ポルシェAG(本社:ドイツ、シュトゥットガルト 社長:Dr.オリバー・ブルーメ)は2月5日、ル・マンの主催者であるフランス西部自動車クラブ(ACO)とWECの記者会見に於いて、2016年もFIA世界耐久選手権(WEC)のLMP1にエントリーすると発表した。
チーム監督のアンドレアス・ザイドル氏は、「ゼッケン1と2で戦うことは、名誉なことであると同時に挑戦でもあります。
2016年はさらに熾烈なレースが予想されますが、タイトル防衛のために戦う覚悟はできています。2月にアブダビで集中テストとトレーニングプログラムを開始します」とコメントした。
919ハイブリッドは、ル・マン・プロトタイプのトップカテゴリーへの復帰から3シーズン目を迎え、基本的なシャシー構造とパワートレインのコンセプトは維持しながら大幅な改良を行ったとされる。
LMP1プロジェクトの責任者であるフリッツ・エンツィンガー氏は、「レースにおける目標以外で最も重要な任務は、未来のテクノロジーのためにポルシェのノウハウを蓄積することにあります。
WEC独自の効率規定は、大きな技術的自由をもたらすとともに、ロードゴーイングスポーツカーのイノベーションとテストのための絶好の機会となっています」と語った。
ポルシェは、昨年の11月に、2014年に遡るドライバーラインナップに変更がないことを発表している。
具体的には、世界チャンピオンのティモ・ベルンハルト選手(ドイツ、35歳)/ブレンドン・ハートレー選手(ニュージーランド、26歳)/マーク・ウェバー選手(オーストラリア、37歳)組が1号車、ロマン・デュマ選手(フランス、38歳)/ニール・ジャニ選手(スイス、32歳)/マルク・リーブ選手(ドイツ、35歳)が2号車のステアリングを握る予定だ。
ル・マン・プロトタイプ・クラス1(LMP1)のレギュレーションは、並外れた技術的自由を提供することによってエンジニアに厳しい要求をつきつける。
目下ポルシェの919のハイブリッドシステムは、最新のダウンサイジングダーボテクノロジーと、2リッター4気筒にフューエル・ダイレクト・インジェクションを備え、2つのエネルギー回生システム(フロントアクスルからの制動エネルギーと排気エネルギー)の電力を保存するためにリチウムイオンバッテリーを使用している。
約1,000PSの最高出力を発生する919ハイブリッドは、同社の未来のロードゴーイングスポーツカーのために、ポルシェに多数の重要なインスピレーションを提供していると同社は云う。
例えば、純粋な電気駆動によるコンセプトカー、ミッションEの800Vテクノロジーが最新の例であり、高電圧テクノロジーによって大幅に充電時間を短縮させる4ドアコンセプトスポーツカーは、10年以内に生産が始まる予定としている。
LMP1テクニカル・ディレクターのアレキサンダー・ヒッツィンガー氏は、「今シーズンは2015年シーズンに最適化した919ハイブリッドと同じシャシー構造を流用します。
つまり、新車開発に時間を費やす必要はなく、2016年に向けて段階的に改良を行います。
シミュレーションによると、燃費と燃料流量に関する規定の変更は、ル・マン1周あたり約4秒の損失につながります。
919ハイブリッドでは他の領域の改善によってそれをどこまで埋め合わせすることができるか、あるいは果たしてそれが可能なのかはまだ予測できません」とコメントした。
歴史的観点に於いてWECは、1960年代から1980年代まで開催されていたスポーツカー世界選手権の伝統を引き継いでいる。
またWECは、F1に次いでサーキットで争われる最も重要なレースシリーズで、2016年には9カ国で9戦が行われる。
シーズンのハイライトはフランスで開催されるル・マン24時間レースであり、ポルシェとしては昨年17回目の総合優勝を果たしている。
他の8戦は6時間レースとして行われ、シルバーストーン(英国、4月17日)で開幕して、スパフランコルシャン(ベルギー、5月7日)へと続き、ル・マン(6月18日、19日)の後、ニュルブルクリンク(ドイツ、7月24日)へと移動する。
さらに新日程のメキシコシティー(9月3日)、オースチン(米国テキサス州、9月17日)、富士(日本、10月16日)、上海(中国、11月6日)、そしてバーレーン(11月19日)で最終戦を迎える。
結果的にWECは、ポルシェがトップレベルの耐久レースに復帰し革新テクノロジーを開発する絶好の機会となった。
2014年のデビュー以来、ポルシェ 919ハイブリッドが16のレースで獲得した成績は、12回のポールポジション、7回の優勝(そのうち4回はワンツーフィニッシュ)、5回のファステストラップ、2回の総合優勝(マニュファクチャラーズとドライバーズ)となっている。
2015年のレースでは、予選において919以外の車がフロントローに並ぶことはなかったが、ライバルメーカーは限られており、現状のコンポーネントを守って安定を守るチームが勝つのか、またリスクを取って新たな挑戦に挑むチームが勝つのか、勝敗の行方は開幕戦のシルバーストーンがひとつの鍵になるだろう。