三菱ふそう、バイワイヤ・SDV技術の共有でREE社と基本合意

次世代商用車の安全性、モジュール性・設計自由度、操作性の向上および低コスト化を目指す

三菱ふそうトラック・バス(MFTBC/本社:神奈川県川崎市、代表取締役社長・CEO:カール・デッペン)は11月18日、REE Automotive Ltd. (REEオートモーティブ、本社:イスラエル・キブツ グリル-ヤム、社長:ダニエル・バレル)と、MFTBC の商用車に於ける「X-by-wire」(バイワイヤ)およびSDV(ソフトウェア定義車両、software defined vehicles)技術の共同開発および実証に関する基本合意書を締結した。

*写真は、MFTBC の「eCanter」(左)と REE の「P7-C」

バイワイヤ技術は、従来の機械的な接続を電子制御に置き換え、ステアリングやブレーキ、アクセルなど主要機能の操作をセンサーと電気信号によって行う仕組み。

車両の安全性や操作性の向上に加え、車両の軽量化や燃費効率の向上に寄与する他、先進運転支援・自動運転技術の開発への貢献が見込まれる。

SDV は、主にソフトウェアを通じて車両の機能や性能を制御・更新できる次世代の車両アーキテクチャ。

ハードウェアに依存せず、OTA(*Over-the-air の略、無線通信によって車両のソフトウェアを遠隔で更新・修正・改善する技術)による機能追加や改善によって、車両の柔軟性・拡張性の向上や車両寿命の延長が見込まれる。

また総保有コスト(TCO、total cost ofownership)を低減し、自社の車両を保有する顧客企業への長期的価値の提供に繫がる。そこでMFTBC とREEは、バイワイヤ・SDV 技術の掛け合わせの探索・検証に着手した。

この協業を通じて、エンドユーザーのコストを削減すると同時に、車両の最適なモジュール式構造と高度な設計自由度、優れた操作性やより高度な安全機能を実現する、次世代商用車の新たな可能性を探索していく。

そんな同協業の一環として、MFTBC と REE は共同で実証車両1台を1年以内に製作する予定。

具体的な実証車両は、MFTBCの電気小型トラック「eCanter」現行モデルをベースに、REEのEV向けシャシ「P7-C」の技術を盛り込み製作する。同時にMFTBCは、更に将来の技術的協業に向けた潜在的なパートナー候補として、REEの技術の評価を継続する。

なお、もとよりMFTBCは、2017年の国内初の量産型電気小型トラック「eCanter」の発売や、2019年の大型トラック「スーパーグレート」で国内商用車初の SAE自動運転レベル2の市場投入など、商用車の先進技術開発に先駆的に取り組んできた。

今協業は、それらの知見をもとに、更に将来の技術開発の加速を狙う。またREE は同協業で、電子制御ユニット(ECU)、OTA によるソフトウェアの更新、そしてSDVのプラットフォームの知見を提供する。

REE の「REEcorner」技術は、ステアリングやブレーキ、サスペンション、駆動システムなど主要な車両機能を各ホイールハウス内にモジュール化した「ゾーンアーキテクチャ」を特徴とし、車両設計の自由度を飛躍的に向上させる。

加えてクラウドサービス「REEai」によって、遠隔でのデータ最適化、予防整備、包括的なフリート管理が可能となる。

ちなみにREEオートモーティブ(NASDAQ: REE)は、独自のソフトウェアにより車両の運行および各種機能を制御するソフトウェア定義車両(SDV: Software-Defined Vehicle)技術を開発・製造する自動車テクノロジー企業。

REE のゾーン SDV アーキテクチャは、既存システムとシームレスに統合し、先進的な設計により安全性・性能・信頼性を一層向上させる。

車両の主要機能を一元化することで、モジュール性・冗長性・安定性を高め、より安全で効率的な車両プラットフォームを実現する。

セキュアなAIと高度な OTA(Over-the-Air)アップグレード機能を備えたREEの技術は、車両のライフサイクル全体を通じて継続的に更新と改善を可能にする。

そのため、Powered by REE® の車両は、顧客や市場の変化に柔軟に対応できるだけでなく、将来的な自動運転やコネクティビティにも適応可能な設計となっている。

*REE の「P7-C」(左)と MFTBC の「eCanter」

なおREEは、米国でフル・バイワイヤ車両の FMVSS 認証を取得した初の企業でもある。駆動・ステアリング・ブレーキを制御する独自のバイワイヤ技術により、機械的なリンケージを不要とし、設計の自由度を高めるとともにパフォーマンスを最適化した。

そんな同社は「競合せず、補完せよ」という理念のもと、REEはOEMやテクノロジー企業に向けて SDV 技術をライセンス提供。この結果、協業する各企業は拡張性と将来性に優れた REE のプラットフォームを活用して、自社のニーズに合った車両を設計・製造できるよう支援している。

MFTBC側は今協業について、同社で副社長・開発本部長を務める安藤寛信氏が、「三菱ふそうの自動運転・ZEV 技術と、REE のバイワイヤ・SDV 技術を組み合わせることで、より優れた物流ソリューションを実現できると信じています。

REE と共に地球温暖化、交通事故、ドライバー不足等の社会課題の解消に取り組めることを大変嬉しく思っております」と述べている。

一方でREEで共同創業者・CEOを務めるダニエル・バレル氏は、「MFTBC の経験豊富なチームと、よりスマートかつ安全な次世代の商用車に向けた志を共有し、協業できることを大変うれしく光栄に思います。

SDV 技術は、お客様の課題を解決するための次世代商用車の開発を加速させるとともに、OTA による更新によって継続的な機能改善を可能にします。

私たちの協業によって、自動運転技術を支える SDV 商用車の新たなベンチマークを打ち立てていけると確信しています」とコメントした。

 
 




 
 

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