デンソー、量子コンピュータを使う新型コロナ研究をサポート


カナダの量子コンピュータ開発企業であるディー・ウェイブ・システムズ(D-Wave Systems Inc.:本社:ブリティッシュコロンビア州、CEO:アラン・ブラッツ)は目下、自社開発した量子コンピュータを用いたクラウドサービス「Leap2」を世界に向けて展開している。そんな同社は今回、このソリューションを活用して、新型コロナウイルスの研究を行う企業や団体に対して、クラウドサービスの無償利用を促すプロジェクトを開始した。(坂上 賢治)

またプロジェクト始動に併せて同社は、過去に同社サービス利用の実績を持つ法人に対し、技術・運用面での支援を呼び掛け、これを受けた株式会社デンソー(本社:愛知県刈谷市、社長:有馬 浩二)は3月31日、同プロジェクトへの参加を表明した。

現在、世界では人類に対する危機として立ちはだかっている新型コロナウイルスの完全終息に向けて、治療薬開発や感染抑止に向けた研究が鋭意進められている。そこでディー・ウェイブ・システムズは、カナダ政府の要請を受け、新型コロナウイルスに関わる研究を目的に、量子コンピュータ利用を希望する企業・団体に対し自社サービスを無償て提供することを決めた。

一方、研究開発スピードの加速に期待が掛かる量子コンピュータは、利活用のための専門知識がどうしても必要とされる。デンソーは、これまで量子コンピューターを使った工場の効率化シミュレーションの実証実験など、多彩な研究を行ってきた。

具体的には、渋滞解消や交通問題などの社会課題を見据え、2017年にバンコクで豊田通商のシステムを搭載したタクシーのデータから配車のマッチングに関する検証で量子コンピュータを用いた施策を消化。

ほかにも生産現場のIoT化に向けて、自社工場内で部品などを運ぶ無人配送車の停止時間を極限まで短くするべく、量子コンピュータを活用して効率的な移動ソリューションを研究。約15%の稼働率向上を実現させている。

デンソーは、このような量子コンピュータに関する応用力や計算式算出に係る知見を、世界のコロナウイルス研究の加速に役立てるべく、量子コンピュータに入力する定式化や解析スピードを高速化させていくための技術支援を行う。

このプロジェクト参加についてデンソーの有馬浩二代表取締役社長は 「コンピューティング技術は、科学技術や産業の発展に貢献してきました。

量子コンピューティングは、 さらなる発展に貢献できる技術として期待されており、デンソーはその研究を続けてきた実績があります。

今回は、世界中で新型コロナウイルス対策に携わる多くの研究者や開発者が、ディー・ウェイブ・システムズによる量子コンピュータ ーの無償提供を即座に利用開始できるよう、技術支援のプロジェクトに参画し、デンソーのスピリッ トである総智・総力で新型コロナウイルスによる危機の回避と世界の継続的な発展に貢献したいと思います。

世界の知恵を結集させることで、この困難は必ず乗り越えられると信じています」と語った。

一方、ディー・ウェイブ・システムズのアラン・ブラッツ(Alan Baratz)CEOは「私たちは、ほぼすべての産業と人口に影響を与える未曾有の危機に瀕しています。

お客様やパー トナーの専門知識を当社のハイブリッド量子コンピューティングと組み合わせることで、世界中の個 人、組織、政府が迅速かつ共同で解決策を構築するための強力なリソースを提供できると考えています。

デンソーの研究チームは、当社の量子コンピューター利用に精通しています。我々は量子システムに関する専門知識を結集し、新型コロナウイルスに対応する皆様を支援します。

このプ ロジェクトを通じ、我々のの最新サービス「Leap2」に無償でアクセスできるようになり、古典的コン ピューターと量子コンピューターを組み合わせたハイブリッドソリューションを迅速に使うことができるようになります」と話している。