FIAフォーミュラ・ワン世界選手権、第10戦イギリスアGP(開催地:イギリス・トウスター、英シルバーストーン・サーキット<コース全長:5.891km・決勝52周>、開催期間:7月8~10日)の決勝レースが、現地時間7月10日(日曜日)の13時から実施された。
優勝は、予選PPスタートからの優位点を生かし切ったルイス・ハミルトン(メルセデス)。2位にチェッカーフラッグを潜ったのは、予選2番手のニコ・ロズベルグ(メルセデス)ではあったが、レース中のチームとの無線内容に違反があったとして10秒ペナルティを科せられ3位に脱落した。
上記を踏まえ、ニコ・ロズベルグの直後に続いたマックス・フェルスタッペン(レッドブル)が繰り上がり2位。
期待のマクラーレン・ホンダは、ジェンソン・バトンが12位、フェルナンド・アロンソが13位に終わっている。
決勝レーススタート時のトラックコンディションは、直前に豪雨となったため、気温16度に下がって湿度も90%。路面温度21度というウエットコンディションとなり、この影響でセーフティカーの先導によるレース開始となった。
このためスタート時の各車の駆け引き及び、順位変動は見られない単調なスタートとなった。
なお土曜のフリープラクティスでクラッシュして、予選不参加となったマーカス・エリクソン(ザウバー)は、出走前の身体検査を通過。ピットレーンからのスタートとなっている。
レースはセーフティカーが離れる6周目以降、各車のバトルが開始された。ウエットコンディションから路面が次第に乾き始めた頃、早々にキミ・ライコネン(フェラーリ)がインターミディエイトタイヤに交換。
以降、各車タイヤ交換のタイミングを探り始める。このタイヤ交換のタイミング選択はなかなか難しく、パスカル・ウェーレイン(マノー)は、タイヤと路面との間に水膜が入り込むハイドロプレーニング現象に陥って今レース初のリタイヤとなった。
その後、上位勢がタイヤ交換を行い始めた8周目のタイミングを診て、首位を走るメルセデス陣営がタイヤ交換を実施。ポジションを維持したまま単調なレースが続く中、3番手を走るマックス・フェルスタッペン(レッドブル)の3台のトップ集団が淡々と周回を消化していく。
トラックコンディションは総じてドライ路面に変化していくが、水たまりが解消するまでに至らず、各車はドライタイヤへの換装タイミングを計りかねていた。
そうしたなかで、セバスチャン・ベッテル(フェラーリ)が16周目にミディアムコンパウンドに履き替える。翌周にはキミ・ライコネン(フェラーリ)が続き、各車ドライタイヤに履き替えが進んだ。
そして全車がドライタイヤへの履き替えが完了した19周目。乾いたレーシングラインが1本しかない中で、リオ・ハリアント(マノー)がライン取りに失敗して同レースで2台目のリタイヤを喫する。
上位集団の3台は、この間、マックス・フェルスタッペン(レッドブル)と、ニコ・ロズベルグ(フェラーリ)との間で一時順位変動もあったが、39周目に再度、ニコ・ロズベルグが2番手に再浮上する。
そして迎えたレース終盤。この段階になって、2位を走るニコ・ロズベルグにギアボックストラブルが発生。この際、チームとの無線交信により、マシンセッティングのリセットを指示され、ステアリングホイール上のスイッチを操作して事無きを得る。
ただ、この際にチームから、上記に加えトランスミッションの7段目を使わない事を指示してしまい、これが「車両のドライブ方法の指示を受けてはならない」とするレースレギュレーションに違反すると取られ、レース直後の審議対象となってしまう。
結果、レースはメルセデス陣営のルイス・ハミルトンがホームコースで優勝。僚友ニコ・ロズベルグはこれに続く2位でチェッカー。1.339秒差で3位マックス・フェルスタッペン(レッドブル)となったものの、ニコ・ロズベルグは先の違反行為により10秒のタイムペナルティを科せられて、3位に脱落した。
これによりドライバーズランキングのポジション差は、2位ルイス・ハミルトンとわずか1ポイント差となっている。
以下4位ダニエル・リカルド(レッドブル)、5位キミ・ライコネン(フェラーリ)、6位セルジオ・ペレス(フォース・インディア)、7位ニコ・ヒュルケンベルグ(フォース・インディア)、8位カルロス・サインツ(トロ・ロッソ)、9位セバスチャン・ベッテル(フェラーリ)、10位ダニール・クビアト(トロ・ロッソ)と続いた。
マクラーレン・ホンダ陣営は、セーフティカー先導によるレース開始で順位を上げる大きなタイミングを失い、さらに各車ドライタイヤに換装した後も入賞圏内に届くことができず、ジェンソン・バトン12位。フェルナンド・アロンソ13位に終わっている。
優勝・ルイス・ハミルトン
「母国優勝を果たして今季最高の週末になった。何よりも良い仕事をしてくれたチーム全員に感謝したい。
実際、ここシルバーストーンで僕らのマシンパフォーマンスは他のチームから頭ひとつ以上抜きんでていた。
また雨のレースとなった今回、僕らを盛り上げてくれたレースファンにも感謝したい。
フォーミュラワンを愛する英国ファンのバックアップは特別なもので、今回のレースを本当に心から愉しめたと感じている。今日ここに来てくれた全員に感謝している」
繰り上がり2位・マックス・フェルスタッペン
「良いレースペースを維持できると考えていたが、実際にその通りになった。ただ序盤は雨で視界が良くなく苦労した。
一旦、ニコ(ロズベルグ)をオーバーテイクして、ルイス(ハミルトン)に接近したが、スリックタイヤ交換後に引き離れてしまった。もしかしたらタイヤ交換タイミングを1ラップ引っ張り過ぎたのかもしれない。
ただレース内容に不満はないし、マシンの状態も良かった。後半はニコ(ロズベルグ)とのバトルの愉しめた。ただ路面が乾くとメルセデスは直線が速すぎた。ただ僕らはそのギャップを縮めつつあると思う。
また英国のファンの人たちは最高だった。ルイスだけじゃなく、僕らにも熱心に応援してくれたことが、嬉しかった」
ペナルティで脱落して3位・ニコ・ロズベルグ
「今回は、週末を通してルイスの方が良い仕事をしていたから、彼は優勝に値するから、心からお祝いを言いたい。
一方、こちらはギアボックストラブルで、終盤リタイアの可能性もあったからフィニッシュできた事に満足したい。
その他、全体的にはマシンセッティングも決まっていて、マックス(フェルスタッペン)とのバトルも愉しめた。
またシルバーストーンの雰囲気は、他では味わえない盛り上がりがある。そんな素晴らしいイベントにしてくれたF1ファンにも感謝している」
以下はマクラーレン・ホンダ陣営の決勝終了後のコメントとなる。
フェルナンド・アロンソ
MP4-31-02
スタート 9番手
レース結果 13位
ファステストラップ 1分35.669秒 43周(トップとの差 +0.121秒、2番手)
ピットストップ 3回:5周目(ピットストップ時間 5.74秒)、17周目(ピットストップ時間 2.56秒)および39周目(ピットストップ時間 2.83秒)
[フルウエット→インターミディエイト→プライム→プライム]
「今日、我々のチームは12位および13位という結果に終わった。スタート時の難しいコンディションを経て、我々チームは戦略面で自分たちができることを行った。
しかし残念ながら、ピットストップをしている間にポジションを落としてしまった。
レース中には、ポイントを獲得できるのではないかと感じた場面があった。それはフェリペ(マッサ)の後ろで懸命にプッシュしていた時で、オーバーテイクするには、なかなか困難な状況ではあったので、結果、1コーナーでコースオフしてしまった。
総じて今日は厳しいレースだったが、我々は今週末に一歩前進することができた。競争力が上がり、ウイリアムズ、フォース・インディア、トロ・ロッソと競い合うことができた。これは良い兆候だと思う」
ジェンソン・バトン
MP4-31-03
スタート 17番手
レース結果 12位
ファステストラップ 1分37.907秒 36周(ピットストップ時間 +2.359秒、16番手)
ピットストップ
2回: 6周目(ピットストップ時間 2.48秒)および17周目(ピットストップ時間 2.85秒)
[フルウエット→インターミディエイト→プライム]
「セーフティカーの先導によるレーススタートは正しい決断だったと思う。ただセーフティカーは2周前に下がるべきだったとも感じている。
その後、セーフティカーがピットインした際に、他車がインターミディエイトタイヤに履き替えるためにピットストップをしたので、自身は逆にコース上に留まることにした。その際に他チームのマシンを2台追い越すことができた。
結果、今日は17番手スタートだったことで、思うようなレース運びはできずに終わった。
決勝で入賞するには、予選でトップ10以内に入り、そのポジションでミスをせずに走り続ける必要がある。
我々のマシンには、レースでポジションを大幅に上げるほどの速さが足りず、前方の他チームのマシンとの差を縮めることができなかった」
エリック・ブーリエ|McLaren-Honda Racing Director
「当然のことながら、母国グランプリで12位および13位に終わったことは、満足していません。
ただ、この非常に難しいコンディションの中、それを見事に対処しながら走行を続けてくれたジェンソンとフェルナンドに対して、『よくやった』と言わせてください。
特にレース序盤は、アクアプレーニング現象(ハイドロプレーニング)が起きる危険性が高く、困難な状況でした。
2人ともあきらめることなく、最後までプッシュし続けました。実際、もしフェルナンドがフェリペ・マッサ選手と競い合っていたときにコースオフしていなければ、彼はポイントを獲得できていたかもしれません。
また、ホンダに対しても、敬意を表したいと思います。今回のパワーユニットは週末を通して正確に機能しました。
我々はこれから(次戦が開催される)ハンガロリンクに向かいます。曲がりくねったコースで知られるそのサーキットが、今週末のシルバーストーンよりも我々のマシンの性能に適していることを願っています。
最後になりましたが、世界一のレースファンと呼ばれるシルバーストーンの観客の皆さんに対して、マクラーレン・ホンダを代表して感謝申し上げます。
観客の皆さんはレース直前に降った豪雨をものともせず、優勝した地元のハミルトン選手に対して盛大な拍手を送っていました。
皆さんが拍手を送っていた優勝チームがマクラーレン・ホンダではなかったことを申し訳なく思います。ただ、我々の時代は必ず来ます」
長谷川 祐介|本田技術研究所 主席研究員 F1プロジェクト総責任者
「ウエットスタートからドライコンディションに変化するという難しい環境の中で、チームとドライバーは堅実なレース運びをしました。
セーフティカー後のピットストップなどでも、ガレージは全くあわてることなく、すばらしい仕事を行っていました。
毎戦、着実な進化を遂げているパフォーマンスには今週末も勇気付けられました。信頼性にも大きな問題はなく、コース上で数々のすばらしいバトルを繰り広げられたと思います。
レース中盤では、アロンソがポイント獲得に向けてチャレンジングな走行をしましたが、後一歩実力が及ばずポイント獲得を逃しました。レースの展開によっては入賞の可能性があっただけに、残念な結果になりました」
イギリスGP2016決勝結果
順位_ドライバー/チーム/タイム&差
1_ルイス・ハミルトン/メルセデス
/1:34’55.831
2_マックス・フェルスタッペン/レッドブル
/1:35’04.081_+8.250
3_ニコ・ロズベルグ/メルセデス
/1:35’12.742(10秒ペナルティ加算)_+16.911
4_ダニエル・リカルド/レッドブル
/1:35’22.042_+26.211
5_キミ・ライコネン/フェラーリ
/1:36’05.574_+1’09.743
6_セルジオ・ペレス/フォース・インディア
/1:36’12.772_+1’16.941
7_ニコ・ヒュルケンベルグ/フォース・インディア
/1:36’13.543_+1’17.712
8_カルロス・サインツ/トロ・ロッソ
/1:36’21.689_+1’25.858
9_セバスチャン・ベッテル/フェラーリ
/1:36’21.689_+1’25.858
10_ダニール・クビアト/トロ・ロッソ
/1:36’28.431_+1’32.600
/(以下+1周遅れ)
11_フェリペ・マッサ/ウィリアムズ
12_ジェンソン・バトン/マクラーレン
13_フェルナンド・アロンソ/マクラーレン
14_バルテリ・ボッタス/ウィリアムズ
15_フェリペ・ナッセ/ザウバー
16_エステバン・グティエレス/ハース
/(以下リタイア)
—_ケビン・マグヌッセン/ルノー
—_ジョリオン・パーマー/ルノー
—_リオ・ハリアント /マノー
—_ロマン・グロージャン/ハース
—_マーカス・エリクソン/ザウバー
—_パスカル・ウェーレイン/マノー