国際基準調和及び性能が不明なマフラーへの改造禁止の明確化
国土交通省は、四輪自動車の車外騒音に係る国際基準を導入するとともに、不正マフラーへの改造禁止を徹底するため、装置型式指定規則及び道路運送車両の保安基準の細目を定める告示等の一部を改正し、4月20日に施行した。その概要は以下の通り。
〇四輪自動車の車外騒音基準にかかる協定規則の導入
四輪自動車の車外騒音に係る基準の見直しについては、国連自動車基準調和世界フォーラム(WP29)において、平成9年より検討が進められてきたが、国内に於いて基準案に基づく車外騒音のサンプルデータを提供する等積極的に議論に参画した結果、平成27年6月に改訂が成立した。
〇性能が不明なマフラーへの改造禁止の明確化
使用過程車において、これまでは騒音性能基準のみを規定していたが、今改正により、証明機関による騒音性能表示等を義務付ける。これにより、加速走行騒音を有効に防止するものであるか不明である消音器を備えた自動車等は、保安基準不適合の扱いとなる。
装置型式指定規則、道路運送車両の保安基準の細目を定める告示等の一部改正について
◎1.背景
自動車の安全・環境基準について、国際的な整合性を図り自動車の安全等を確保するため、我が国は、国際連合の「車両等の型式認定相互承認協定」(以下「相互承認協定」という。)に平成 10 年に加入し、現在、相互承認協定に基づく規則(以下「協定規則」という。)について段階的に採用を進めている。
今般、平成 27 年 7 月の中央環境審議会「今後の自動車単体騒音低減対策のあり方について(第三次答申)」を受け、協定規則のうち、新たに「四輪自動車の車外騒音基準に係る協定規則(第 51 号)」(以下「協定規則第 51 号」という。)を採用する。
また、協定規則第 51 号の導入と併せて、四輪自動車及び二輪自動車ともに、新車時の近接排気騒音規制及び定常走行騒音規制が廃止するとともに、使用過程車において新車時の騒音から悪化しないことを確認する相対値規制を採用する。
さらに、使用過程車において、加速走行騒音を有効に防止するものであることが明らかでない消音器への改造又は変更(交換)を禁止する。
これらを受けて、装置型式指定規則(平成 10 年運輸省令第 66 号)、道路運送車両の保安基準の細目を定める告示(平成 14 年国土交通省告示第 619 号。以下「細目告示」という。)等について、所要の改正を行う。
◎2.改正概要
(1)細目告示等の改正
騒音防止装置(細目告示第 40 条、第 118 条、第 196 条、第 252 条、第 268 条、第 284条関係)
Ⅰ.協定規則第 51 号採用関係
【適用範囲】
普通自動車、小型自動車及び軽自動車(被牽引自動車、二輪自動車、側車付二輪自動車、三輪自動車並びにカタピラ及びそりを有する軽自動車を除く。以下「協定規則第51 号対象車」という。)
【改正概要】
協定規則第 51 号の技術的要件に適合することを義務付ける。
イ.市街地加速走行騒音要件
・ 加速走行騒音試験法について、協定規則第 51 号に定める市街地の走行実態を踏まえた加速走行騒音試験法を導入する。
・ 規制値については、別添の表1(車種別規制値)及び表2(特殊な構造を有する車両の規制値)に示す協定規則第 51 号と同様の規制値とします。なお、規制値はフェーズ1、フェーズ2と2段階で強化する。
ロ.追加騒音規定(ASEP)要件
・ 新たな加速走行騒音試験法の試験条件から外れたエンジン回転数で走行する場合に不適当な騒音の上昇を抑えることを目的として、乗車定員9人以下の専ら乗用の用に供する自動車及び技術的最大許容質量 3.5 トン以下の貨物の運送の用に供する自動車に対し、追加騒音規定を適用する。
ハ.圧縮空気騒音要件
・ 空気ブレーキを装着した技術的最大許容質量 2.8 トンを超える車両に対して、ブレーキ作動時等の騒音を低減するため、圧縮空気騒音規制を導入する。圧縮空気騒音の規制値は 72dB とする。
二. 定常走行騒音規制の廃止
・ 協定規則第 51 号の導入により、定常走行騒音の規制効果が確保されることから、協定規則第 51 号の適用にあわせて、定常走行騒音規制は廃止する。
ホ.新車時の近接排気騒音規制の廃止等
・ 協定規則第 51 号においては、新車時には近接排気騒音の測定のみを行っているため、新車時の近接排気騒音規制は廃止し、測定のみを行う。
Ⅱ. 二輪自動車等の新車時における近接排気騒音規制の廃止関係
【適用範囲】
二輪自動車等(二輪自動車及び二輪の原動機付自転車(総排気量が 50cc を超えるもの又は最高速度 50km/h を超えるものに限る。)をいう。以下同じ。)
【改正概要】
二輪自動車等についても、協定規則第 51 号と同様に新車時の近接排気騒音規制を廃止し、新車時に測定のみを行う。
【適用時期】
新型車(輸入自動車を除く。):平成 28 年 10 月 1 日以降
上記以外の自動車(継続生産車等):平成 33 年 9 月 1 日以降
Ⅲ. 使用過程車の近接排気騒音規制の相対値化関係
【適用範囲】
協定規則第 51 号対象車及び二輪自動車等
【改正概要】
使用過程車に対する近接排気騒音規制は、これまで車両の種別毎に一律の規制値を設けて規制する手法(以下「絶対値規制」という。)により行ってきたが、車両の型式毎に新車時に測定された値と同等の近接排気騒音値を求める規制手法(以下「相対値規制」という。)に移行する。
ただし、これまで絶対値規制が適用されていた使用過程車については、相対値規制を遡及適用せず、従前通り、絶対値規制を適用する。
また、純正マフラーを現行のマフラー性能等確認制度等により性能等が確認されたマフラーに交換したものにあっては、当面、絶対値規制を継続する。
【適用時期】
○ 協定規則第 51 号対象車:協定規則第 51 号採用関係のフェーズ1適用時期と同じ
○ 二輪自動車等:二輪自動車等の新車時における近接排気騒音規制の廃止関係適用時期と同じ
Ⅳ. 使用過程車の消音器の改造防止関係
【適用範囲】
協定規則第 51 号対象車及び二輪自動車等
【改正概要】
使用過程車において新車時の騒音から悪化しないことを確認する相対値規制を採用することに伴い、使用過程車において、加速走行騒音を有効に防止するものであることが明らかでない消音器への改造又は変更(交換)を禁止することとします。
【適用時期】
○ 協定規則第 51 号対象車:協定規則第 51 号採用関係のフェーズ1適用時期と同じ
○ 二輪自動車等:二輪自動車等の新車時における近接排気騒音規制の廃止関係適用時期と同じ
(2)装置型式指定規則の改正
協定規則第 51 号の採用に伴い、相互承認の対象となる特定装置を追加等するため、型式指定規則第2条(特定装置の種類)及び第5条(指定を受けたものとみなす特定装置)の改正を行う。
【改正概要】
○ 第2条(特定装置の種類)
「四輪自動車の車外騒音に係る協定規則(第 51 号)」の採用に伴い、「騒音防止装置」の対象自動車の範囲を見直す。
○ 第5条(指定を受けたものとみなす特定装置)関係
「騒音防止装置」は「四輪自動車の車外騒音基準に係る協定規則(第 51 号)」に基づき認定されたものについて、型式指定を受けたものとみなす。
(3)その他
協定規則第 51 号の採用に伴い、道路運送車両法関係手数料規則※において、実費を勘案して騒音防止装置に係る試験のうち協定規則第 51 号に係る試験の手数料を規定する。
※道路運送車両法及び自動車検査独立行政法人法の一部を改正する法律(平成27年法律第44号)の施行に伴い、新たに制定された省令。自動車の型式指定等に係る基準適合性を審査するために必要な試験の費用等を定める。
◎3.スケジュール
施行:平成 28 年4月 20 日