日立オートモティブシステムズ、車載用・大容量直流電力線の通信技術を開発


同技術でパワートレインシステムのワイヤーハーネスの軽量化を実現し、自動車の燃費向上に貢献

株式会社日立製作所(本社:東京都千代田区、執行役社長兼CEO:東原敏昭)と、日立オートモティブシステムズ株式会社(本社:東京都千代田区大手町、本店:茨城県ひたちなか市、社長執行役員&CEO:関 秀明)は、車載用の大容量直流PLC技術を新たに開発した。

HEV(Hybrid Electric Vehicle)をモデルとした従来の接続方法と本技術による接続方法の比較

昨今の自動車業界では、世界的な自動車の環境規制の強化に伴い、高度な電子制御を用いた動力系ユニットの効率化が求められている。

しかし動力系ユニットで、より高度な電子制御を実現するためには、パワートレインシステムに搭載されるEGUやセンサー、アクチュエーター、それらを接続するワイヤーハーネスが逆に増加し続けしまい、これがシステムをより複雑化させている。

そこでパワートレインシステムを構成するエンジン・変速機などの装置ごとに分散しているECUを一つに集約して、動力系の統合ECUとし、システムレベルで効率化を図る方法が検討されてきた。

しかしECUを集約すると、一つのECUとワイヤーハーネスで接続されるセンサー及びアクチュエーターの数が増加。

結果、ワイヤーハーネスの総延長も増加し、その重量増によって燃費が悪化するという問題が発生する。

加えてECUを集約すると、通常ECU内に設置するアクチュエーター駆動用のMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)が一カ所に集中。これが発熱量の増加を促し車載部品として必要な自然冷却ができなくなる懸念も生まれてくる。

そこで日立と日立オートモティブシステムズは、パワートレイン統合ECUと、複数のセンサーやアクチュエーターを個々につないでいるワイヤーハーネスを集約して共有化し、ネットワーク接続を可能にする新たな電力線通信技術を開発した。

この技術はパワートレイン統合ECUと、センサーやアクチュエーターをつなぐワイヤーハーネスのネットワーク接続を容易にする「ネットワークの自動コンフィギュレーション技術」と、大きな電流が信号を妨げないようにする「安定した通信を可能にするノイズ回避技術」から構成されている。

この技術を用いることで、パワートレイン統合ECUと各センサーおよび各アクチュエーターを接続するワイヤーハーネスの総延長を削減。従来の接続方法と比べワイヤーハーネスの重量を約40%削減することを可能にし自動車の軽量化に貢献する。

さらに、MOSFETをECU内ではなくセンサーやアクチュエーター側に分散配置することで、パワートレイン統合ECUの発熱を従来の接続方法よりも約60%削減。これにより自然冷却自体も可能となった。

また併せてネットワークの自動コンフィギュレーション(設定)技術を用いることにより、従来必要だったセンサーとアクチュエーターをECUに接続するための設定や設計の変更も不要になった。

結果、センサーやアクチュエーターの種類や数を変える際に、ECUの再設定や再設計を必要とせずに車種展開を可能にするため、開発工程の削減にも効果がある。

なおこの技術は、2017年10月11日(水)~10月13日(金)に大阪国際会議場で開催される自動車技術会秋季大会で発表される。

今回、両社が開発した技術概要は以下の通り。

1.ネットワークの自動コンフィギュレーション(設定)技術
従来、センサーやアクチュエーターには通信機能がないため、それぞれをECUと個々に接続する必要があり、ワイヤーハーネスの量が増大していた。

これらセンサーやアクチュエーターに通信機能を持たせ、ネットワーク接続を実現するには、それぞれのセンサーやアクチュエーターの接続位置を把握し、個々を識別する必要がある。

今回開発したネットワークの自動コンフィギュレーション技術は、センサーとアクチュエーターの接続位置による配線抵抗の違いを検知することで、ネットワーク上の接続位置を自動で把握し、各センサーやアクチュエーターを識別することができるものである。

そのため、ワイヤーハーネスを共有化し、ネットワーク接続することが可能となり、ワイヤーハーネスの量が削減できる。

2.安定した通信を可能にするノイズ回避技術
車載ネットワークの通信規格であるDSI3などでは、一対のより線でEGUがセンサーに最大400mAを給電しつつ、通信を行えるようになっている。

しかしアクチュエーターの駆動に必要な大きな電流を流す時は、PWM(Pulse Width Modulation)によって駆動されたMOSFETのスイッチングにより、急峻な電流変化が発生するため、これがノイズとなり通信エラーが発生する課題があった。

そこで電力線に信号が流れるタイミングで大きな電流が流れるのを回避するように、MOSFETのスイッチングのタイミングを調整する電力線通信回路を配置することにより、電力線に信号が流れるタイミング前後のノイズを回避させた。

これにより、通信の誤り率を低減し、急峻な電流変化が発生する電力線上でも安定した通信が可能となった。