フランスのグループPSA(本社:フランス・パリ、CEO:カルロス・タバレス、以下、PSA)は、米国のゼネラルモーターズ・カンパニー(本社:デトロイト、CEO:メアリー・バーラ、以下、GM)から、同社の欧州部門であるオペル買収を週明けの3月6日の月曜日に正式発表すると見られている。
現在、両社は非公開協議ながら、この週末も集中討議を重ねている。
実のところオペルは、この合併話が持ち上がる今日に至るまでの16年間に亘り、延々と赤字経営を続けて来ているのだが、PSAのCEO・カルロス・タバレス氏は、欧州に於けるオペルの独・自動車メーカーとしてのブランドイメージを高く評価している。
実際、欧州に於けるオペルは、独プレミアムブランドの影響を得てバイアスが高まるハロー効果を得ている。
また、何よりも今買収が成立すれば、PSA+オペルのアライアンスは直近の総販売台数で315万台から、オペル販売分の約100万台が上乗せされ430万台レベルにジャンプアップ。
これにより、一気にカルロス・ゴーン氏が率いるルノーを抜き去り、欧州2位の自動車アライアンスに躍り出ることになる。
この規模を切り口とする立ち位置は、買収に伴い20億ユーロに到達すると語られている車体・エンジンなどの車体構成部材の共有化に加え、部品調達に於ける購買規模の強み拡大。
さらに、車両開発領域に於ける部門・技術系人員の統合効果などの複数要因で、中短期的にPSAの世界市場に於けるモビリティ戦略に大きな自由度をもたらすだろう。
なおこれに先立ち、タバレス氏は独メルケル首相と、英メイ首相に対して、性急な人員削減並びに工場閉鎖は行わないとして、一定の理解を得ていた。
さらに新グループとして傘下に加わる労働組合幹部とも暫定的な話し合いの機会を重ねたとしている。
しかしながらも、タバレス氏は拡大する新アライアンスの存在感を糧に、経済・経営的観点に立った部門統合を目指すなど、大なたを振るうものと目されている。従って当初、政財界が危惧していた人員の大型リストラ策も着実に実施されていくだろう。
と云うのはPSAは、2012年に経営難に陥った際、8千人の人員削減を敢行。フランス国内の工場閉鎖を断行する等で、都合4年間で1万7千人の人員削減を行ったことで2015年にV字回復を実現。
直近2016年決算では、最終利益で21億ユーロ(約2500億円)と前年比79%増やした。このうち自動車部門の売上高は1%減の540億ユーロ(直近1月の売上高に限っては前年同月比で6.8%も拡大した)。営業利益は22億ユーロの19%増。営業利益率を6%改善させた経営実績を持つからである。