人員を20,000人削減し、車両生産工場を17から10へ削減
日産自動車(本社:神奈川県横浜市西区、社長:イヴァン エスピノーサ)は5月13日、ビジネス環境の変化に迅速に対応できるスリムで強靭な事業構造の実現を目指す経営再建計画「Re:Nissan」を発表した。
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その前提となる2024年度の財務実績、2024年度第4四半期3か月財務実績、2025年度の業績見通しは以下の通り。
2024年度のグローバルの販売台数は334万6千台に留まった。2024年度通期の連結売上高は12兆6,332億円、連結営業利益は698億円、売上高営業利益率は0.6%となった。
当期純損失(注1)は6,709億円、自動車事業のフリーキャッシュフローと同営業利益はそれぞれ通期で赤字となり、同事業のネットキャッシュは対前年度比で微減の1兆4,980億円となった。
2024年度第4四半期3か月は、連結売上高3兆4,900億円、連結営業利益58億円、売上高営業利益率0.2%、当期純損失注16,760億円となった。
025年度の業績見通しは引き続き、競争の激化、為替やインフレ圧力などから、厳しいビジネス環境が続くと想定。
併せて米関税等の環境の不確実性を踏まえ、2025年度の営業利益、当期純利益、および自動車事業に於けるフリーキャッシュフローの見通しは現時点で未定とし、中国の合弁会社に持分法を適用した2025年度通期予想はを東京証券取引所に届け出た。
注1)親会社株主に帰属する当期純利益
注2)2013年度から中国の合弁会社 東風汽車有限公司の連結方法が変わり持分法を適用。会計基準では連結当期純利益に変化はないものの、連結売上高と連結営業利益には東風汽車の数値は含まれなくなる。
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これを踏まえて日産は、新たなマネジメント体制のもと、目標や主要な取り組みについて見直しを行い、確実な事業回復に向けてさらなる取り組みを実行していくという。
日産のエスピノーサCEOは、「日産は直面する2024年度の厳しい業績、変動費の上昇、不透明な市場環境に対応するため、私たちは迅速に自己改善を行い、より販売台数に依存しない収益性を目指します。
新しい経営陣は目標を慎重に再評価し、確実に業績を回復させるためのあらゆる機会を積極的に検討しています。
Re:Nissanはコスト削減、戦略の再定義、パートナーシップの強化を柱とした現実的な実行計画です」と述べた。
同社はこのRe:Nissanを通じて、2024年度の実績比で固定費と変動費を計5,000億円削減。2026年度までに自動車事業に於ける営業利益とフリーキャッシュフローの黒字化を目指す。
そのための具体的な方策は以下の7つとなる
1.変動費の削減:日産は同計画を通じて、2,500億円の変動費の削減を目指す。
エンジニアリングとコスト効率を向上させ、厳格なガバナンスで本取り組みを推進。TdCトランスフォーメーションチーフの下に各部門から集められた約300人のエキスパートで構成するTdC改革オフィスを設置し、コストに関する意思決定を行う。
更に先行開発や2026年度以降の商品の開発を一時的に停止して、3,000人の従業員がコスト削減活動に集中的に取り組む。但し、開発期間を短縮するプロセスを迅速に適用することで、商品の市場投入を遅らせることはないとした。
また日産はサプライヤーパネルを再構築し、より少数のサプライヤーでより多くの量を確保する。そのために非効率さを排除し、従来の基準を見直していく。
2.固定費の削減:日産は変動費の削減に強力に取り組みながら、固定費を削減する機会も追求し、2026年度までに2024年度実績比で2,500億円の削減を目指す。
3.生産の再編と効率化(LFPの建設中止もその一環):車両生産工場を2027年度までに17から10の工場に統合。
パワートレイン工場についても見直しを行い、配置転換や生産シフトの調整に加え、設備投資も削減する。北九州市におけるLFP(リン酸鉄リチウムイオン)バッテリー新工場の建設中止も本取り組みの一部となる。
4.人員の削減:2024年度から2027年度にかけて計20,000人の人員削減を行う(発表済の9,000人の削減を含む)。
この対象には、グローバルに生産部門、一般管理部門、R&D部門の直接員、間接員、及び契約社員も含まれる。
販売費と一般管理費においても、シェアードサービスの範囲を拡大し、マーケティングの効率向上を推進していく。
5.開発の刷新:エンジニアリングコストの削減や開発スピードの向上を図るため、開発のプロセスを刷新する。
グローバルでR&Dのリソースの合理化を通じて、平均の労務費単価を20%削減することを目指していく。
部品種類を70%削減すると共に、プラットフォームの統合と最適化を進め、プラットフォームの数を2035年度までに現在の13から7に減少させる。
なお日産はリードモデルの開発期間を37ヶ月、後続モデルの開発期間を30ヶ月へと大幅に短縮する取り組みを進めているが、この取り組みで開発される車種には、新型日産スカイライン、新型日産グローバルC SUV、新型インフィニティコンパクトSUVが含まれる。
6.市場戦略と商品戦略の再定義:市場毎のニーズに合わせた最適な市場戦略と商品戦略を再構築する。
これにより収益ある成長を確保、開発リソースをコアビジネスに集中することが可能にしていく。
商品戦略は市場とブランドに焦点を当てて再構築する。革新的な取り組みを加速し、より魅力的な商品を届ける。
新戦略は、日産ブランドの鼓動を具現化したアイコニックなモデルを中心に、収益や成長に貢献する量販モデル等によって構成される。
市場戦略では米国、日本、中国、欧州、中東、メキシコを主要市場として位置付け、他の市場についてはそれぞれの市場要件にあわせたアプローチを行う。
まず米国では、ハイブリッドなど急速に拡大するセグメントへの対応や、日産ブランドとのシナジーを通じたインフィニティブランドの再生に取り組む。
日本では、モデルカバー率を拡大してホームマーケットにおけるブランドを強化する。
中国では複数の新エネルギー車(NEV)を投入し、市場でのパフォーマンスを強化し、中国からの輸出により多様でグローバルなニーズに対応していく。
欧州では、B/CセグメントのSUVに集中。ルノーグループや中国でのパートナーシップを活用してラインアップの拡充を進める。
大型SUVを中心に販売する中東では、中国からの供給についても検討してラインアップの競争力を高め、メキシコは重要な輸出ハブとしての役割を果たしながら、収益と成長に大きく貢献させていく。
7.パートナーシップの強化:日産はパートナーと協働して商品ポートフォリオを補完し、各市場で固有のニーズに応えるモデルを提供する。
そのためにアライアンスパートナーであるルノーおよび三菱自動車とは、幾つかのプロジェクトを進行させている。
例えば三菱自動車とは、先日発表された次期型「日産リーフ」をベースとした北米市場向け新型電気自動車(BEV)や、2025年度に市場投入予定のフィリピン向けの新型バンで協業。
また、日産とホンダは自動車の知能化・電動化における戦略的パートナーシップの枠組みにおける連携を継続する。
総じてRe:Nissanでは、会社の置かれた現状を全面的に精査し、業績回復のための必要な取り組みを明確にし、具体的な実行スケジュールを策定した。
目標では、非常に高いが、実現するための戦略と取り組みは明確と主張。日産は本計画を着実に実行し、業績を回復していくと纏めた。