製鉄業の低炭素化に貢献する高炉自動操業技術の開発で
JFEスチールは4月15日、「製鉄業の低炭素化に貢献する高炉自動操業技術の開発」の成果が認められ、令和7年度・科学技術分野の文部科学大臣表彰科学技術賞(開発部門)を受賞した。
ちなみに科学技術分野の文部科学大臣表彰は、科学技術に関する研究開発、理解増進等に於いて顕著な成果を収めた者について、その功績を讃えることにより、科学技術に携わる者の意欲の向上を図り、我が国の科学技術水準の向上に寄与することを目的としている。
受賞にあたり同日、文部科学省(東京都千代田区)で表彰式が行われた。受賞案件を含む主な概要は以下の通り。
受賞案件:「製鉄業の低炭素化に貢献する高炉自動操業技術の開発」
受賞者:
– 飯塚 幸理:スチール研究所 主席研究員
– 橋本 佳也:スチール研究所 サイバーフィジカルシステム研究開発部 グループリーダー
– 島本 拓幸:製銑技術部 主査
– 益田 稜介:スチール研究所 サイバーフィジカルシステム研究開発部 主任研究員
– 安原 宏:スチール研究所 サイバーフィジカルシステム研究開発部 主任研究員
案件概要:
具体的には、サイバーフィジカルシステム(CPS)を用いた高炉操業の自動化に関する技術。一般的に製鉄業では、CO2排出量低減および労働生産性向上のために、高効率かつ安定操業が非常に重要となる。
一方で、高炉の炉内の状態を直接見たり、測定することができないことや、高炉に投入される原料の性質のばらつき等の影響で操業条件が大きく変化するといった難点があり、熟練オペレーターの知識・経験に依存した手動操業が行われてきた。
これに対し同社・同技術は、実際のプロセスから収集したセンサデータを用いて独自のモデルに基づき仮想プロセスを構築し、リアルタイムで装置の状態把握や将来予測を行うCPSを活用して、高炉操業に於いて重要な溶銑温度や通気性の制御に関する最適な操業アクションを自動実行するシステムを構築した。
当該システムでは、炉内反応や伝熱現象を表現した物理モデルにより、最大で将来12時間先の溶銑温度がリアルタイムで予測可能となった。
また、炉内圧力測定データに統計的手法を適用した異常予知技術による通気性制御手法も確立した。システムでは実際の高炉操業の現場で実用化・運用され、労働生産性の向上やCO2排出量の削減に寄与している。
なおこの技術は、令和2年度「日本鉄鋼協会 澤村論文賞」、令和2年度「計測自動制御学会 技術賞」、令和2年度「化学工学会 技術賞」、令和5年度「大河内記念技術賞」も受賞している。