GLM、世界初の「樹脂製フロントウインドウ」搭載車の市販へ


自動車の窓は「ガラス」から3割軽い「樹脂」へ。帝人の技術利用で窓枠(Aピラー)が不要に

京都大学発の電気自動車(EV)ベンチャーのGLM株式会社(本社:京都市、代表取締役社長:小間裕康、以下GLM)は、同社開発の量産EVの「トミーカイラZZ」に、帝人株式会社(本社:大阪市北区、代表取締役社長・執行役員:鈴木 純)が開発した樹脂製の前部窓(フロントウインドウ)搭載車を遂に発表した。

樹脂製フロントウインドウ搭載の「トミーカイラZZ」

この樹脂製の前部窓(フロントウインドウ)搭載試作車は、6月28日から名古屋市で開催されている「人とくるまのテクノロジー展名古屋2017」で初披露されたもの。車両展示は6月30日(金)まで実施される。

車両を発表したGLMは目下、拠点の京都に於いて、この樹脂製フロントウインドウ採用車の世界初市販を目指し、開発の最終段階に入っている。

具体的には政府の自動車保安基準改正で、2017年7月1日(土)から樹脂製窓のフロントウインドーへの搭載が認められるのに合わせて搭載に伴う試験を実施。

後方から見た樹脂製フロントウインドウ搭載の「トミーカイラZZ」、ステアリングを握ると前面の視界が開放的で、前方視界は良好。GLMではサイドミラーで充分な後方視界が確保できるため、ルームミラーは設置不要としている。

近く、公道を走行するための国内認証を取得する予定となっており、開発が順調に進めば今秋を目途に、樹脂製フロントウインドウを搭載した特別仕様車となる「トミーカイラZZ」がリリースされる。

この樹脂製フロントウインドーは、従来の窓より3割以上軽いのが大きな特長。標準装備であるAピラーやガラス窓、ルームミラーを合わせた重量(18.4kg)に比べて、樹脂ウインドーを搭載した車両は6.6kg軽くなっている。

加えて樹脂製の窓は、ガラスに比べ高い強度があるため、窓周辺のフレーム枠(Aピラー)を必要としない。窓枠がないため運転中の視界を遮る要素がなくなり、快適に走行できるメリットが生まれる。

樹脂製ウインドウ自体は、帝人の先端技術を使い「トミーカイラZZ」の形状に合わせて製作された。

GLMでは、「環境規制が世界的に強まるなか、航続距離を高めるために車の軽量化は不可欠です。

当社は、日本のテクノロジーショーケースとなるような車づくりを目指しており、今後も最先端の技術を自動車に取り入れながら次世代の車づくりを行う考えです」と述べている。

窓素材そのものは、ポリカーボネート樹脂(PC樹脂)であり、ガラスに比べ、単体で半分ほどの重さでおり、かねてより車体軽量化に寄与する素材として期待されてきた。

但し旧来のガラス素材に比べて耐摩耗性が低く、窓の開閉やワイパー等により、表面が傷つきやすいことが大きな課題であった。このため、それまでのハードコート技術(ウエット法)だけでは、保安基準に対応する耐久性を満たすことができなかったのである。

写真は、既存のガラス製フロントウインドウの「トミーカイラZZ」

このような経緯もあってこれまで樹脂製窓の自動車への使用は、摩耗の少ないサンルーフや後部の固定窓などに限られており、フロントウインドウへの搭載は一切認められてこなかった。

しかし2014年に改正され2017年7月から導入される新保安基準で、法規的には一転してフロントウインドーへの搭載が認められたのだが、その分、これまで以上に厳しい耐摩耗性が求められるようになっている。

その強度確保の必須基準は、ゴムと窓をこすりあわせて摩耗を調べる試験で、その摩耗率を2%未満にする必要がある。なおこれは耐摩耗性が5~7%であった従来の樹脂の加工法(ウエット法)では満たせなかった基準だ。

今回、トミーカイラZZに搭載した帝人の樹脂製窓は、透明性が高いPC樹脂に、さらに保護層を作る技術を加えて、強化ガラス(耐摩耗性0.5~1.0%)並みの0.5~1.5%の耐摩耗性を実現した。

ちなみにGLMは、車づくりの全てのノウハウを垂直分業型で抱え込み、部品の形状理由や詳細な仕様理由を明らかにしない既存の自動車産業とは異なる水平分業体制を取るベンチャー企業である。

これによりGML自身は、開発車両のコンセプトや性能・仕様・デザイン設計等の企画開発と基礎技術の熟成。そしてや全面の技術開発に重点を置き、部品そのものは、自動車部品サプライヤーと共同開発を行っている。現在、参加する協力会社は国内外170社以上に達している。