東京海上日動火災保険株式会社(本社:東京都千代田区、取締役社長:北沢利文、以下「東京海上日動」)と、株式会社エヌ・ティ・ティ・データ(本社:東京都江東区、代表取締役社長:岩本 敏男、以下、NTTデータ)は、2016年12月より開始した保険証券へのブロックチェーン技術適用に向けた実証実験を完了した。
なお、ブロックチェーンを利用した保険証券のデータ化の実証実験を完了した事例としては、国内初となった。
1.背景
輸出入貨物にかかわる保険である外航貨物海上保険は、保険証券が売り手から買い手に譲渡されるため、保険証券は国を跨いで譲渡が行われ、銀行などの貿易関係者を介して国際的に流通する。
しかしながら、その流通は紙書類によるものが中心であり、貨物の買い手への到着に時間が掛かると共に、紛失リスクがあることなども課題となっていた。
「ブロックチェーン」はデータの耐改ざん性を確保した状態でネットワーク参加者間での情報共有が可能な分散ネットワーク技術であり、東京海上日動とNTTデータは、2016年12月から2017年3月にかけて、外航貨物海上保険における保険証券の領域へのブロックチェーン技術適用にむけた共同実証実験を行った。
2.実証実験概要
(1)内容
この実験では、外航貨物海上保険の保険証券についてブロックチェーンによるデータ化を実施し、関係者の適切なアクセス性能、業務効率性、セキュリティー性能等の観点から実運用を想定した検証ならびに、これに伴う人的コストや書類の送達コスト等の削減効果について検証した。
また、保険証券のデータ化にあたっては、同じくブロックチェーン上にあるL/C(信用状)やInvoice(商業送り状)、B/L(船荷証券)の情報を取り込み、これをブロックチェーン上の保険証券に反映することで、他の貿易関係書類との連関性についても検証した。
(2)実施時期:
2016年12月~2017年3月
(3)検証結果
本実験で実証できた主な結果は以下の通り。
この実験では、実際のブロックチェーン上において、関係者の適切なアクセス性能、業務効率性、セキュリティー性能について各種の検証を行い、いずれも当初の仮説を実証することに成功した。
各種のコスト削減効果についても測定をすることができ、当初の目的を達成した。
L/C、Invoice、B/Lをブロックチェーン上で取り扱った結果、保険証券のみならず貿易業務全体へブロックチェーン技術を適用することの有用性を確認できた。
貿易業務全体がブロックチェーンによって電子化された場合には、貿易関係者の業務効率が向上し、到着港における貨物の引き取りが促進されることから、保険会社の算定する港湾における貨物集積リスクが減少し、危険負担コストの減少につながることも確認された。
<確認された効果の例>
期待効果
保険会社 ・L/C保険条件手入力時間を1/6に短縮
・証券発行までの期間短縮によるサービス向上
(顧客満足度向上)
・保険証券の物流費用の削減
・書類チェックにかかる時間の削減
・港湾における貨物集積リスクの10%削減
保険申込者発荷主 ・輸出会社の申込所要時間を約1/7に短縮
・保険証券入手までの時間短縮
3.今後について
実証実験を通して、保険証券のみならず貿易業務全体へブロックチェーン技術を適用することの有効性が確認され、実用化に向けては貿易関係者が協調して課題解決を進めるグローバルな枠組みを作ることの必要性が認識された。
NTTデータは実用化に向けた課題解決のために、国内外における幅広い貿易関係者が参加する業態横断のコンソーシアムを企画・検討中である。
また、東京海上日動は貿易業務の発展に向けて、損害保険会社の立場で、実証実験で抽出された課題の解決を目指すと共に、他業態への貿易取引におけるブロックチェーン活用の普及に向け、NTTデータが設立を目指すコンソーシアムへの参画を検討していく。