独アウディe-tron(イートロン)、改良&車種ライン拡大


独・アウディAG(本社:ドイツ・バイエルン州インゴルシュタット、暫定取締役会長兼CEO:アブラハム・ショット)は欧州時間の2019年11月、アウディ初の電気自動車「Audi e-tron」に技術改良を施した。

今回の改良では、効率をさらに向上させるため、駆動システムのハードウェア部分の最適化に加えて、ソフトウェアの調整も実施。その結果、Audi e-tronの航続距離は25km延長された。

新たなAudi e-tron 55 quattroは、1回のバッテリーフル充電で最大436kmを走行することが可能となった(WLTPサイクル)。この距離は、従来よりも25km延長されたもの。

この成功は、多岐に亘る改良の結果なのだが、例えば残留ブレーキトルクと呼ばれるブレーキパッドをディスクに短時間当てた時に発生するエネルギー損失を、さらに削減させる新しいホイールブレーキの採用もそのひとつだ。

その他には駆動システムも効率化。一般的な走行条件では、リヤアクスルに搭載されたモーターが駆動力を生むが最適化を図ったことで、フロントの電気モーターは、殆どの状況で完全に駆動システムや電源から切り離されるようになった。つまり電力損失や引きずり損失なしに走行できるようになった。

また高電圧バッテリーの利用可能範囲も拡大。Audi e-tron 55 quattroに搭載されるバッテリー容量95kWhの内、86.5kWhの正味電力を利用できるように改良した。欧州に於ける新型Audi e-tron 55 quattroのベース価格は8万900ユーロと変更はない模様だ。

なおこのAudi e-tron改良に併せ、最大300kWのパワーを発生するAudi e-tron Sportbackを追加し、製品ラインを充実させている。追加されたAudi e-tron Sportbackは、1回の充電で最大446kmの航続距離を実現するSUV4ドアクーペ(複合サイクルにおける電力消費量:26.3~21.6kWh/100 km(WLTP)、23.9~20.6(NEFZ)、CO2排出量0g/km)だ。

装備ではデジタルマトリクスLEDヘッドライトが、ラインナップ中、Audi e-tron Sportbackに初採用された装備となった。その光は小さなピクセルに分解され、極めて正確に制御される。これにより、道幅の狭い道路でも正確に路面の中央を照らし出し、車線内を安全に走行することができるようになった。

このヘッドライトは、光を微細なピクセルに分解することで、非常に明るく道路を照らすことができ、DMD(デジタルマイクロミラーデバイス)と呼ばれるテクノロジーに基づき、多くのビデオプロジェクターでも使用されているものだ。

その中心には、100万個のマイクロミラーを含む小さなチップが設置され、各エッジの長さは、わずか数百分の1mmで。個々のマイクロミラーは、静電気によって毎秒5,000回も動かすことが可能だという。

全長4,901mm、全幅1,935mm、全高1,616mmで、典型的なクーペのシルエットを備えたこのルーフは、後方へ向かって大きく傾斜したDピラーへとシームレスに流れ込む。

サイドシルには立体的な造形が施され、シルに装着されたブラックパネルは、Audi e-tron Sportbackのバッテリー、つまりエネルギーセンターのある場所を示す。

フロンドグリルはライトプラチナグレーで彩られており、ほとんど開口部はない。これはアウディのe-tronモデルを識別するポイントにもなっている。

車体色には、専用の新色、プラズマブルーメタリックを含む合計で13種類のボディカラーを用意。充電フラップには、高電圧システムを示すオレンジ色のロゴが設置される。

Sラインモデルは、Audi e-tron Sportbackのスポーツ仕様で20インチホイールとスポーティセッティングのエアサスペンションを標準装備した。リヤエンドには標準装備されたスポイラーと、車幅全体に広がる印象的なディフューザーが空力性能に貢献する。

搭載モーターは、前後のアクスル上にパワーエレクトロニクスによって三相電流が供給される非同期電気モーターが搭載(電動4輪駆動)される。265kWの最高出力と561Nmの最大トルクを発生する2台の電気モーターにより、0~100km/h加速は6.6秒。最高速度は電子的に200km/hに制限される。

アウディは同車でquattroドライブの歴史に新たなチャプターを書き加える。同システムは、前後アクスル間の理想的な駆動トルクの配分を連続的かつ瞬時に調整。ドライバーが大きなパワーを求めた場合、フロントのモーターが瞬時に作動する。

またアウディは出力レベルが異なる電気モーターを搭載した追加バリエーションも提供する。Audi e-tron Sportback 50 quattroは、230kWの最高出力と540Nmの最大トルクを発生。フル充電した場合の航続距離は、最大347km(WLTPサイクル)となる。

なお車両は、最大150kWの直流(DC)急速充電に対応。これにより、約30分でバッテリー容量の約80%まで充電することが可能だ。Audi e-tron Sportback 50 quattroは最大120kWで充電可能で、55 quattroと同様に、約30分でバッテリー容量の約80%まで充電できる。

最後にAudi e-tron Sportback車格は、2,928mmの長いホイールベースにより、乗員5人とその荷物を積載することのできるスペースを備えた。

また後席の足元はほぼフラットだ。従来のセンタートンネルの場所には、フラットな段差があるだけだ。ボンネット下の60ℓの収納コンパートメント(工具キットと充電ケーブルを収納)を含め、このクルマは合計615ℓの積載容量を提供する。このAudi e-tron Sportbackのヨーロッパに於ける市場導入は、2020年春を予定している。