独・ボッシュの日本法人、AIとセンサーを組み合わせたスマート農業ソリューションを独自開発


独・ロバートボッシュの日本法人、ボッシュ株式会社(本社:東京都渋谷区、代表取締役社長:ウド・ヴォルツ、以下ボッシュ)はハードウェアとしてのセンサーと、ソフトウエアとしてのAI(人工知能)を組み合わせたスマート農業ソリューション「Plantect™(プランテクト)」を開発し、2017年内に同サービスの提供を開始する。

これは当初、トマトのハウス栽培事業者向けに日本国内で発案され、ボッシュ社内に於いて独自プロジェクトとして立ち上げられたもので、ドイツ本社に先駆け、日本法人が自ら新規プロジェクトを始動させ、このほど実用化に漕ぎ着けた。

しかも同ソリューションは、農産物の病害予測のみならず、収穫量の向上にも貢献するとしており、センサーとAIを活用して病害を予測。さらに適切な栽培管理が行えるものとなっている。その効果は、例えば病害予測精度については実に92%に達すると云う。

ソリューションの発表を前に概略の説明を行ったボッシュ株式会社・代表取締役社長のウド・ヴォルツ氏は「Plantectは、IoTソリューションに必要な『センサー』・『ソフトウェア』・『サービス』を一貫して手掛けるボッシュならではの強みを活かした製品です。

また今後は日本のみならず、世界のハウス栽培の収穫量向上に大きな貢献ができる期待のソリューションであると考えています」と述べた。

その後、ヴォルツ氏に続いて同発表会で登壇したのは、今製品のプロジェクトリーダーである鈴木 涼祐氏であった。同氏は「総じて農業という産業は、収穫量や農作物の価格変動等に起因する不安定な収入変動が、最も深刻な課題のひとつでした。

このような収穫量に、直接的な影響を及ぼす主要因として、自然災害などの外部環境に伴う要因の他に、作物の病害発生が挙げられます。

またこのような病害を予防するためには、感染の前後で、予防薬を散布することが最も効果的だと考えられています。

しかし実際には、病害が発生する段階や過程が目に見える訳ではないため、予防薬散布の最適なタイミングを、的確に把握することは実に困難なことでした。

しかし農薬の散布量とタイミングを適切に管理することは、病害発生の兆候を正確に把握することにつながるため大変重要です。特にハウス栽培では、温度湿度等の基本的なパラメータのほか、日射量や葉濡れ、栽培環境や外気象も病害発生に影響を及ぼします。

こうした数々の課題を前に、当社のクラウドソリューションであるPlantectは、これら作物の育成に影響する複数の懸念要因を、AIを駆使することで解析へと繋げ、結果、精度の高い病害予測を実現しました。

そんなPlantectは、AIを使ったクラウドベースのデータ解析により、左記の通り実に92%の病害予測を可能にしますが、その仕組みは、ハウス内環境を逐次計測するハードウェアと、計測された数値をもとに、病害発生を予測するソフトウェア(人工知能)で構成されています。

まずハードウェアには、温度・湿度・日射量・二酸化炭素量を計測するセンサーが備えられており、これをハウス内の自由な位置に設置すると、ハードウエアに組み込まれているモニタリング機能が稼働してリアルタイムデータが計測され、その数値が都度クラウドに送信されます。

このクラウドに送信されたデータを基に、ボッシュ側では独自のアルゴリズムを稼働させ、葉濡れなども含めて病害発生に関わる全ての要素が解析され、さらに気象予報とも連動し、植物病の感染リスクの通知をアプリ上に表示します。

ユーザーは、その通知をスマートフォンやPCなどの手持ちのデバイスから、Webベースのアプリを通じて収集。

集めたクラウド内のデータに直にアクセスすることができるため、いつでもどこにいてもリアルタイムでハウス内環境を確認したり、過去のデータを参照することが可能です」とソリューションの仕組みについて詳しく説明した。

そんなボッシュは、そもそも2017年に、これまでAIの研究に取り組んできた組織を集約させた研究センターを新設している。同センターは、AIの専門知識の強化を目的としており、今後2021年までに3億ユーロを投資して研究開発を拡大させる予定だと云う。

Plantectの開発では、上記の様な開発過程を経て100棟以上のハウスのデータと、組織の力を集結したAI技術を用いて病害予測アルゴリズムを開発。

このアルゴリズムを背景に独自の人工知能が、個々の環境毎に異なるハウス毎のモニタリングデータと参照を繰り返して病害の発生源を予測する。

実は、これまでも他社に於いて、植物病の大まかな感染流行を予測するソリューションもあったのだが、Plantectは、これまでの広域対象の注意喚起とは全く異なり、個々ハウスを持つ各ユーザー向けに、カスタマイズされた病害予測を可能する。

しかも導入にあたって大規模な投資と施工を必要としない手軽さであるため、小・中規模農家も導入し易いのが大きなアドバンテージになるだろう。

そもそもモニタリングを行うハードウェアも、低消費電力のバッテリー駆動であるため、電源コンセントや通信ケーブルなどの配線を含めた初期設置のための施工を考慮する必要がない。

しかもモニター用の複数台のハードは、ハウス内のどこにでもワイヤレスで簡単に設置することが可能であり、消費バッテリー量に於いても、市販のアルカリ電池で約1年間の稼動が可能だと云う。

加えてクラウドのAI環境との通信に使われる通信ネットワークも、省電力などの特性を考慮し、長距離無線通信(LoRa)を採用。これらのパッケージにより、利用ユーザーにとっては導入し易い料金体系も整えた。

この部分について先の鈴木 涼祐氏は、「導入にあたり初期費用は無料で、月額の使用料金のみでサービスをご利用いただくことができます。

基本機能であるモニタリング機能と病害予測機能、それぞれにサービスの月額使用料を設定しています。

モニタリング結果を表示するインターフェースは、統一された判り易いデザインを実装。ユーザーがモニタリングしたいデータを大きく表示したり、さらなる詳細情報を取得したい場合は、指でタップをするだけで詳細確認も可能です。

コンピューターやスマートフォンに不慣れな方でも、直観的な操作でハウス内の環境を簡単に確認できる点もPlantectの大きなアドバンテージのひとつになるでしょう」と語っている。

なおPlantectの病害予測機能は、現在のハウス栽培用トマトだけでなく、今後はイチゴ、きゅうりまたは花卉など、他の農作物への展開を計画中だと云う。

加えて日本以外のハウス栽培市場でも、高い可能性を持つ地域や国を特定し積極的に販売促進を展開していくとしている。

製品発表の最後にヴォルツ氏は、Plantectについて、「ボッシュは、センサーの世界的なサプライヤーであり、このようなハードウェアの強みに加え、近年IoTソリューションのためのミドルウェアやクラウドの運用を始め、IoTへの投資を大幅に加速させてきました。

Plantectの製品化は、そんなIoTへの投資が具体的な事業領域へと昇華された例のひとつであり、それが今回、日本法人のスタートアップ組織から生まれたことを大変誇りに思います」と述べていた。

製品概要
製品名称 :Plantect ™(プランテクト)
受注開始時期 :2017年6月8日
出荷開始時期 :2017年8月より順次
初期費用 :無料
月間使用料金
モニタリング機能:4,980円/月
病害予測機能:3,350円/月
製品サイトURL:http://www.bosch.co.jp/plantect 
申込み方法 :下記問い合わせ電話番号により申込み等が可能。
電話番号:048-470-1746