米国のフォード・モーター・カンパニー(Ford Motor Company、本社:米ミシガン州ディアボーン、会長:ウィリアム・クレイ・フォード, Jr、以下フォード)は米国時間5月22日、CEO職にあったマーク・フィールズ氏(56歳)が退任し、新たなフォード社長兼最高経営責任者(CEO)としてジム・ハケット氏(62歳)を起用する。
ハケット氏は、2013年から2016年に掛けて、同社取締役会のボードメンバーを務めており、傘下の米老舗家具メーカー、スチールケース社の再建を主導。
この時期、米アイデオ(IDEO)へ出資し、スチールケース社の企業の形を、旧態のモノ造り会社から空間コンサルティング会社として大転換。企業文化の刷新を実現した。
加えて、こうした取り組みのなかでシリコンバレーのITC企業とのパイプを醸成。さらにフォード本体に関わる領域に於いても、カーシェア・ライドシェア事業を後押しするフォードスマートモビリティLLCで、会長兼CEOとして同関連事業を強力に推進してきた人物である。
また併せて、エグゼクティブ・バイス・プレジデント兼社長にジム・ファーリー氏(54歳)。グローバル・マーケッツ担当執行役員兼副社長にジョー・ヒンリックス氏(50歳)。モビリティ・コミュニケーション担当執行役員兼副社長にマーシー・クレボーン氏(57歳)を任命する等、執行体制を大きく刷新している。
より具体的には、ジム・ファーリー氏は、フォードの北米・欧州、中東、アフリカ、アジア太平洋地域を統括。
加えてフォードの旗艦ブランドでもあるリンカーンモーター社と、グローバルマーケティングセールス&サービスも監督することになる。
なおファーリー氏は2015年以来、電動車両並びに自律走行車の戦略やビジネスモデルの開発を監督し、執行副社長兼会長を務めていた。
ジョー・ヒンリックス氏は、フォードのグローバルな製品開発を統括。製造・労務・品質・購買・環境・安全などのグローバルオペレーションを担う。
2017年1月来グループの副社長・情報技術と最高情報責任者を務めてきたマーシー・クレボーン氏は今後、モビリティ分野に於ける投資だけでなく、情報技術とグローバルデータ、インサイトを分析して同社の計画を加速するために昨年、立ち上げられたフォードスマートモビリティLLCの統括を担う。
フォード会長は、「ハケット氏は今後、世界中のフォードの世界的な事業と202,000人の従業員をリードしていくことになります。
今後、フォードは新た時代の到来に向け、官僚的な企業文化を改変。意思決定のスピードを上げ、企業文化・製品・サービスのかたちを塗り替えていきます。
ハケット氏は、そうした新たな時代に漕ぎ出すには、最も適した人物です」と語った。
さらにフォード会長は、「我々は、今後より大きな責任を引き受けてくれることになったジム・ファーリー、ジョー・ヒンリックス、マーシー・クレボーンといったとても有能な指導者に恵まれています。
彼らは、それぞれの能力を駆使して、既に確かな結果を残し続けて来た実績があります。
彼らは未来に向け、我々のブランドを支え、新たな機会を創出し、当社を強力に牽引していくジム・ハケットと密接に連携していくことでしょう」と述べた。
一方、ハケット氏は「ステークホルダーの皆さんと、よりダイナミックで活気に満ちた会社を造っていくべく、会長と共にフォードの舵取りを行っていくこと。
フォードに関わる全てのステークスホルダーの皆さんと一緒に働き、世界の消費者の生活を向上させていくための挑戦を続けて行くことに対して、期待と夢を膨らませています」と語った。
また併せて今回、退任となるマーク・フィールズ氏についてフォード会長は、「彼の強力なリーダーシップにより、フォードはターンアラウンド(投資後営業面でのテコ入れや設備投資、研究開発強化などといった中長期的に効果が出る戦略的な収益改善策)に成功した。フィールズ氏が、フォードに於いて印した足跡は大きい」とコメントしている。
ただ実際には、フィールズ氏の元でのフォードは、およそ3年のCEO在任期間中で同社株価が37%も下落するなどで、同社の年次株主総会前に於いて、同社取締役会からの圧力が増していた。
しかし一方で日本のマツダの復活を支えた後、フォードに於いても膨れあがった赤字を是正するべく、企業体質の筋肉質化を推し進めた。
これについては新たな改革の礎を築いたとも云え、今後、自動車製造・販売で過去100年余りを生きてきたフォードの新たな出発を後押ししたとも云えるだろう。