独最高裁、不正ソフト搭載のVW車購入で個人賠償を命じる


ドイツの最高裁にあたるカールスルーエ(バーデン・ヴュルテンベルク州)所在のドイツ連邦裁判所(BGH)は、現地時間の5月25日、フォルクスワーゲン(VW)のミニバン「シャラン」に乗るラインラント・プファルツ州のオーナーが原告となって起こしたVWへの賠償金支払いの訴えに対して、VWへ車両購入後の走行距離を勘案した〝約8割にあたる額面の支払い〟を命じる判決を命じた。(坂上 賢治)

同連邦裁判所は「被告たるVWは原告に対して意図的な損害を与えた」との判断を示し、違法ソフトウエアが搭載された2014年型シャランを2017年に中古車で(3万1500ユーロ/370万円余り)購入した原告に対して、対象車両を被告のVWに返却した上で約3年半に亘る使用上での車両消耗(5万Km走行分)を差し引いた部分的な補償金(2万5600ユーロ/300万円余り)を受け取る権利があるとの判断を下した。これに原告は歓迎の意を表した。

ちなみに同訴訟は、5年前に発覚したVWの排ガス不正発覚を受け、購入した車両返品と購入費全額の返金を求めて同社を提訴したもの。

一審では原告が敗訴していたのだが、控訴審で裁判所が「VWが違法ソフトウエアの搭載車の販売を許したことは、損害賠償請求の根拠となり得る」との見解を示していたことから、車両返却と購入代金の全額返還を要求していた原告側だけでなく、被告側も「不正発覚後、違法ソフトウエアの改修を実施し、政府も該当車両の使用を禁じたこともない。従って車両購入者は実質的な経済的損失を被っていない」として双方共に連邦裁に上訴していた。

なお同様の訴訟がドイツ国内だけで約6万件が提起されていることを踏まえると、同判例はVWにとっては将来の損失要因になると見られる。

但し同様の事案で、既に同国の消費者保護団体(VZBV)の交渉に既に応じて、車両購入額の約15%(累計8億3000ユーロ)の支払いで和解に達している24万人のVWユーザーは和解交渉(個々条件により1300〜6000ユーロ)を経て〝提訴の権利を放棄している〟ため追加提訴などの対象とはならない。

加えて同国内に於いて、不正ソフトウエアの搭載車両で訴訟に至った車両購入ユーザーは全体(累計240万台)の25%に過ぎない。残り75%のユーザーについては原則、今日の段階で訴訟に立ち上がらなかったことから一連の訴訟問題は時間切れを迎えて一応の決着を見ることになるから、結果、VWは少なくともドイツ国内に限ってはより巨額の賠償金の支払いを逃れられる。

今後のVWにとっての訴訟に係る課題は、佳境を迎える米国内の賠償交渉の成り行きにある。というのは米国の場合は、同国内の裁判の結果が、訴訟を起こしている原告以外の同じ車両を持つの多くの一般ユーザーにまで波及するためだ。