24万7000台 (3.7%) 減少した。

国内販売台数は、147万7000台で同5万2000台 (3.4%) 減少。海外分は501万6000台となり、前比19万5000台 (3.7%) の減少となっている。

一方、売上高は21兆4,313億円。前年・同期連結累計比1兆3,157億円 (6.5%) の増収。営業利益も2兆3,056億円で、前比1,908億円 (9.0%) の増益となった。

販売台数減にも関わらず、営業利益が増加した要因は、為替変動の影響が3,100億円、原価改善の努力が2,350億円(その他の要因208億円)等によるものとしている。

結果、税金等調整前四半期純利益は2兆4,529億円となり、前年・同期連結累計比で、972億円 (4.1%) の増益。

株主に帰属する四半期純利益は1兆8,860億円と、前比1,592億円 (9.2%) の増益となった。

連結販売台数
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(2)事業別セグメントの状況
1)自動車事業
売上高では19兆5,979億円となり、前年・同期連結累計比1兆410億円 (5.6%) の増収。

営業利益は1兆9,990億円で前比2,074億円 (11.6%) の増益となった。営業利益増の要因は、為替変動の影響および原価改善の努力などによるものとしている。

2)金融事業
売上高は1兆4,339億円と、前年・同期連結累計比2,188億円 (18.0%) の増収。

営業利益は2,650億円と前比で199億円 (7.0%) の減益となっている。この営業利益減は、販売金融子会社に於いて金利スワップ取引等の時価評価益が減少したことによる。

3)その他の事業
売上高は8,346億円と、前年・同期連結累計比216億円 (2.5%) の減収となったが、営業利益は451億円と、前比18億円 (4.4%) の増益となった。

第3四半期連結累計期間に於ける利益要素 (2015年12月31日に終了した9ヶ月間)
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(3)所在地別の状況
1)日本
日本国内での売上高は11兆737億円と、前年・同期連結累計比5,671億円 (5.4%) の増収。

営業利益は、1兆3,509億円と前比2,074億円 (18.1%) の増益。営業利益増は、為替変動の影響および原価改善の努力等によるもの。

2)北米
米国内での売上高は8兆3,877億円と、前年・同期連結累計比1兆2,330億円 (17.2%) の増収。

営業利益は、4,261億円で前比702億円(14.2%) の減益となった。営業利益減は、諸経費の増加・為替変動の影響などによるもの。

3)欧州
欧州での売上高は1兆9,662億円と、前年・同期連結累計比1,709億円 (8.0%) の減収。

営業利益は507億円で前比157億円 (23.6%) の減益。減益理由は、販売金融子会社に於ける金利スワップ取引等の時価評価による評価損が計上されたことによるもの。

4)アジア
アジア圏での売上高は3兆8,022億円。前年・同期連結累計比1,013億円 (2.7%) の増収。

営業利益は、3,789億円で前比583億円 (18.2%) の増益。営業利益増は、為替変動の影響および原価改善の努力等によるもの。

5)その他の地域 (中南米、オセアニア、アフリカ、中近東)
売上高は1兆7,436億円と、前年・同期連結累計比1,466億円 (7.8%) の減収。

営業利益は919億円。前比153億円 (14.3%) の減益。営業利益減は、諸経費の増加等によるもの。

第3四半期連結累計期間に於けるセグメント要素 (2015年12月31日に終了した9ヶ月間)
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2.連結業績予想などの将来予測
2016年3月期 (2015年4月1日から2016年3月31日) の連結業績の見通しは、下記の通り。(1米ドル=120円、1ユーロ=132円を前提)

連結業績の見通し (通期)
売上高:27兆5,000億円 (前期比増減率1.0%)
営業利益:2兆8,000億円 (前期比増減率1.8%)
税金等調整前当期純利益:2兆9,800億円 (前期比増減率3.0%)
株主帰属の当期純利益:2兆2,700億円 (前期比増減率4.4%)

四半期・連結キャッシュフロー

四半期連結キャッシュ・フロー計算書
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3.その他の情報
(1)期中における重要な子会社の異動 (連結範囲の変更を伴う特定子会社の異動)なし。

(2)簡便な会計処理及び四半期連結財務諸表の作成に特有の会計処理の適用
税金費用の計算
税金等調整前四半期純利益に年間の見積実効税率を乗じて計算。評価性引当金の増減も含む。

(3)四半期連結財務諸表作成に係る会計処理の原則・手続、表示方法等の変更
2014年4月、米国財務会計基準審議会 (Financial Accounting Standards Board) が非継続事業の報告および企業の構成単位の処分に関する開示について新指針を公表。

同指針は、企業の営業および財務成績に重要な影響を与える戦略の変更を伴って処分される構成単位を非継続事業とすることを要求しており、2015年4月1日より同指針を適用した。

最後に先の愛知製鋼の工場爆発事故による生産停止の影響だが(トヨタより2月5日同日、当初予定通り2月15日(月)に稼働を再開するとのアナウンスが発表されている)、「2月5日現在の時点では、同影響を精査をするのは不可能(大竹哲也常務役員)」として、今業績見通しには織り込まれていないとの回答を得ている。

(会見対応:トヨタ自動車 常務取締役 大竹哲也氏、同じく取締役・専務役員 早川茂氏)