日立、イトーキ、トクヤマ、太陽光パネル板のアップサイクル実証

低温熱分解法と非破壊評価で板ガラスを粉砕せず、CO₂排出量最大50%削減を見込む

日立製作所(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:徳永俊昭)、イトーキ(本社:東京都中央区、代表取締役社長:湊 宏司)、トクヤマ(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:横田浩)は9月1日、資源循環型社会の実現を目指して、廃棄が課題となる太陽光パネルから回収した板ガラスの家具部材へのアップサイクル(本来は捨てられるはずの製品に新たな価値を与えて再生すること)を実証した。

具体的には、トクヤマの低温熱分解法で高品質な板ガラスを回収し、日立の非破壊強度推定技術により「亀裂」や「アルカリ溶出」などの劣化の影響を評価することで、板ガラスをそのまま再利用することを可能にした。

更にイトーキは、回収した板ガラスの個性を活かした会議ブースを試作し、再生材の新たな価値を提案した。

これにより、オフィスや公共空間で、環境配慮と美しさを両立したサステナブルな空間づくりが可能となり、利用者は社会貢献とデザイン性を併せ持つ新たな価値体験が得られる。

なおこの取り組みは、太陽光パネルから回収した板ガラスを粉砕せずにオフィス家具に再利用する初めての事例であり、廃棄物削減と共に、新規にガラスを製造する場合と比較してCO₂排出量最大50%の削減が見込まれ、持続可能な社会インフラの構築を後押しする。

太陽光パネルから回収した板ガラスを再利用した会議ブースの試作品

今後、本取り組みの実用化に向けて、オフィス家具のほか建材分野など多様な領域のパートナーと連携し、サプライチェーンの構築や事業モデルの検討、更なる品質検証と評価技術の標準化を進め、脱炭素および資源循環型社会の実現を加速させていく構えだ。

課題を解決するために開発した技術・ソリューションの特長は以下の通り

1.高品質板ガラスを効率的に回収する低温熱分解法
トクヤマは、独自の低温熱分解技術を用いて、使用済み太陽光パネルを構成する板ガラスやセル、インターコネクタを高品質に回収できる技術をNEDOとの共同研究により確立した。

熱分解条件と処理工程を最適化することで、主な部材の原料化(水平リサイクル)の取り組みに成功。更に板ガラスをそのまま製品化するための課題を抽出し、品質管理や処理工程に反映することで、より高品質な部材供給を可能にした。

2.劣化要因を考慮した非破壊強度推定技術
日立は、ガラスの劣化要因である「亀裂」と「アルカリ溶出」の強度への影響を複合的に評価し、劣化要因を判別する画像処理と組み合わせることで、回収ガラスの強度を推定する技術を開発した。

これにより、回収ガラスの安全性と耐久性を確保したアップサイクルを実現する。更に日立は、再生材マーケットプレイスの構築、アップサイクル技術の開発、日立-産総研サーキュラーエコノミー連携研究ラボでのグランドデザインの策定など、多様な取り組みを推進してきた。

これらの活動と連携し、当該技術をOne Hitachiで社会実装し、再生材マーケットプレイスにおけるラインナップの拡大と、環境・幸福・経済成長が調和するハーモナイズドソサエティの実現を目指す。

3.再生ガラスの個性を活かした会議ブースの試作
イトーキは、回収ガラスの微細な凹凸を残し視線を遮る意匠材として活用したWeb会議ブースを試作した。板厚が限定されサイズも不均一な回収ガラスを効率的に再利用できるため、合わせガラス化で安全面へ配慮すると共に、ガラス面とスチール面を混合させて強度保持できるパネル構造を再設計した。

再生材の新たな価値を提案することで、SDGs*10への意識向上にも寄与する。試作品の中では、天板素材やソファ張地にイトーキが取り組んできたアップサイクル素材も組み合わせている。

なお今後3社は、サステナブルな製品の開発を求める多くの顧客ニーズに応えるため、オフィス家具のほか建材分野など多様な領域のパートナーと連携し、サプライチェーンの構築や事業モデルの検討。更なる品質検証と評価技術の標準化を進める。

業界全体での協創や標準化を呼び掛け、持続可能な脱炭素および資源循環型社会の実現とリサイクルの社会実装を加速させていく。なお、成果の一部は2025年9月2日から4日に北海道大学で開催される2025年度資源・素材関係学協会合同秋季大会で発表予定としている。

 
 




 
 

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