日産自動車株式会社(本社:神奈川県横浜市西区、社長:カルロス ゴーン、以下「日産」)、ヒューレット パッカード エンタープライズ(本社:米国カリフォルニア州パロ・アルト、CEO:メグ・ホイットマン、以下「HPE」)とシーメンスAG(本社:ドイツバイエルン州ミュンヘン、CEO: ジョー・ケーザー、以下「シーメンス」)は12月21日、グローバル開発拠点から、車両開発に関わる最新データを常時利用することができる、自動車業界初※1の高速次世代設計基盤を共同で構築した。
設計基盤には、Virtual Desktop Infrastructure:デスクトップ仮想化(エンジニアリングVDI)を採用することで、国際間での車両開発の柔軟性と、管理の効率化を目指したもので、早くも米国や欧州などで利用を開始している。
この上記、エンジニアリングVDIとは、高度なグラフィックス処理に対応した技術のことで、サーバー上に用意された3次元CADの仮想ワークステーションに、車両設計の技術者がアクセスすることで、デスクトップ上の画面を操作することができるシステムである。
同技術によって、日産のエンジニア達は、いつでも国際間で同期が取られた最新データに、いつでもアクセスすることができるようになった。
またこうして設計データを、サーバー上の1箇所に集約することで、運用管理性や利便性を高めるだけでなく、コストの効率化や災害時のリスクマネジメントも実現したことになる。
このような本格的なグローバル間のエンジニアリングVDIによる次世代開発基盤は、最先端のグラフィックス処理技術を搭載したサーバー、ソフトウェア製品、及びネットワーク高速化技術が背景になっているもの。
日産では、この国際間の設計環境を、まず(NTCNA)日産テクニカルセンターノースアメリカ、(NTCE)日産テクニカルセンターヨーロッパの二ヵ所の開発拠点で利用していく構えだ。
同基盤により、日産はグローバル拠点におけるCAD業務を、拠点によらず同等にできると共に、インフラの集約・管理性を高めることで、将来のシステム導入期間やバージョンアップ費用、及び運用管理工数を大幅に削減できる見込みだという。
また、本基盤により、グローバルでの車両開発に関して、フレキシブルなシステム対応が可能になるため、今後に於いても順次適用地域を拡大していく予定としている。
一方、ヒューレット パッカード エンタープライズは、この次世代設計基盤構築に於いて、最新のブレード型ワークステーションと統合ストレージ、デスクトップ仮想化技術により複数ユーザーでリソースを共有するエンジニアリングVDI環境を提供している。
同環境構築に関わる提案は、コンサルティングから、ハードウェア機器、ソフトウェア、サポートまで包括したもので、本プロジェクトを支援するため、ヒューレット パッカード エンタープライズは日本、米国および欧州にわたる横断的なプロジェクトチームを立ち上げ、導入、検証、問題解決をグローバルな体制で柔軟かつ迅速に行い、スムーズな運用開始に貢献した。
なお同エンジニアリングVDI環境を構成するヒューレット パッカード エンタープライズの基幹テクノロジーは、以下の機器とソフトウェアが含まれる。
- ブレード型ワークステーション「HPE ProLiant WS460c
- Graphics Server Blade」
- 統合ストレージ「HPE 3PAR StoreServ 7400」
- ソフトウェア「HPE Systems Insight Manager」
- デスクトップ仮想化技術「Citrix XenDesktop」
上記機器とソフトウエアを介して、高度な開発業務を仮想化するためには、高性能ワークステーションをサーバーと同レベルの運用管理機能で利用できる、ブレード型ワークステーションが適している。
それを実現したことにより、拠点の開発者の生産性向上が可能となると同時に、サーバー上にデータを集約することで、運用管理やコストを効率化し、障害時におけるリスクマネジメントが許容出来るようになった。
ストレージは、専用ASICによる高パフォーマンス、4コントローラー構成によりメンテナンス時や障害時もパフォーマンスを維持できる構成となっている。
この環境構築にあたってシーメンスは、ソフトウェア技術の基盤を提供している。シーメンスのソフトウェアNX™は、日産でエンジニアリングや車両開発全般にわたって利用されているCADソリューションだ。
高水準のVDI環境実現を保障するため、NXはその上で必要とされる全てのハードウェアとして認定されている。加えて、シーメンスTeamcenter®がデジタル基盤として強力に日産VDIを支える。
Teamcenterは、地域を超えて適切な人員が、あらゆる製品に関連する情報に対して容易かつ迅速にアクセスできることを実現する包括的な製品情報管理システムである。
以上このたびの発表について、日産グローバルIS/IT担当の常務執行役員である行徳セルソ氏は、「グローバルに新規事業が拡大する中、IT活用の重要性は益々高まっています。グローバルIS/IT戦略を軸に、経営とITの連動に取り組むことで、日産の企業価値の更なる向上に貢献していきます」とコメントした。
これを受けてヒューレット パッカード エンタープライズは、「世界市場での成長をさらに加速することを目指す日産のグローバルIS/IT中期経営計画を、グローバルITパートナーとして支援します」と語っている。
さらにシーメンスのデジタルファクトリー事業本部のビジネスユニットでは、「シーメンスはグローバル製造業のデジタル化を可能にする最先端を走っており、HPEのようなパートナーとともに、日産の先進的な取り組みに協力できることを誇りに思っています。
こうした日産の取り組みの成果であるVDIモデルは、グローバル自動車産業をはじめ多くの産業にとって偉大な前例となるでしょう」と述べている。※1 NVIDIA社調べ