メドレー&かごネット、薩摩市の離島で医療MaaSの運用を開始

一般社団法人鹿児島地域医療介護ネットワーク(かごネット/代表理事:久留敏弘)と、メドレーのグループ会社パシフィックメディカル(所在地:高知県宿毛市、代表取締役:小松 広行)は4月28日、鹿児島県薩摩川内市の支援のもと推進している「マルチ医療DX事業」で、有人離島の甑島(こしきしま)での医療MaaSの運用を開始した。

1.背景
本土地域と人口約3,500人の甑島という有人離島を有する薩摩川内市は、過疎化と高齢化が進み、高齢者を中心とした医療ニーズを抱えて生活する住民の増加、高齢者の独居や認知症高齢者を支える世帯の増加など、地域住民を取り巻く様々な課題が生じている。

また2025年1月に政府の地震調査委員会が、南海トラフ巨大地震の30年以内の発生確率が80%程度に引き上がり、3月に中央防災会議の有識者会議から「南海トラフ巨大地震の被害想定」が公表されるなど、自治体による災害への対策も急務となってきている。

そこで薩摩川市は、医療体制の拡充に努め、2023年12月よりデジタル田園都市国家構想交付金を活用した「マルチ医療DX事業」を推進。

このマルチ医療DX事業では、先の鹿児島地域医療介護ネットワークこと「かごネット」と「パシフィックメディカル」が地域の医療課題を解消することで市民にとって安心安全なまちづくりを実現することに乗り出している。

わり具体的には2024年3月から運用している「かごネット」を中心に、患者の医療情報連携や市民向けの健康アプリ「かごマイカルテ」の展開などを通じ、薩摩川内市内の医療DXへの取り組みを進めた。

「かごネット」は県内で初導入の地域医療情報連携ネットワーク

医療介護情報ネットワーク「かごネット」は、鹿児島県内で初めて導入された地域医療情報連携ネットワークを指すもの。

その仕組みは、地域の病院、診療所、歯科、調剤薬局、介護事業所、消防署等の140施設が参加し、これまで複数の医療機関に分散していた患者の診療内容・処方内容・病歴・禁忌薬などの医療情報を共有・参照。

これにより、患者の来院時、救急搬送時などに適切で効率的な医療を提供することが可能となる他、重複検査・重複処方の解消にも繋がっている。

2.今取り組みについて
更に今回「マルチ医療DX事業」に係る取り組みの一環として、甑島住民の医療アクセスへの課題解決を目指し、「かごネット」への接続が可能な医療 MaaS車両の運用を開始した。

というのは、これまで約3,500人の住民が暮らす甑島では、島内の診療所に勤務する医師が出張診療所へ巡回診療を行ってきたが、医療MaaSの導入により、出張診療所ごとの建物や医療機器などの維持・メンテナンスに掛かる費用や手間を削減でき、診療所へ移動することが困難な患者の自宅付近での診療が可能な環境が整うためだ。

車両には、バイタル機器等を搭載し、オンライン診療時には医師の指示のもと看護師等が患者への一部の処置を実施することができる。

これにより、島内の医師が1名体制などになった場合でも継続して巡回診療が行えることから、今後は、看護師等が医療MaaS車両で巡回して医師とのオンライン診療を実施する展開へ繋げていく予定。

更に離島医療では、診療科の偏在も大きな課題となっており、甑島の診療所に於いても本土の専門クリニックや総合病院などと連携して診察を行っている。

ただ慢性疾患などで定期的に薩摩川内市内の本土の医療機関へ通院している患者も多く、今後は、車両でのオンライン診療などを活用することで、本土の医療機関での受診を医療 MaaSによってサポートしていくことも想定しているという。

車両を使って何ができるか、今後、その可能性を探っていく

こうした取り組みについて田中良二 薩摩川内市長は、「マルチ医療DXの根幹となるかごネットで「1地域・1患者・1カルテ」を実現し、正しい医療情報のもと、より質の高い医療が提供される環境が整ったことは、今後の薩摩川内市の医療や地域医療の持続に関し、大きな柱になると思います。

また今回、離島の甑島で医療MaaSの運用が始まりますが、こちらも今後継続的に医療を提供する手段として、どのような活用が図れるかのチャレンジとなります。

車両を使って何ができるのか、今後、その可能性を探っていくことになるかと思います。

しかし、かごネットやかごマイカルテ、医療MaaSなど、これらが複合的に絡むことにより、効果的で持続可能な医療や介護の提供が可能となって市民が安全・安心に暮らせるまちづくりに寄与し、地域の健康を守ることに繫がると確信しています」と述べた。

3.参考
今回の運用開始にあたり、4月27日に下甑手打診療所でセレモニーを実施。薩摩川内市長 田中良二氏、薩摩川内市議会議長 下園政喜氏、一般社団法人鹿児島地域医療介護ネットワーク理事 藤井規好氏、一般社団法人鹿児島地域医療介護ネットワーク事務長 新盛和久氏、下甑手打診療所長 室原誉伶氏をはじめ、地区コミュニティ協議会や地域住民の皆様、市職員などが参加した。

田中市長のご挨拶から始まったセレモニーでは、医療MaaS車両のお披露目に伴うテープカットや車両の説明・内覧、デモ診療などが行われた。

今後は、これらの運用で複数の医療機関に分散されていた患者の医療情報(診療内容・処方内容・病歴・禁忌薬など)を共有・参照でき、患者の来院時、救急搬送時などに適切で効率的な医療を提供できる他、重複検査・重複処方の解消にも繋がる。

また患者は個々人に発行される「かごネットカード」やマイナンバーカードを用いてデータ共有・参照の同意を行う。なお当該システムは、パシフィックメディカルの提供するクラウド型 医療・介護連携システム「MINET」をベースに開発・運営されている。
URL:https://kago-net.jp

「かごネット」と組み合わせる「かごマイカルテ」は、 日々の体重や血圧といったバイタル情報の登録・管理、かかった医療機関の処方・検査内容の確認などができる市民向けのスマートフォンアプリ。日々の健康管理でポイントを貯め、貯めたポイントに応じて特典を受けることができる。

この連携により「かごネット」に登録された自身の医療データの一部や、マイナポータルに登録された特定健診情報等も閲覧可能。家族とも日々のバイタルや診療情報(検査結果・処方情報)を共有することができるようになった。
URL:https://kago-net.jp/app

今後は、クラウド型 医療・介護連携システム「MINET」を利用し、地域一体で患者を看ることができるようにして、「情報集約・統合の自動性」「一元的な情報管理」「双方向の情報共有・参照」といった特徴を活かして、医・薬・介における多職種連携の効率化と患者へのよりよい医療・介護の提供を目指していくという。URL:https://pcmed.jp/minet