株式会社ブリヂストン(本社:東京都中央区京橋、代表取締役CEO 兼 取締役会長:津谷正明、以降、ブリヂストン)は12月16日、バス停車時に縁石とタイヤを接触させることにより乗降口と停留所の隙間を小さくする正着性向上について、横浜国立大学、日本交通計画協会と共同研究を実施。今回、新たに「次世代正着縁石・路肩形状」を考案した。
具体的には、株式会社ブリヂストンと横浜国立大学(「交通と都市研究室」:中村文彦教授)、公益社団法人日本交通計画協会の3者は、バス停車時に縁石とタイヤを接触させることにより乗降口と停留所の隙間を小さくする正着性向上について共同研究を行ってきた。
そして今回、新たにこの共同研究をもとに「次世代正着縁石・路肩形状」を考案した。
また、縁石と接触するタイヤサイド部に、新たな摩耗対策を施すタイヤ技術(バリアフリー用新コンセプトタイヤ)開発も進めている。
この研究の切っ掛けは、今後の公共交通に高い利便性、容易なアクセス性及び優れたバリアフリー性がより強く求められることにある。
特に、路線バスやBRT(Bus Rapid Transit:バス高速輸送システム)といったバス輸送では、乗降時のバリアフリー化が大きな課題の一つであり、高齢者、車いす利用者、ベビーカー利用者等の方たちが、安心してスムーズに乗降できるよう、バスと停留所の間の隙間を可能な限り小さくする、正着性が求められる。
現在、縁石にタイヤを一部接触させながらバスを停車させる正着性向上技術は、海外の一部地域では既に運用されている。
しかし日本ではこの取り組みが実用化されていない。一方で同技術は、乗降口隙間低減への車両仕様変更を必要としない為、世界での導入・拡大が検討されている。
そこで同研究では、次世代の都市交通を見据え、既存の手法を進化させ、より大きな価値(利便性、安心、安全)を利用者へ提供するのが狙い。なお本正着性向上に関する当社の研究内容については以下の通り。
正着性向上に関する共同研究について
ブリヂストンは、2015年10月から横浜国立大学と、2016年8月からは公益社団法人日本交通計画協会も交えて、タイヤと縁石・路肩形状の寄与の理解を起点に、バスの正着性向上に関する共同研究を行ってきた。その研究を通じて明らかになった課題は以下で事柄となる。
1.ドライバーに極力負荷をかけず、スムーズかつ安定してバスを縁石に寄せること・・・ドライバーの技量に応じて発生する、タイヤと縁石の間の正着距離のバラツキおよび接触時の衝撃を低減させること。
2.縁石接触時のタイヤダメージを低減すること・・・現在、海外の一部地域で実施しているタイヤサイド部を厚くする既存の手法(タイヤ重量増、転がり抵抗悪化傾向)を進化させること。
同社はこの2つの課題に関して、正着時の車両挙動、及び「縁石・路肩形状」と「タイヤ」の相互 作用の理解を進めて課題を解決する手段を見出し、正着性向上を目指している。
縁石・路肩形状によるソリューション
同社は共同研究の中で、ドライバーの技量に依存せず縁石への進入角度を制御する手法として、僅かなハンドル操作で自然に縁石にアプローチできる「路肩スロープ」を考案した。
同時に、縁石接触時のタイヤへの衝撃を緩和する「縁石底ラウンド形状」も有した、「次世代正着縁石」のコンセプト及び具体的な形状を考案している。
これらの検討に際し、各種センサーを用いて車両挙動を実測し、正着性の支配因子を抽出した。そして、停留所への車両アプローチシミュレーション法を新たに開発し、最適な縁石・路肩形状を求めた。
また、このコンセプトの妥当性を検証する為、ブリヂストンのプルービンググラウンド(栃木県那須塩原市)に「次世代正着縁石」を設置し、実車を用いた試験を実施した。
その結果、「次世代正着縁石」において、「欧州一般正着縁石」対比で、縁石と車両との間隔を半減し、目標正着距離40mm以下を達成した。さらに、縁石と車両との間隔のバラツキも大幅に低減。同時に、タイヤサイド部へのダメージ(摩耗量)も低減可能な事を確認した。
タイヤによるソリューション
並行して、縁石接触時のタイヤサイド部のダメージを低減する手法として、タイヤサイド縁石接触部に摩耗対策を施す技術開発を推進している。
この技術は、「タイヤと縁石の接触時に生じる摩擦エネルギーを低減する」コンセプトに基づいて開発し、サンプル試験で効果を確認した。
さらに、縁石接触時のダメージを実験及びシミュレーションで定量化した結果、サイド部の摩耗量を、3割程度抑制できると予測ししている。今後もブリヂストンは引き続き、試作タイヤの実車試験による検証を通じて、広くステークスホルダーに提供し得る価値の確立を目指している。
以上を踏まえ3者は今後も引き続き、「次世代正着縁石」ならびに「バリアフリー用新コンセプトタイヤ」両面の改良を行いながら、運行事業者の声を踏まえて技術を完成させ、2020年に向けての実用化を目指す。
ブリヂストンはそのなかで国内、海外を問わず、バリアフリー化の為の正着性向上を必要とされているステークスホルダーの意見を収集しながら、技術とサービスを確立させ、個々のニーズに適した形のソリューションを継続的に社会に提供することで、公共交通のバリアフリー化実現に貢献していくと述べている。