独・ポルシェAG(本社:ドイツ、シュトゥットガルト 社長:Dr. オリバー・ブルーメ)は、ゼロから新開発されたGTレーシングカーの新型911 RSRを2017年1月にデイトナ24時間レースでデビューさせる。
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新たな911 RSRは、ル・マン24時間レースのGT規定に準拠しながら、体系的な軽量設計に加えてリアアクスル前部に最新式水平対向6気筒エンジンを搭載。
軽量な4リッターエンジンは、ダイレクト・フューエル・インジェクションとリジッドバルブドライブを備え、抜群の効率性を特徴としている。
2017年のレーシングシーンに向けたこの新型911について、ポルシェ・モータースポーツの責任者であるDr.フランク・シュテファン・バリサー氏は、「911特有のデザインを維持しながら、GTのトップモデルとして史上最高の進化を遂げています。
完全に新開発されたニュー911 RSRは、サスペンション、ボディ構造、エアロダイナミクスコンセプト、エンジン、およびトランスミッションがゼロから設計されました。
具体的には、新たなエンジンコンセプトによって特に大型のリアディフューザーの取り付けが可能になり、LMP1レーシングカーの919ハイブリッドから採用したトップマウントリアウイングとの組み合わせで、ダウンフォースとエアロダイナミクスの効率性が大幅に改善されています。
また我々は911 RSRのために、私達は意図的に、特に軽量な最新の自然吸気エンジンに焦点を合わせました。
これが車両の開発においてエンジニアに大きな自由を与えました。新しいLM-GTE規定は、ターボエンジンと自然吸気エンジンのトルク特性が一致するなど、原則として多彩なドライブコンセプトが完全に平等となるレギュレーションです。
新しい自然吸気エンジンは、リストリクターのサイズに応じて約375kW(510PS)の最高出力を発生します。
ステアリングホイールのパドルシフトは、マグネシウムハウジングを備えた6速シーケンシャルトランスミッションを作動して、31cm幅の後輪にトルクを伝えます。
911 GT3 Rと911 GT3 Cupに続き、ポルシェGTレーシングカーも、同様の最新式水平対向6気筒エンジンファミリーによって駆動されます。これにより新世代エンジンへの転換は完了しました」と語る。
かつてポルシェは、1996年に911 GT1によって911のコンセプトを徹底的に押し進めた。大きな成功を収めた911 GT1は、1998年のル・マン24時間レースでポルシェに16回目の総合優勝をもたらした。なお当時は、GT1クラスがル・マンにおけるトップカテゴリーだった。
そして2017年デビューとなるポルシェGTレーシングカーは、初めて最新のアシスタントシステムを備えた。
ニュー911 RSRには、「コリジョン・アボイド・システム」と呼ばれるレーダーサポートによる衝突警告システムが装備されている。
これは夜間にも、高速のLMPプロトタイプを早期に検知して接触を回避するもの。新しい安全ケージコンセプトと強固に取り付けられた新しいレーシングシートがドライバーの安全も強化する。シートはシャシーに固定され、ペダルを動かして調節し、ドライバーに適合させることができる仕組みだ。
なおニュー911 RSRではメンテナンス性も大幅に改善された。インテリジェントなクリックリリースファスナーによって、カーボンファイバーボディのエレメント全体を短時間で完全に交換することができる。さらに、サスペンションセットアップの変更をより簡単迅速に行うことも可能だ。
一方、911 RSRの外観は、ボディ全体に渡って新しい方向性を示している。このGTレーシングカーは、ポルシェ モータースポーツの明確でダイナミックなデザイン言語をさらに発展させた新しいファクトリーデザインを備えている。
ファクトリーは、2017年シーズンに140時間以上のレースに匹敵する19のレースでニュー911 RSRを走らせる予定と云う。
ポルシェは、2台のファクトリーエントリーによってル・マン24時間レースを含むFIA世界耐久選手権(WEC)と米国のIMSAウェザーテック・スポーツカー選手権に参戦。新しいレーシングカーは、1月28日-29日にデイトナのIMSA開幕戦において最も過酷な条件でデビューする。
これらの参戦にあたってGTモータースポーツ総合プロジェクトリーダーのマルコ・ウジュハシ氏は、「レースに備えて十分な準備をしています。今年3月のヴァイザッハでの初公開以来、欧州と北米のサーキットで35,000kmにおよぶテスト走行を行ってきました。この距離は、他のどのポルシェGTレーシングカーの開発過程をも上回ります」と結んでいる。
テクニカルデータ:ポルシェ911 RSR(MY2017)
コンセプト
レース用シングルシーター(カテゴリー:LM-GTE)
重量/寸法
重量:約1,243 kg(各レギュレーションのベース重量に合わせて調節)
全長 :4,557 mm(スプリッター、リアウイング、ディフューザーを含めず)
全幅 :2,042 mm(フロントアクスル) / 2,048 mm(リアアクスル)
ホイールベース 2,516 mm
エンジン
水冷式6気筒水平対向エンジン(ミッドシップレイアウト)、排気量:4,000 cc、ストローク:81.5 mm、ボア:102 mm、最高出力:約375 kw(510 PS)(リストリクターの設定によって調節)、4バルブヘッド、ダイレクト・フューエル・インジェクション(DFI)、ドライサンプ潤滑システム、シングルマスフライホイール、リストリクターによる出力制限、電子制御スロットル
トランスミッション
コンスタントメッシュ式6速シーケンシャルトランスミッション、ベベルギアを採用した前後方向のツインシャフトレイアウト、電子制御シフトアクチュエーター、ステアリングホイールに設けられたシフトパドル、マグネシウム製トランスミッションケース、ビスカスカップリングユニットを採用したマルチディスク式リアディファレンシャルロック、トリプルディスク方式のカーボン製レーシングクラッチ
ボディ
アルミニウムとスチールの組み合わせによって重量を最適化したシャシー、ルーフに設けられたリムーバブル方式のレスキューハッチ、ルーフに組み込まれたリフト用ブッシュ、FT3規定の燃料タンク(車両前方に配置)、溶接ロールケージ、FIA 8862-2009に準拠したシート、シャシーへのリジッドマウント、HANS対応6点式シートベルト、前後調節式ペダル、クイックチェンジが可能なCFRP製ボディ、“スワンネック”マウントを採用したリアウイング、4ポストエアジャッキシステム(安全プレッシャーバルブ付)、電子制御消火システム、ヒーター付フロンドウインドウ。
サスペンション
フロントアクスル:ダブルウィッシュボーンサスペンション、4-wayバイブレーション・ダンパー、ツインコイルスプリング(メインスプリングおよび補助スプリング)、ブレードポジションによって調節を行うスタビライザー、電動油圧式パワーステアリング
リアアクスル:サブフレームとダブルウィッシュボーンを採用したインテグレーテッドリアサスペンション、4-wayバイブレーション・ダンパー、ツインコイルスプリング(メインスプリングおよび補助スプリング)、ブレードポジションによって調節を行うスタビライザー、電動油圧式パワーステアリング、トライポッドドライブシャフト。
ブレーキ
バランスバーによって調節を行うフロントおよびリアの独立2系統ブレーキシステム。
フロントアクスル:クイックカップリングを採用したワンピース構造の6ピストン式アルミニウム製レーシングキャリパー、スチール製ベンチレーテッドディスク(直径:390 mm)、レース用ブレーキパッド、最適化されたブレーキ冷却ダクト。
リアアクスル:クイックカップリングを採用したワンピース構造の4ピストン式アルミニウム製レーシングキャリパー、スチール製ベンチレーテッドディスク(直径:355 mm)、レース用ブレーキパッド、最適化されたブレーキ冷却ダクト。
ホイール/タイヤ
フロントアクスル:ワンピース構造の鍛造軽合金ホイール(12.5Jx18、オフセット:25、センターロック式)、ミシュランスリックタイヤ (30/68-18)
リアアクスル:ワンピース構造の鍛造軽合金ホイール(13Jx18、オフセット:37、センターロック式)、ミシュランスリックタイヤ (31/71-18)。
エレクトリカルシステム
Cosworth(コスワース)製セントラルロガーユニット、CFRP製マルチファンクションステアリングホイール(ディスプレイ一体型)、シフトパドルおよびクイックリリース、衝突回避システム、充電制御型オルタネータ―およびLiFePo4バッテリー、LEDヘッドライト、LEDテールライトおよびレインライト、イルミネーション機能付カーナンバーおよびリーダーライトシステム、コックピット内のブラックライト、電動調節式ウイングミラー(メモリー機能付)、タイヤプレッシャー・モニタリングシステム(TPMS)、ドリンクシステム、エアコンディショニングシステム、センターコンソールのメンブレンスイッチパネル(蛍光ラベル付)。