F1アメリカGP、ハミルトン首位で3度目のワールドチャンピオンに


1周5.513kmkmのサーキット・オブ・ジ・アメリカズ(米メキシコ州・オースティン)で、現地時間10月25日の早朝4時から、2015年FIA・F1世界選手権・第16戦、アメリカGP(10月23日~25日)の決勝レースが行われた。

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この全56周を消化した決勝レースの結果は、メルセデスAMGのルイス・ハミルトン(30歳)が勝利を飾り、これによりハミルトンは、通算3度目のワールドチャンピオンに輝いた。

これまでに通算で3度のワールドチャンピオンを手中にしたドライバーは、ジャック・ブラバム、ジャッキー・スチュワート、ニキ・ラウダ、ネルソン・ピケ、およびアイルトン・セナのみ。

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イギリス・ハートフォードシャー州スティーブニッジ出身のハミルトンは、今勝利により、これら選ばれたドライバーの仲間入りを果たす事となった。

F1チャンピオンシップのシリーズ戦を迎えた、今週末のサーキット・オブ・ジ・アメリカズは、連日、雨の影響を受け続け、予選セッショも決勝日の朝にまで順延された程だったが、その予選自体が再びに降雨に見舞われQ3が中止となる。

結果、Q2迄の記録を元にメルセデスAMGのニコ・ロズベルグがポールポジションを手中にし、同チームのルイス・ハミルトンが2番手。レッドブルのダニエル・リカルドが3番手となった。

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なおご多分に漏れず、今レースでもスタート直前段階で降格処分が相次ぎ、当初予選5番手のタイムを記録したフェラーリのセバスチャン・ベッテルは13番手に降格。

8番手を得ていたキミ・ライコネンも、新たな5基目のエンジンを搭載したことにより18番手に降格。12番手のバルテリ・ボッタス(ウィリアムズ)は、予選後にギアボックスを交換を実施したため16番手に降格処分となった。

苦難の予選セッションを経て、ようやく迎えた決勝のスタート前には、コースの所々が乾き始めていたものの、全域に於いてウエットコンディションなのは変わらず。

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全車インターミディエイトタイヤを履いたまま、フォーメーションラップに突入した。スタートは、ハミルトン(メルセデス)がアウト側を走るロズベルグ(メルセデス)を押し出して、首位を奪取。

一方、中団グループでは、フェリペ・マッサ(ウィリアムズ)のスピンによって、フェルナンド・アロンソ(マクラーレン)、ロマン・グロージャン(ロータス)、バルテッリ・ボッタス(ウィリアムズ)が影響を受け、後退を余儀なくされた。

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この間2列目スタートで、中段グループの混乱を免れたレッドブル勢は、2・3番地をキープすることに成功した。

レースの序盤は、ハミルトン(メルセデス)をトップに、ダニール・クビアト(レッドブル)、ダニエル・リカルド(レッドブル)、セルジオ・ペレス(フォース・インディア)、ベッテル(フェラーリ)、マックス・フェルスタッペン(トロ・ロッソ)、ライコネン、カルロス・サインツ(トロ・ロッソ)、ニコ・ヒュルケンベルグ(フォース・インディア)の順となった。

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その後、ロズベルグ(マクラーレン)を執拗にプッシュしていたダニール・クビアト(レッドブル)が、コースアウトしたことを切っ掛けに、先頭集団に残ったハミルトン(メルセデス)、リカルド(レッドブル)、ロズベルグ(メルセデス)、クビアト(レッドブル)による4台のドッグファイトが続いたが、16周目にリカルド(レッドブル)が、ハミルトン(メルセデス)遂にパス。

ハミルトンは、ロズベルグもパスされたことからピットインを実施し、それまで履いていたインターミディエイトタイヤを、ドライ路面用のソフトタイヤに交換。これに前後して、各車ドライタイヤへの換装が続いた。

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続く27周目に、エリクソン(ザウバー)がコース上でストップし、セーフティカーコーションになったため、ここからはリカルド(レッドブル)、ロズベルグ(メルセデス)、クビアト(レッドブル)、ハミルトン(メルセデス)、ベッテル(フェラーリ)、フェルスタッペン(トロロッソ)、ヒュルケンベルグ(フォース・インディア)、ペレス(フォース・インディア)、バトン(マクラーレン)、サインツ(トロロッソ)というオーダーになる。

さらに36周目にリカルド(レッドブル)と、ヒュルケンベルグ(フォース・インディア)が接触してバーチャルセーフティカーが発令。

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これが終息し、40周目の再リスタート時の序列は、ハミルトン(メルセデス)、ベッテル(フェラーリ)、フェルスタッペン(トロロッソ)、ロズベルグ(メルセデス)、バトン(マクラーレン)、ペレス(フォース・インディア)、アロンソ(マクラーレン)、サインツ(トロロッソ)、マルドナド(ロータス)、クビアト(レッドブル)となる。

直後、新品のソフトタイヤを履くロズベルグ(メルセデス)が、ベッテル(フェラーリ)をパスして2番手に浮上した。

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しかし10番手のクビアト(レッドブル)がクラッシュし、2度目のセーフティカーが導入される。46周目にセーフティカーが戻った後の48周目、ロズベルグ(メルセデス)が自らがドライビングミスを喫し、ハミルトン(メルセデス)が首位に復活。

これをチャンスにハミルトンは、追いすがるロズベルグとの差を広げて、そのままトップでチェッカーを受けた。

2位はロズベルグ(メルセデス)、3位ベッテル(フェラーリ)、4位フェルスタッペン(トロロッソ)、5位ペレス(フォース・インディア)、6位バトン(マクラーレン)、7位サインツ(トロロッソ)、8位マルドナド(ロータス)、9位ナッサー(ザウバー)、10位リカルド(レッドブル)という順でフィニッシュ。各々、貴重なチャンピオンシップポイントを獲得した。

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なおジェンソン・バトンは、路面がウエットからドライに徐々に変化するという難しい状況の中、タイヤ選択の戦略を組み立てて、7位で完走。

その後、カルロス・サインツ(トロロッソ)に5秒間のペナルティが科せられたことから最終的に6位に繰り上がり、決勝リザルトに同チームに嬉しいシリーズ最上位を献上した。

バトンの僚友フェルナンド・アロンソは、一時の周回遅れに脱落してから怒濤の追い上げ劇を演じて、トップと同一周回までに挽回。

一時トップ5まで順位を上げたものの、最終的には、燃料システムのセンサーの不具合が発生。これを走行しながら解決するまでに順位を落としてしまい、最終ラップで10位のポジションをダニエル・リカルド選手(Red Bull)に明け渡して11位で完走。ポイント獲得を逃した。

1位:ルイス・ハミルトン (メルセデス)
「この勝利で、初めてのブリティッシュチャンピオンシップを思い出した。あの時は父が運転する車で、一緒にWe Are The Championsを歌いながら帰った。

母、父、家族、それから私のファンのこと。彼らが多くの力を与えてくれた。

今日のレースは本当に大変だったし、何が起きてもおかしくなかった。特にラスト10~15周は普通ではなかった。当初レースをリードしていると思ったら4番手になっていたし、ニコも良い走りをしていた。チャンピオンに限りなく近づいたのに、それを手に入れられる気がしなかった。

アイルトン(セナ)と並べたことも信じられない。タイトルを3回獲得することがずっと目標だった。これからもできる限り長くレースを続けたい。それとチームには心から感謝している」

2位:ニコ・ロズベルグ (メルセデス)
「まずはルイスを祝福したい。彼はシーズンを通して強かったし、タイトルを手にする資格を持っている。

ただターン1で充分なスペースを残さずに僕に向かってきた。あれはやり過ぎだった。僕の方がコーナーの真ん中では前にいた。でも、これはチームとして別の機会に話し合えばいいことだ」

3位:セバスチャン・ベッテル (フェラーリ)
「今日はルイスのパーティーを台無しにしてやろうとしたんだけどね!また最後は、もっとニコに対してリスクを冒すべきだったかもしれない。

でも今日は素晴らしいレースだったし、クルマも素晴らしかった。13番手スタートだったんだし、これ以上は望めない。特にコンディションの変わり目でドライタイヤに変えてからは良かった。

結果はハッピーだけど、戦いから除外されてしまったことは残念に思う。これは来年の確実な進歩のための起爆剤になると思う」

【ホンダ陣営のコメント】
f1-united-states-gp-for-the-third-time-world-champion-in-hamilton-lead20151026-21フェルナンド・アロンソ
FP3
14番手 2分03.375秒(トップとの差 +3.858秒) 9周

予選
Q1 10番手 1分59.704秒(フルウエット)
Q2 11番手 2分00.265秒(フルウエット)
※Ferrariのセバスチャン・ベッテル選手とキミ・ライコネン選手がグリッド降格のペナルティを受けたため、9番手スタートに繰り上がり

レース
スタート 9番手
レース結果 11位
ファステストラップ 1分44.323秒 55周目(トップとの差 +3.657秒、11番手)
ピットストップ 3回:2周目 (ピットストップ時間 7.79秒 ※タイヤパンク)、18周目(ピットストップ時間 2.65秒)および26周目(ピットストップ時間 3.50秒) [インターメディエイト→インターメディエイト→オプション→オプション]

「今日の決勝は今までで最も良いレースの1つだ。2周目の時点で最後尾から2番目のマシンに、1分遅れで走行していて、その後、残り10周で5番手にまで順位を上げることができた。

それだけ力強く挽回していただけに、レース終盤で発生したメカニカルトラブルによって戦いができなかったことは残念だ。

最後に、3度目のワールドチャンピオンに輝いたルイス(ハミルトン)に祝辞を述べたい。彼はシーズンを通して非常に力強く、偉業を成し遂げた。来年は今シーズンよりも、ルイスを少しでも苦しめられるようになればと思う」

f1-united-states-gp-for-the-third-time-world-champion-in-hamilton-lead20151026-16ジェンソン・バトン
FP3
16番手 2分05.283秒(トップとの差 +5.766秒) 7周

予選
Q1 12番手 2分00.261秒(フルウエット)
Q2 14番手 2分01.193秒(フルウエット)
※Ferrariのベッテル選手とライコネン選手、およびWilliamsのバルテッリ・ボッタス選手がグリッド降格のペナルティを受けたため、11番手スタートに繰り上がり

レース
スタート 11番手
レース結果 7位
※サインツ選手(Toro Rosso)が5秒間のペナルティを科せられたため、6位に繰り上がり
ファステストラップ 1分43.026秒 50周目(トップとの差 +2.360秒、8番手)
ピットストップ 3回:17周目(ピットストップ時間 5.35秒)、27周目(ピットストップ時間 2.84秒)、および44周目(ピットストップ時間 3.46秒)[インターメディエイト→オプション→オプション→オプション]

「今日は戦略がモノを言うレースとなり、我々は戦略面において完ぺきなレースをした。ただ、ピットストップの判断はうまくいったものの、パフォーマンス不足については改めて見直す必要がある。

レース序盤は、ドライコンディションの中、レースを心から楽しむことができ、今までとの違いを少しでも見せられたように感じた。

他のドライバーよりも先にスリックタイヤを履いて、ピットストップもうまくいったものの、いったん路面が乾くと、どのドライバーもブレーキをかける場所が分かってくるから、我々にとってはかなり難しい状況となった。

他チームのドライバーが本領を発揮すると、我々はそのペースについていけない。それでも、ポイントを獲得できたことは良かったし、私はその挑戦を楽しむことができた。

最後に、古き友人でかつてのチームメートであるルイス(ハミルトン)に対してお祝いの言葉を述べたい。ルイスとMercedesチームは年間を通してミスをすることはなかったし、大きな功績を残したと思う」

f1-singapore-gp-qualifying-official-comments-announcement-of-the-honda-camp20150920-9エリック・ブーリエ|McLaren-Honda Racing Director
「我々McLarenは多少のことでお祝いをする習慣はありませんが、今日のジェンソンの6位入賞は我々にとって今季最高のレース結果の1つであり、満足するには至らなくとも、うれしい結果です。

今日のような波乱のレースで、ジェンソンはいつも通り、その状況を巧みに操りました。予断を許さない状況にもかかわらず、トラブルに巻き込まれることなく、落ち着いて徐々にポジションを上げ、必要なときにタイヤをセーブした結果、我々にとって非常に貴重なワールドチャンピオンシップポイント8点を獲得しました。

一方、フェルナンドは、本人のミスではないものの、さまざまなアクシデントが起こるレースとなりました。すばらしい走りを見せてくれましたが、最終的に僅差でポイント獲得のチャンスを逃しました。

今週末は変わりやすい天候のため複雑な状況であったにもかかわらず、メカニックのメンバーが一度もミスをすることはありませんでした。また、エンジニアや戦略担当者も、午後のレースを通してすばらしい仕事をしてくれました。

これまでも申し上げてきたように、まだやるべきことがたくさんあるのは分かっています。ただ、我々がHondaとともに進化しているのは確かですし、それを確認できることは励みになります。

5日後には、今度はメキシコシティでサーキット入りしますが、次戦のメキシコGPで今日の結果を足掛かりにできるようにしたいと思います。

最後に、ルイス・ハミルトン選手に対して「よくやった」と祝辞を述べたいと思います。

ウォーキングにもハミルトン選手の友人がまだたくさんいますし、みんな同選手がMcLarenのドライバーとして過ごした6年間に良い思い出を抱いています。ワールドチャンピオンを3回手にするのは本当に偉大な功績です。

今日、3度目のタイトルを獲得したことによって、これまでに同じく3回ワールドチャンピオンに輝いた、たった6人のドライバー(ジャック・ブラバム、ジャッキー・スチュワート、ニキ・ラウダ、ネルソン・ピケ、およびアイルトン・セナ – いずれもMcLarenでワールドチャンピオンに輝く)の仲間入りを果たしました。ルイス、おめでとう!

f1-singapore-gp-qualifying-official-comments-announcement-of-the-honda-camp20150920-8新井康久|株式会社本田技術研究所 専務執行役員 F1プロジェクト総責任者
「この週末は天候に恵まれず、大変短い走行時間でしたが、少ない中でマシン全体のセットアップの方向を見出せたことが本日の結果につながったと思います。

2人のドライバー、ピットワーク、そしてレース戦略がすべて噛み合ったと思います。

アロンソ選手のマシンは、彼の集中した走りと、週末を通して機能したSpec4のエンジンが終盤まですばらしい競争力を発揮していましたが、燃料系に何かのトラブルが一時的に発生し、その後回復したものの、ポジションを落とすこととなってしまって残念です。

次戦は連戦となりますので、エンジンチェックやデータの解析など、また短い時間となりますが集中して取り組みたいと思います」

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