2016年、グローバル・第3四半期の営業利益は5億5600万ドル。第3四半期の売上に対する純利益率は8.2%、営業利益率は14.5%
ザ・グッドイヤー・タイヤ・アンド・ラバー・カンパニー(Goodyear Tire and Rubber Company・本社:米オハイオ州アクロン、CEO:リチャード・J・クレイマー、以下グッドイヤー)は10月28日、2016年度の第3四半期及び、年初から9か月間の実績を発表した。
発表の席上に於いて、グッドイヤー会長兼CEOのリチャード・J・クレイマー氏は、「当社の第3四半期の実績は堅調でした。営業利益率はグローバル全体で14.5%となり、グローバル全体のコア事業の年初来営業利益は、過去最高レベルとなりました。
この数値を勘案し2016年度見通しを修正しましたが、これは最近の不安定な経済情勢を反映したものです。実際、グッドイヤーの米国向けの商用トラックタイヤ事業にも若干の影響が出ています。
ただし、この逆風は短期的と見ています。こうした逆風に対して、当社が提案する価値が変わることはありませんし、長期計画の実行にも影響しないと考えます。
そもそもグッドイヤーが掲げる戦略は、業界の流れを我々のビジネスに積極的に取り込むことにあります。例えば昨今、付加価値が高い、リム径が大きいタイヤへの需要がグローバル環境で大きく伸びています。
こうした製品需要に対して当社の柔軟な製品ラインアップと供給力で応えていくこと。それこそが我々の持続可能な成長の道を進めていく原動力であると考えます。
また、今日の発表に先立ち発表した2020年までの目標についても必ずや達成できると確信しています」と、自社の安定感について、その理由と具体的な施策について説明した。
2016年第3四半期の純利益は3億1700万ドル、年初来で7億300万ドルと堅調
なお先の通りで2020年までの目標設定を含め、今日の経営指数発表に遡る10月24日。同社は、ドイツのフィリップスブルク工場を閉鎖すると共に、欧州地域での生産能力を改めて吟味・見直し、最も付加価値が高いタイヤの製造能力の拡大を図ると述べていた。
これについて先のクレーマー氏は、今回10月28日の席上で、「今後当社は、その国々の高付加価値セグメントに狙いを定め、その成功に注力していく所存です。
より詳しくご説明すると、低成長で下降傾向のセグメントに於ける露出は極力控えるようにして、グッドイヤーのブランド力をより有効に活用していきます。
そしてカスタマーの皆さまの事業成長と、利益向上を精力的にサポートしていきます」と述べた。
さてここからは、今発表の数字を順を追って綴って行きたい。
まずグッドイヤーの2016年・第3四半期の売上げだが、これは38億ドルを記録たものの、この数値は前年同時期の42億ドルから若干減少している。
減少要因は、ベネズエラ経済の混迷に伴うグッドイヤー子会社の非連結化が、数字を押下げる根本要因となっている。
同じく製品の生産量に関してだが、タイヤ売上総数では4200万本を記録。これも先の2015年末に実施したベネズエラ子会社の非連結化に関わる調整を考慮すると、前年度に比べて「実質的に横ばい」という数値になっている。
地域に関するトピックとしては、AP(アジア太平洋)地域が大きく成長している。しかし一方で、アメリカ地域とEMEA(欧州・中東・アフリカ)地域の下降が大きくなったため、今季についてはAPの成長分で他地域の下降分を相殺しきれなかった格好だ。
結果、補修用タイヤの出荷本数は1%増、新車装着用タイヤの出荷本数は6%減となっている。
対して実績値を利益ベースで見ると、グッドイヤー全体での2016年度第3四半期の純利益は、3億1700万ドル (1株当たり1.19ドル)となり、前年同時期の2億7100万ドル(1株当たり0.99ドル)から17%増を記録した。
この数値に至った主たる押上げ要因は、所得税手当の処理に原因があった。これは各種税の入念な調整をして、一部が正当化料金で相殺されたものとなった。
また2016年第3四半期の調整済純利益は3億1000万ドル (1株当たり1.17ドル)で、前年同時期の2億7100万ドル (1株当たり0.99ドル)となり、1株当たり純利益は希釈化されている。
こうした要因から2016年第3四半期の営業利益は、グローバル全体で5億5600万ドル、前年同時期の6億200万ドルからの減少するとグッドイヤーでは弾いている。なお昨年度に於いてベネズエラ要因が含まないコア事業営業利益では、5億6300万ドルとなると見ている。
ここで年初来実績を取り上げると、2016年の年初来9か月間についてグッドイヤーの売上は114億ドルで、前年同時期比で8%減となった。この押し下げ要因も、先のも挙げたベネズエラ子会社の非連結化と、不利な為替換算にあるとしている。
タイヤ本数は合計で1億2500万本、パーセント比率では先の通りの前年比1%増。
これだけの数値を牽引したのは、これも先の通りのAP地域の貢献にある。具体的には主に日本の数字が大きく貢献した。貢献の細目は、日本グッドイヤーがこの年から完全出資会社となった事。そして中国市場拡大による押し上げ要因が働いたためとしている。
最後に補修用タイヤの出荷本数は2%増、新車装着用タイヤは3%減。これもベネズエラ子会社の非連結化要因を除くと、実質本数は2%増となる。
結果、グッドイヤーの年初来純利益は7億300万ドル (1株当たり2.62ドル)で、前年同時期の6億8700万ドルに対して2%増となった。
上記の押上げ要因は、主に各種税の入念な調整による所得税の低減化策にある。年初来の純益調整額は8億1800万ドル (1株当たり3.05ドル)で、前年同時期の6億4900万ドル (1株当たり2.39ドル)から増となり、1株当たりの額は希釈化された。
総合すると2016年のグローバル全体の年初来営業利益が15億ドル、対前年比で2%減となった。併せて2015年度については、ベネズエラ要因を含まない年初来9か月のグローバル全体コア営業利益は14億ドルとなっている。
以下は各リージョン(地域)に於ける利益数値等の細目となる。
アメリカ・リージョンの第3四半期の収益は、3億500万ドル。営業利益率は14.7%
アメリカ・リージョン:第3四半期 1-9月
(単位:100万) :2016 / 2015 / 2016 / 2015
タイヤ本数 :18.6 / 20.3 / 55.4 / 59.5
売上 :$2,070 / $2,398 / $6,111 / $7,057
営業利益 :305 / 376 / 856 / 982
営業利益率 :14.7% / 15.7% / 14.0% /13.9%
アメリカ・リージョンの2016年第3四半期の売上は前年同期比14%減の21億ドルだったが、これは本数の8%減を反映している。補修用タイヤの出荷本数は6%減、新車装着用タイヤの本数は15%減となった。
かつて子会社だったベネズエラのGDTNA(グッドイヤー・ダンロップ・タイヤ・ノースアメリカ)を非連結化した影響を除くと本数は5%減で、主な下げ要因は、カナダとブラジルの乗用車用の新車装着用・補修用タイヤである。
アメリカ・リージョンの乗用車用タイヤの出荷総本数は実質的に横ばいで、商用車用タイヤの出荷本数は12%減となっている。
2016年第3四半期の営業利益は3億500万ドルで、前年比で19%減。主な下げ要因はベネズエラ子会社の非連結化と、本数が少な目だったことにある。
ベネズエラ子会社非連結化は、本数で40万本減、売上で1億5500万ドル減、営業利益で3900万ドル減のマイナス要因となった。
GDTNAの売却はマイナス要因となり、本数で20万本減、売上で6000万ドル減、営業利益で6000万ドル減となった。
EMEA(ヨーロッパ・中東・アフリカ)リージョンの第3四半期の収益は1億3200万ドルで、営業利益率は12.3%
EMEA(欧州・中東・アフリカ)リージョン:第3四半期 1-9月
(単位:100万) :2016 / 2015 / 2016 / 2015
タイヤ本数 :15.4 / 16.2 / 47.0 / 46.9
売上 :$1,236 / $1,328 / $3,748 / $3,924
営業利益 :152 / 154 / 380 / 335
営業利益率 :12.3% / 11.6% / 10.1% / 8.5%
EMEAリージョンの第3四半期の売上12億ドルは前年同期比7%減となった。この数値に至った押下げ要因は、新車装着用タイヤ事業の販売戦略と乗用車用の小リム径タイヤでの競争激化を受けた販売本数の5%減にあった。補修用タイヤの出荷本数は3%減で、新車装着用タイヤの出荷本数は8%減だった。
2016年第3四半期の営業利益は、1億5200万ドルで前年同期比1%減となった。この数値に至った主な要因は、販売本数が伸びなかったことにある。
住友ゴム工業(SRI)との提携解消のマイナス影響は、本数にして10万本、売上にして1100万ドルに上った。ただしSRIに支払うロイヤルティが減少したため、営業利益に600万ドルのプラス効果もあった。
アジア太平洋リージョンが過去最高の第3四半期収益の9900万ドル、営業利益率18.3%
アジア太平洋(AP)リージョン:第3四半期 1-9月
(単位:100万) :2016 2015 2016 2015
タイヤ本数 :8.0 6.0 22.6 17.7
売上 :$541 $458 $1,558 $1,399
営業利益 :99 72 270 223
営業利益率 :18.3% 15.7% 17.3% 15.9%
アジア太平洋(AP)リージョンの2016年第3四半期の売上は、前年同期比18%増となり、5億4100万ドルとなった。
この数字を積み上げた押上げ要因は、日本・中国・インドが主に牽引した売上本数の33%増にある。
但しこの好結果は、価格/商品構成で一部相殺されている。相殺要因は、主に原料価格の低下による価格への影響である。補修用タイヤの出荷本数は47%増で、新車装着用タイヤの本数は16%増となった。
2016年第3四半期の営業利益は9900万ドルで、前年同期比38%となり、過去最高となった。主な上げ要因はタイヤ本数が大きかったことにある。
日本グッドイヤー(NGY)の取得は、130万本増および売上4800万ドル増のプラス効果となった。NGY取得とダンロップ・グッドイヤー・タイヤ社の株式売却により、営業利益に400万ドルのプラス効果が出た。
財務目標の設定
グッドイヤーは2015年9月に発表した2020年財務目標と資本配分計画を確認した。
また同社は2016年の財務目標を修正して、2016年通年の財務目標を確定した。グッドイヤーは、2016年通年での営業利益を20億ドルから20億2500万ドルの間を予想している。
株主への配当プログラム
グッドイヤーは2016年9月1日に四半期分の配当として1株当たり7セントを支払った。役員会は2016年11月1日時点の登録株主に対して、2016年12月1日に四半期分の配当を1株当たり10セント支払うことを発表している。
なお以前に発表した11億ドルの自社株買いプログラムの一環として、同社は第3四半期に普通株170万株を5000万ドルで買戻している。