スズキ、新型小型乗用車「バレーノ」で世界生産体制の構築へ


スズキ株式会社(本社:静岡県浜松市、代表取締役社長:鈴木俊宏、以下、スズキ)は3月9日、ハッチバックタイプの新型小型乗用車「バレーノ」を発売した。

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車種ラインナップは、1.0Lターボエンジン搭載車(XT)と、1.2L自然吸気エンジン搭載車(XG)の2タイプを設定としており、自然吸気エンジン搭載車のXGを3月9日に。ターボエンジン搭載車(XT)は5月13日から発売される予定だ。

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写真、新型バレーノを背景に、向かって左から「スズキ社長、鈴木俊宏氏」、「インド駐日大使スジャン・R・チノイ氏」、「スズキ会長、鈴木修氏」

イタリア語で表す「閃光(せんこう)」という意味を持たせた新型「バレーノ」は、スズキの小型乗用車づくりのノウハウを駆使し、デザイン、居住性、走行性能、安全性能など、コンパクトカーに求められる要素を高次元で調和させ、スズキが考える理想のコンパクトハッチバックを追求したモデルであるとしている。

日本・欧州向けには直噴DOHCターボエンジン搭載車を設定

エクステリア並びインテリアを含む車両開発では、流麗でエレガントなスタイリングに、ゆとりある居住空間と充分な荷室スペースを備えたパッケージングとした。

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パワートレインは、先の販売時期が異なる車種ラインナップに関する説明通りで、ひとつは、高出力と燃費性能を両立する新開発1.0L直噴ターボのブースタージェット エンジン(上記エンジン写真の向かって左)と6速ATを組み合わせた。

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さらにもうひとつのグレードは、1.2L自然吸気のデュアルジェットエンジン(上記エンジン写真の向かって右)とCVTの組み合わせの2種類とし、いずれも同社としては初の開発環境となるBセグメントプラットフォームに搭載したモデルである。

なお生産国のインド市場に於いては、1Lガソリンターボの設定はなく、その代わりに1.3Lディーゼルとの組み合わせになる。

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4メートルに収まるコンパクトな前後長にワイドな全幅を備える

プラットフォーム設計の基本思想は、同社から昨年来より相次いで発表が続く新開発プラットフォームを出発点としてしており、加えて今後、バレーノのプラットフォームに関しては、より大型のボディ搭載が予想されるBセグメントベースであることから、Aセグメントベースよりも、さらに強固で高剛性な内容としている。

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またバレーノの骨格開発にあたっては、しなやかで快適な乗り心地を追求した足まわりと併せて、高い走行性能と優れた燃費性能の実現を目指して腐心したと云う。

加えて衝突被害軽減システムをはじめとする先進の安全技術を投入した他、先行車との車間距離を保ちながら自動的に加速、減速して追従走行しロングドライブをサポートする安全・快適機能を採用する等、車両装備も充実させている。

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欧州での前評判が高い同グローバルカーをインドで生産

この新型「バレーノ」は、インドの子会社であるマルチ・スズキ・インディア社の最新鋭製造拠点・マネサール工場で生産し、自社ブランド製の輸入車と云う形をとって日本で販売していく。

ちなみに新型「バレーノ」は、既にインド国内では販売されており、今後はグローバルコンパクトカーとして、日本に続いて欧州をはじめ世界市場に広く展開される計画である。

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今回インド生産車を、欧州並びに日本への輸出していくことについて、スズキの鈴木修会長は、バレーノ発表会の席上にて、「1983年を皮切りに30年を超える期間、永らくインド同地に於いて車両生産を重ねてきた。

今日、マネサール工場やグジャラート工場を筆頭に、インド国内から出荷される製品クオリティは、当社の湖西工場(静岡県湖西市)などの日本国内工場と、肩を並べるレベルを達成している。

従ってモノ造りに関して、厳しい選択眼を持つ日本の消費層も、新興国からの輸出という先入観を覆して必ず受け入れて貰えると信じている。もとよりクローバル化とはそういうものだから。

新型バレーノは全世界市場に向けて、他メーカーの欧州車や日本車と対等に競えるグローバルカーとして、その位置付けに相応しい製品完成度を備えている。

当社は今後は「SX-4 S-cross」などを生産しているハンガリーの生産拠点並びに日本の生産拠点と組み合わせ、より対象車の主力消費地に合わせた拠点を選んだ上で、より良質でかつ求め易い車両を、日本や世界の自動車ユーザーに向けて提供していきたい」と述べた。

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国際市場を視野に据えたスズキの新たなチャレンジ

車両の実生産に於いては、相良工場(静岡県牧之原)で造られる「1.0L・DOHC吸気VVT直噴ターボエンジン」並びに、現時点でインド国内に於いて調達が難しい一部の「高張力鋼板部品(ハイテン材)」のみ、日本から製造済みパーツ等を出荷し、インド国内に於いて最終生産するスタイル。

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(ハイテン材・使用部位)

同社開発陣によると、車両構成部材・部品のほぼ8割が現地調達・生産によるものとなる。具体的にはバレーノに関しては、サスペンション構成部材を筆頭に、大半以上の部材・部品は現地調達となる。

ちなみに高張力鋼板の使用比率は上記画像で部位等が確認できるが、ボディ骨格に於いては重量比で46%に及ぶ。

その中身は、440~780MPa級の冷間プレス材が30%、980MPa級の冷間プレス材が16%。うち440~780MPa級の高張力鋼板はフロントサイドメンバーやルーフピラー並びにルーフレールなどに。

残りの980MPa級は、センターピラーやフロントピラー、サイドシル、フロントシートフレーム、バンパービームなどに使われている。

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今回のインド国内に於けるバレーノ生産は、スズキにとって、世界を舞台に見据えて、生産地域を選ばすに真のグローバルカー開発・生産に乗り出す事となり、次なる時代に向けて新たなクルマ造りにチャレンジしていくことを意味している。

筆者が、これについて発表会場内で技術者たちに聞くと、決定した製作地に於いて現地部材を調達しながら、世界を舞台に安定した品質を造っていくことに、前向きな意欲と手応えを感じているようだ。

さらに上記にあたり、今回のバレーノ発表会には、インド駐日大使のスジャン・R・チノイ氏(Sujan R. Chinoy)が出席し、国際輸出としては既に多数の実績を持っているマルチ・スズキ製車両ではあるものの、今回、初の日本への車両出荷を果たすにあたって、その記念すべき車両「バレーノ」を前に大使自らが喜びのスピーチを行った。

参考までにインド当地のバレーノは、昨年10月からの車両発売開始以来、昨月の2月末までの半年に満たない期間に於いて約3万8000台を売り上げている。

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新型「バレーノ」の主な特長
(1)流麗でエレガントなスタイリング
(2)Bセグメントのコンパクトなボディーに、ゆとりある居住空間と荷室スペース
(3)新開発のエンジンとプラットフォームによる、高い走行性能と優れた燃費性能
(4)先進安全技術とロングドライブをサポートする機能

販売目標台数(年間) 6,000台
メーカー希望小売価格(消費税8%込み)
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新型「バレーノ」の主な特長は以下の通り

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(1)流麗でエレガントなスタイリング

エクステリア
– 凝縮したエネルギーを前へ解き放つイメージを表現した、ロー&ワイドで力強くエレガントなスタイリング。豊かな面表情と、繊細なラインで、上質かつ優雅な躍動感を表現。

– 幅広のフロントグリルと特徴的な縦型のヘッドランプを採用した、先進的で上質な印象のフロントマスク。

– シャープな印象のLEDポジションランプを備えたディスチャージヘッドランプ。(XT、XTセットオプション装着車)

– 先進的なイメージを演出するリヤコンビネーションランプ[LEDストップランプ]。

– スポークタイプのスポーティーなホイールデザイン。
*XT、XTセットオプション装着車は16インチアルミホイール、XGは15インチフルホイールキャップ。

– 車体色は、「プレミアムシルバーメタリック3」をはじめ、全7色を設定。
*オータムオレンジパールメタリック、レイブルーパールメタリック塗装車は5月下旬販売開始予定。

インテリア
– 曲線と曲面で構成されたインストルメントパネルを中心に、優雅さ、躍動感、広がりを感じる上質な室内空間とした。

– 引き締まったブラック内装にメッキ、ピアノブラック塗装、シルバー加飾を施し、上質感を演出。

– 優れたホールド性を持つ、高い質感のシート。シート表皮は、本革(XTセットオプション装着車)とファブリック(XG、XT)を用意。

– 高精細で見やすい4.2インチ大型カラードット液晶のマルチインフォメーションディスプレイを採用。様々な走行関連情報やエンジンのパワー/トルクの情報などを、視覚的にわかりやすく表示。(XTセットオプション装着車)

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(2)Bセグメントのコンパクトなボディーに、ゆとりある居住空間と荷室スペース

– Bセグメント用の新開発プラットフォームの採用により、全長4mクラスのコンパクトなボディーサイズとしながら、レイアウトを効率化することで、ゆとりある居住空間と荷室スペースを確保したパッケージングを実現。

パッケージング
– 新開発プラットフォームの採用により、2,520mmのロングホイールベースと前後乗員間距離805mmを確保。ゆとりある居住空間を実現。

– ゆったりとした居住空間を確保した上で、大容量320Lの荷室スペースを実現し、使いやすさも追求。
*荷室容量はVDA(ドイツ自動車工業会)の定めたトランク容量測定値で、ラゲッジボード上段装着時の数値。

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– リヤシートを倒さずに9.5インチのゴルフバッグを横置きで積載可能。
*ゴルフバッグのサイズ、形状によっては積載できない場合がある。

– 6:4分割可倒式のリヤシートと、上段、下段に装着できるラゲッジボードよって、多彩なアレンジを可能とした。

– 運転のしやすさと快適性を追求
チルト調整量40mm、テレスコピック調整量36mmのステアリング、リフト調整量60mmのシートリフターにより、最適な運転ポジションを設定可能。

– ロングホイールベースながら、最小回転半径4.9mを実現。

– シートバックと座面を温める、運転席シートヒーターを標準装備。
*XTセットオプション装着車は、助手席シートヒーターも装備。

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(3)新開発のエンジンとプラットフォームによる、高い走行性能と優れた燃費性能

– 新開発K10C型ブースタージェット エンジンと6速AT、K12C型デュアルジェット エンジンと副変速機構付CVTを組み合わせたパワートレインを、軽量化と高剛性を両立する新開発プラットフォームに搭載。

さらに、しなやかさとしっかり感を追求したサスペンションにより、高い走行性能と快適な乗り心地を実現した。

– 高効率なパワートレインや、優れた空力性能などで1.0Lターボエンジン搭載車は20.0km/L※、1.2L自然吸気エンジン搭載車は24.6km/L※の燃費性能を達成した。
※燃料消費率JC08モード走行(国土交通省審査値)

– 新開発K10C型ブースタージェット エンジンを搭載
燃費とパワーを両立する1.0L直噴ターボエンジンを新開発。直噴化と過給器(ターボ)により、1.0Lの小排気量ながら、1.6L自然吸気エンジン相当の高出力、高トルクを実現。街乗りから高速走行まで、幅広いシーンで扱いやすく優れた性能を発揮。

– トランスミッションは、ダイレクトなシフトレスポンスを味わえる6速ATを採用。さらに、6速マニュアルモード付パドルシフトを備えた。

– K12C型デュアルジェット エンジンを搭載
高い次元で優れた燃費と力強い走りを両立する、デュアルインジェクションシステムを採用した自然吸気エンジンを搭載。
トランスミッションは、低速域での加速性能と高速域での燃費向上を両立する副変速機構付CVTを採用。

– 軽量で高剛性 Bセグメント用の新開発プラットフォーム
軽量化と高剛性を両立した、Bセグメントの小型乗用車用 新開発プラットフォームを新型バレーノから初採用。今後、この新開発プラットフォームを国内及び海外のBセグメント車に展開する。

– 軽量化による燃費性能の向上、居住性と積載性の両立に加え、走行性能の向上にも大きく貢献。

– ボディーやエンジン、足まわりにいたるまで軽量化を徹底し、車両重量910kg(XG)を達成。

サスペンション
– 欧州で徹底して走り込み、応答性が高く安定感のある操縦性とロングドライブでも快適でしなやかな足まわりを追求。
サスペンションフレーム構造を最適化し、軽量化と高剛性を両立。

– フロントおよびリヤサスペンションにスタビライザーを採用。

空力性能と静粛性
– デザイン性を重視しながら、空力性能を追求し燃費向上に貢献。さらに、高剛性ボディーを基本に、効果的な防音、防振対策を施し、優れた静粛性を実現。

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(4)先進安全技術とロングドライブをサポートする機能

– ミリ波レーダー方式による衝突被害軽減システム レーダーブレーキサポートII(RBSII)を標準装備。前方衝突警報機能、前方衝突警報ブレーキ機能、前方衝突被害軽減ブレーキアシスト機能、自動ブレーキ機能を備え、安全機能を充実させた。

– 先行車との速度差や車間距離を測定し、あらかじめ設定した速度(約40km/h~約100km/h)で先行車との車間距離を保ちながら自動的に加速、減速し追従走行する、アダプティブクルーズコントロール(ACC)を標準装備。

– 衝突時の衝撃を効率よく吸収、分散する軽量衝撃吸収ボディー[TECT]を採用。新開発プラットフォームにより、優れた衝撃吸収性を発揮。

– スリップや横滑りを抑えるESP(R)を装備。
*ESPはDaimler AGの登録商標

– 坂道で車両の後退を抑制する、ヒルホールドコントロールを装備。

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「バレーノ」製品情報
http://www.suzuki.co.jp/car/baleno/
「バレーノ」カタログ請求
https://krs.bz/suzuki/m?f=166

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