スズキ、会長兼最高経営責任者の鈴木修氏、CEO職辞任へ


suzuki-in-march-2015-period-earnings-announcement20150512-2-min

スズキ株式会社(本社:静岡県浜松市、代表取締役社長:鈴木俊宏、以下、スズキ)は、6月8日開催の取締役会に於いて、同社会長兼最高経営責任者(CEO)の鈴木修氏がCEO職を辞任する人事を決めた。

また技術担当の本田治副社長も、退任する人事を併せて発表した。いずれも次回開催予定の定時株主総会日の6月29日付で実施される。

また役員報酬についても、鈴木会長が7月から6カ月間にわたり40%減額、鈴木俊宏社長が同期間に30%減額する。不正問題を起こした部署の管理職も処分する。

今回の代表取締役の異動及び役員報酬減額は、走行抵抗の申請に於いて国土交通省が定める規定と異なった不正な取扱いを行ったことに対する経営責任を明確にするため。

また監査役より、監査役月額報酬についても自主返上の申し入れがあった。

同社では、「お客様や、お取引様をはじめ皆様に多大なるご迷惑とご心配をおかけしておりますこと、改めてお詫び申し上げます」と述べている。

上記に関わる概要は以下の通り。

1.代表取締役の異動。
(1)異動の理由:経営責任の明確化のため。

(2)異動の内容:
– CEOを辞退:鈴木修 代表取締役 会長(CEO)。
– 代表取締役副社長を退任:本田治 代表取締役副社長。

(3)異動予定日:
平成28年6月29日(平成28年6月29日開催予定の定時株主総会終了時)。

2.役員報酬減額。
(1)2015年度の賞与。
– 代表取締役及び取締役 :辞退。
– 専務役員及び常務役員 :50%減額。

(2)2016年7月分以降の月額報酬。
– 代表取締役会長 :40%減額を6ヵ月間。
– 代表取締役社長 :30%減額を6ヵ月間。
– 代表取締役副会長 :25%減額を6ヵ月間。
– 取締役及び担当役員 :20%減額を6ヵ月間。
– 社外取締役 :10%減額を3ヵ月間。
– 監査役(新任の社外監査役除く) :10%減額を3ヵ月間(自主返上)。
– 専務役員及び常務役員  :10%減額を3ヵ月間。

3.関係者の処分
2010年4月以降現在までに、四輪技術本部のカーライン及び四輪エンジン第二設計部並びに技術管理本部法規認証部に関係した管理職を、就業規則に則り処分する。

4.再発防止対策の詳細
取締役会の責務として、役員及び従業員の法令遵守の意識を高めるための対策を強化するとともに、組織改革を含めた内部統制を強化することが当社の喫緊の課題と認識し、以下の再発防止対策の着実な実施に努めていく。

(1)技術者教育・研修の強化
今回の事案に係る再発防止策として最も重要なことは、コンプライアンス研修、法令知識に係る研修などの技術者教育の充実と考える。

特に安全や環境に関わる技術基準については、各技術部門毎に必要な研修をきめ細かく設定し、それぞれに関係する部門の担当者の受講を必須化する。

このため、先ずは各社内規程、マニュアル等を総点検する。さらに取締役をはじめ役員全員にコンプライアンスの自覚を促す。

従業員に対しては、定例の役職者研修や新入社員研修におけるコンプライアンス教育に加え、今回、特別に技術部門を対象として、本年7月~9月に全役職者、10月より一般社員全員に対して、「コンプライアンスと内部通報制度」に関する教育を実施する。

また、安全や環境に関わる技術基準については、技術者が遵守すべき法令等を部門別に洗い出し、業務遂行のための必須の研修として計画的に実施する。

走行抵抗測定を含む、排ガス・燃費の認証試験に関する教育は本年6月より実施し、他の法規についても順次実施していく。

(2)走行抵抗申請値決定に係る責任の明確化
社内規程では、カーラインにおいて走行抵抗申請値を決定することとなっていたが、担当者任せになっており、カーライン長の承認を得る手続きがなされていなかった。

このため、今後は、車種毎に「申請燃費値及び走行抵抗値決定会議」をカーライン長が開催することにより燃費値に対応する走行抵抗申請値を決定し、四輪技術本部長が承認することとするなど、惰行法による走行抵抗の測定や走行抵抗申請値の決定に係る手続きを定めた社内規程を本年6月8日付で制定し、施行する。

(3)走行抵抗申請値に係る社内チェック体制の強化
これまで、カーラインにおいて決定された走行抵抗申請値は、認証試験担当部門である四輪エンジン第二設計部が負荷設定記録に記入して法規認証部を経ずに提出されていたことから、法規認証部によるチェック機能が働いていなかった。

このため、本年8月までに法規認証部のチェック体制を強化し、「1)惰行法による実測」及び「2)惰行法負荷設定記録の
作成」を法規認証部が自ら行うことにより、走行抵抗の実測が必要な全仕様について惰行法によるデータの取得及び申請値としての使用を徹底していく。

また、認証関係で国土交通省に提出する書類やデータについて、適切な承認ルートを経て提出されているか、その手続きが社内規程で定められているかについて関係各部門において再点検を行い、本年6月中に法規認証部で必要な手続き規定を整備する。

(4)惰行法測定のための試験設備の整備及び測定技術の向上
申請に必要な惰行法による走行抵抗値の取得が思うようにできなかったことが問題の一因と考えられることから、必要な施設等の整備を進める。

相良テストコースについては、防風壁を本年5月30日までに設置済み。走行路面の整備については、本年8月末までに実施予定。試験装置については、効率的にテストを行うために台数を追加する。

また、安定して惰行法によるデータを取得するため、各種測定条件について、本年中に測定に与える影響を調査し、測定マニュアルの見直しを行うなど、測定条件を詳細に管理し、測定技術の向上を図ります。惰行法の測定技能を有する者を増やすとともに、その測定技能の習熟を図る。

(5)四輪技術本部における閉鎖的な体質の解消
今回の問題では、四輪技術本部内のカーライン及び各装置別の設計部門内において、他部門からの指摘を受けることなく、また、自浄作用も働かないまま、誤った取扱いが長年にわたり続いてきた。

これは、各設計開発部門では、技術情報の秘匿のため他部門から業務内容が見えづらくなっていることに加え、他部門との人事交流が少なく、組織が閉鎖的になっていたことが一因と考えられる。

このため、本年7月1日付で取締役会の下に「人財育成委員会」を設置し、先ずは技術者の人事交流の促進策に取り組んでいく。

なかでも、四輪技術本部の技術者については、本部内の異動だけでなく、生産部門、営業部門等の他部門との人事交流を積極的に図っていく。

また、本年6月中に四輪技術本部の各部門の業務フローを明確にした社内規程を制定する。

特に、カーラインについては、内部の上申・承認プロセス並びにカーラインから設計等関係部門への指示・依頼経路及び責任部門が対象項目毎に明らかになるようにする。

これにより監査部門による監査に的確に対応できるようにし、社内において開かれた組織としていく。

(6)技術に関わる業務監査体制の強化
当社では、2015年6月に施行されたコーポレートガバナンス・コードへの対応も含めたコーポレートガバナンス強化の方針を2015年12月の取締役会で決議した。この強化策の一環として、以下の組織の見直しを行っている。

1)監査部については、2016年4月より、従来の経理中心の監査から、専門化する各部門の業務監査を効率的かつ実効的に行うため、技術に精通した人員を配置することで、技術部門に対する実効的な監査を行う体制に変更した。
2)監査役については、2016年6月改選の監査役候補者に、豊富な技術関係の業務経験を有した者と広範な技術分野の学識経験者の計2名を加えており、技術部門に対する監査役の職務の実効性を高めていく。
この新たな組織の下、監査部と監査役が連携して、上記の(2)及び(3)による見直し後の認証業務の状況について、
法令に沿った業務ができているか、以下の計画にて監査を実施する。
3)本年7月までに、責任・権限等が明確になった業務マニュアルが整備されているかを確認する。
4)今後、各官庁へ提出する認証資料について、業務マニュアル等に基づき作成されているか、また、データとの整合性が取れているかを、本年9月までにサンプリングで調査し、その後も定期的に調査を実施していく。
5)コンプライアンス等技術者研修の見直し及びその実施状況を、随時確認する。

(7)内部通報制度の利用促進
同社では2002年より内部通報制度を設けていたが、企業倫理規程の中の一部の規定であったため、その存在が目立たず、周知するための取組も十分ではなかったことから、必ずしも有効に利用されていなかった。

コーポレートガバナンス強化の一環として、本年1月の取締役会にて新たな内部通報制度を決議し、本年4月12日付で同じく全面的に改訂した行動指針と併せて当社グループ内に周知徹底を図っている。

新しい内部通報制度では、通報すべき対象を法令や会社規則・行動指針の違反等に絞り込むことで、危機管理のための手段であることを明確にすると共に、通報するためのフォーマットを用意し、社内ホームページの分かり易い場所に掲載すること、通報窓口として外部の法律事務所を設定すること等により、違反行為等の従業員による通報を促進している。

今後も引き続き、制度の周知に努め、不正事案の発生予防或いは早期の発見・是正に役立てていく。