配送用電動アシストモビリティのプロトタイプを新提案
本田技研工業の米国現地法人アメリカン・ホンダモーター(本社:カリフォルニア州トーランス、社長:滝沢 一浩)は6月17日、都市部のラストマイルの配送向けの新事業「Fastport(ファストポート)」を発表した(冒頭の写真は輸送車両のプロトタイプ)。
Fastportは、アメリカン・ホンダモーター内で新事業の創出を担う組織「Honda New Business Innovation Lab(ホンダニュービジネスイノベーションラボ)」から誕生した、新FaaS(Fleet as a Service/フリート・アズ・ア・サービス)事業となる。
なお上記のFleet as a Service事業とは、企業などが保有・運用する複数の車両(フリート)を対象に、導入から管理・保守までを一括で提供するサービス(ソリューション)形態を指す。
翻ると日本国内では、都市部で手押しの宅配便台車などがあるが、米国・欧州では交通制度に係る定義が異なることから、そのような「手押し車配送」を再解釈した輸送手段と考えると判り易い。当該記事末尾には、短い動画も添付しているので輸送の様子などを閲覧されたい。
そんなFastport事業として初の製品は、配送用の電動アシストマイクロモビリティ「Fastport eQuad(ファストポート イークアッド)」のプロトタイプ。
これをドイツ・フランクフルトで開催される「Eurobike(ユーロバイク、2025年6月25日~29日開催)」で世界初公開するという。
消費者の手元まで荷物が届けられる物流の最終区間であるラストマイルでの配送は、都市部での交通混雑や、頻繁かつ迅速性の求められる配達環境など、物流チェーンの中でも特に複雑な領域となっている。
Fastport eQuadは、電動モーターによって自動で走る輸送手段ではなく、ライダーがペダルを漕ぐ力を主な原動力とし、それを電動アシストで補助する1人乗りの配送用マイクロモビリティである。
従って自転車レーンでの走行を想定して設計されており、複雑な交通環境や、渋滞が多い都市部での物流スピードなどで効率性の向上に寄与することを目指している。
また電動アシストの動力源として交換式バッテリー「Honda Mobile Power Pack e:(モバイルパワーパック イー)」を採用しており、簡単に充電済みバッテリーと交換することができ、クリーンで効率的な配送に寄与する。
ホンダは、Fastportの展開を通して、北米および欧州をはじめとする国際市場を見据えてマイクロモビリティ市場へ新規参入する。
Fastport eQuadは、米国オハイオ州のHonda Performance Manufacturing Centerでの生産を計画しており、2026年夏から本格的な量産を予定しているという。
Fastport eQuad について
先の通りでFastport eQuadは、ライダーの漕ぐ力を推進力としており、ライダーのペダル操作を電子的に動力に伝えるペダル・バイ・ワイヤ方式と、ペダル操作を電力で補助するペダルアシスト駆動システムを組み合わせ、力強く滑らかで静粛性の高いゼロエミッション走行を実現させるもの。
回生ブレーキシステムを搭載しエネルギー効率を高めた他、オートブレーキホールド機能も搭載し安全性も確保した。
またライダーが快適に走行できるよう、UVカット加工を施したキャノピーに加え、換気ファンや前面をしっかり覆うカバーも備えている。
Fastport eQuadには、北米・欧州それぞれの市場ニーズに応じて、大型と小型の2種類の車両および貨物ボックスを用意。
また、車両の全長を用途に応じてカスタマイズすることが可能で、食料品や、小型荷物から大型荷物まで幅広いサイズ、量の配送に対応する。
なおこれも先の通りだが、今事業は製品の提供だけではなく、FastportのFaaSプラットフォームと組み合わせた包括的なサービスを提供することで、より効率的でコストパフォーマンスの高い配送業務をサポートするもの。
従ってバッテリーや貨物ボックスなどの充実した保守・メンテナンス体制を備える他、車両の稼働状況やバッテリー残量、走行データを把握することができ、配送業務・管理業務の効率化に大きく貢献していく構え。加えて、ソフトウェアの自動アップデート(OTA)により、継続的に機能の向上を図る。
Fastportは、2026年の量産開始に先立ち、北米・欧州の物流・配送企業と連携した実証試験を実施。この検証を通して、より現地の顧客ニーズに応えられるモビリティサービスをと届けていきたいという。
Fastportゼネラルマネージャーで創設メンバーのホセ・ウィゾグロッド氏は、「Fastportチームは、都市部に於けるラストマイル配送の課題を解決するもの、配送バンに代わるもの、排出ガスゼロの選択肢となるものとして、Fastport eQuadの開発に注力してきました。
Fastport eQuadは、荷物や食料品などを必要な時にすぐ受け取りたいと考える都市生活者のニーズに応える製品です。Hondaのデザインおよびエンジニアリングの豊富な知見を生かして開発されたFastport eQuadは、持続可能な未来の実現を目指すHondaの取り組みを体現するものです」と話している。
Fastport eQuadプロトタイプモデル スペック
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車両本体寸法
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■大型モデル
全長:3.65 m(144インチ)
全高:2.1 m(84インチ)
全幅:1.2 m(48インチ)
■小型モデル
全長:3.4 m(133.9インチ)
全高:2.1 m(82.7インチ)
全幅:1.0 m(39.4インチ)
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貨物ボックス寸法
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■大型モデル用ボックス
長さ:2,389 mm(89インチ)
高さ:1,525 mm(60インチ)
幅 :1,216 mm(47.9インチ)
■小型モデル用ボックス
長さ:1,905.5 mm(75インチ)
高さ:1,460 mm(57.5インチ)
幅 :975 mm(38.4インチ)
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最大積載量
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■大型モデル:295 kg(650ポンド)
■小型モデル:145 kg(320ポンド)
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最高速度
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両モデル共通:20 km/h(12 mph)
最大積載時の航続距離
■大型モデル:最大約37 km(積載量により変動)
■小型モデル:未定
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電動アシスト動力源
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両モデル共通:Honda Mobile Power Pack e: 2個
記載スペックはプロトタイプ車両のものであり、変更される可能性があります。
問い合わせ先
事業性など本件に関する詳細は、以下のウェブサイトまたはメールアドレスまで。
ウェブサイト:https://fastport.honda.com (英語)
メールアドレス:fastport@na.honda.com