出光興産株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:月岡 隆、以下「出光興産」)と昭和シェル石油株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長グループ CEO:亀岡 剛、以下「昭和シェル」)は5月9日の午後2時、当初想定していた経営統合に先立ち、企業グループを形成して協働事業を強化・推進すると発表した。
その手法は、両社に於けるアライアンスの強化な推進であり、目指す協働事業は事業内容こそ異なるが、ルノー・日産自動車のアライアンス体制に近づく程のもので、両社は現状の経営上の障害を越えて、経営統合に等しいシナジー効果の先取りを積極的に目指すものとなっている。
その協働事業の強化・推進策は以下の通り
1.アライアンスの目的等
(1-1)アライアンスの目的
両社によると現在の事業観の厳しさは、より厳しさを増しているとし、特に石油精製、販売の分野においては需要の減退を主因として、これまで共に歩んできた特約店や販売店、運送会社、協力会社の将来の経営に対し多大な影響を及ぼしていると云う。
両社は上記認識を踏まえ、これまで通り統合の早期実現を目指しているものの、統合が完全に実現するまでの時間も最大限有効に活用し、両社の企業価値をさらに向上させるべく、シナジー効果の先取りを図るとしている。
具体的には、両社で対等なパートナーとしてアライアンスを組み、統合に向けたプロセスを再開・加速しながら、広範囲にわたって協業を深化させていく。
なおこの取り組みと同時に、この過程を通じて、両社従業員による会社組織を超えた交流・融和を促進していく。
(1-2)アライアンス名
両社は、アジア屈指の競争力を持つ企業グループとして、環境変化を先取りし、弛まず自己改革に取り組み、果敢に次代の創造に挑戦することを、この協業の取り組みにおけるアライアンス・バリュー(価値観)とし、「Brighter Energy Alliance(ブライターエナジーアライアンス)」というアライアンス名を定めた。
2.アライアンスの内容
(2-1)国内石油事業における統合シナジーの追求
統合にむけた準備の一環として以下の案件を協議し、積極的に実施していくことを通じ、統合シナジー効果の先取りを実現する。
– 原油の調達と輸送の最適化
– 生産計画の最適化
– 生産最適化のための製品・半製品の相互融通(両社製油所の定期修繕期間を含む)
– 物流分野における配送効率化(陸上、海上)
– 精製コストの削減
– 省エネ、精製マージン改善施策のベストプラクティスの展開
– 製造部門の共同調達の推進による調達コストの削減
(2-2)シナジー目標
両社は、早期に本統合を実現し、その効果として2015年11月に公表した統合効果である5年以内に年間500億円のシナジーを達成することを目指す。
その一環として、2017年4月から3年以内に年間250億円以上のシナジー創出を目指していくとしている。
(2-3)重複分野における事業戦略のすり合わせ
将来の統合後に、両社で重複することになる各事業分野(原油調達、精製、供給、物流、販売、コーポレート部門)について、未来の統合実現までの間に両社で戦略のすり合わせを行い、顧
客価値を向上させ、より効率的で競争力のある企業となるための方策について協議・検討を行う。
但し販売事業については、各社の体制を直ちに変更するものではなく、当面は個社を基本に据えた事業活動を行っていくとして、販売上の協業については一定の釘を刺した格好だ。
(2-4)アライアンスグループ及び統合新社の戦略検討
両社は企業グループとして、事業の効率性及び競争力強化が結実する可能性のある取組みについては、両社トップマネジメントが参加する「戦略トップミーティング」等を通じて、精力的に検討を進めていく。
(2-5)人的融和の推進
両社でこれまで実施してきた各階層でのワークショップを再び始動ささせる。
具体的には、両社の文化、行動規範及び仕事の進め方の違いを相互に認め合い、その上で本統合後の文化、行動規範及び仕事の進め方を探求していくことで人材の融和を図る。
これについては既に両社社員800名が、この融和のためのワークショップに参加しており、本年度中にその規模をさらに1,500名まで拡大していく。
(2-6)顧客視点での新たなサービス開発
両社は特約店、販売店を通じ多くの顧客を有しているが、今以降はリテール開発に関わるタスクチームを立ち上げ、顧客にとっての利便性・サービス向上に向けた商品開発を進めて行く。
(2-7)社会貢献活動の一層の推進
両社は、社会貢献活動の分野においても協業をより強力に推し進めていく。これは両社で実施している地域貢献活動、次世代育成について共同で取り組んでいくものとなる。
該当領域について具体的な例では、製油所・事業所近隣地域で実施しているコンサートの実施。就学生を対象とした教育機会の拡大などが該当する。
(2-8)低炭素社会実現への取り組み推進
両社は、化石燃料を取り扱う企業として、双方が有する幅広い再生可能エネルギーメニュー(ソーラー、地熱、バイオマス、風力、研究テーマ(人工光合成、リチウムイオン電池)等)を活かした新たな二酸化炭素削減策を策定していく。
3.アライアンスの日程
(3-1)趣 意 書 締 結 日 :2017年5月9日
(3-2)ア ラ イ ア ン ス 開 始 日 :2017年5月9日より順次開始
5.石油製品・半製品の相互融通
(5-1) プラント定期修繕時の協力
両社は定修時の製品融通を実施していく。
・ 6~7 月 :出光興産から昭和シェルへ揮発油、軽油を供給。
・ 4 月、10~11 月:昭和シェルから出光興産へ揮発油、軽油を供給。
6. 輸出入の最適化
昭和シェル新潟、出光興産北海道の各輸入基地の相互活用。
(6-1)原油タンカー共同配船(2017 年 5 月積み~)
・ 全船(約 20 隻)の配船ポジション共有化とそれに基づく両社間での船の貸借り実施。
・ 原油タンカー燃料の相互融通/共同調達。
(6-2)最適生産計画システム一体化
・ 統合最適生産計画システム構築(2016 年 8 月~2017 年 9 月末)
・ 運用開始・システム検証(2017 年 10 月~)
7.共同調達(契約更新毎に順次実施)
・ 石油精製プロセス用触媒及び薬品
・ 燃料油用添加剤
・ 機材:熱交換器
・ 両社社内ネットワーク費用削減
8.出荷基地の共同利用と共同配送(2017 年 10 月~)
初期段階として、約 1,100 千 KL を対象に物流効率化を図っていく。
・ 相互(京浜地区):東亜石油(川崎)↔出光興産東京油槽所
・ 相互(中京地区):昭和シェル四日市↔出光興産愛知製油所
・ 相互(静岡県):出光興産大井川油槽所↔昭和シェル清水油槽所
・ 片側(昭和シェル受け):北海道、高松、長崎、鹿児島、沖縄
・ 片側(出光興産受け):高崎、松本、山口(西部石油)
・ 海上輸送効率化(例. 四日市から東亜、千葉から愛知へ輸送している交錯転送を効率化等)