タナックが首位を守りきりチーム加入後、初優勝。ラッピは総合8位で完走を果たす
2018年FIA世界ラリー選手権(WRC)第5戦ラリー・アルゼンティーナの競技最終日デイ4が4月29日、ビジャ・カルロス・パスの西南エリアで行なわれ、TOYOTA GAZOO Racing World Rally Teamのオット・タナック/マルティン・ヤルヴェオヤ組(ヤリスWRC #8号車)が今シーズン初優勝を果たした。
また、ラリー・アルゼンティーナ初出場だったエサペッカ・ラッピ/ヤンネ・フェルム組(#9号車)は、総合8位でフィニッシュした。
ラリー・アルゼンティーナのデイ4は、サービスパークが置かれるビジャ・カルロス・パスの西南エリアに広がる山岳地帯で3本のSSが行なわれた。
デイ3までに10本のSSベストタイムを記録し2位の選手に46.5秒という差を築いていたタナックは、難易度が高いステージが続くデイ4では、勝利を確実にするためペースをやや抑えて走行。最終的には2位に33.7秒差をつけ、チーム加入後5戦目にして優勝を達成した。
なお、タナックとチームはドライバーズ選手権およびマニュファクチャラーズ選手権で現在3位につけており、2位との差は前戦よりも縮まった。
デイ3で総合6位につけていたラッピは、初出場のアルゼンチンで何度もパンクに見舞われ、デイ4でも最初のSSでパンクを喫し、順位をふたつ下げ総合8位でラリーを終えた。
いくつかのSSではトップに迫るスピードを示し、WRCの中でも1、2を争うほど困難と言われるラリーですべてのSSを走り切り、多くの経験を積み重ねた。またヤリ-マティ・ラトバラはデイ2でクルマを石にヒットした結果リタイアとなったが、パフォーマンスについてはトップを競えるレベルを維持している。
WRC 2018年 チーム
豊田 章男(チーム総代表)
日本から見て地球の反対側となるアルゼンチンからタナック選手のヤリスでの初優勝のニュースが届いたこと大変嬉しく思います。タナック選手、ヤリスでの初優勝おめでとう、ありがとう!そして、応援いただいたファンの皆様、本当にありがとうございました。
昨年のラリー・アルゼンティーナで、我々のヤリスはその荒い路面に徹底的に傷めつけられました。しかしチームメンバーはそこから学び、改善し、今年は表彰台の頂点に立てるまでのクルマを作りあげてくれました。
今回は残念ながらリタイアしてしまったラトバラ選手も、タナック選手に匹敵するペースで走り「ヤリスは本当に速かった」という心強いコメントをしてくれました。
8位で走りきったラッピ選手も初のラリー・アルゼンティーナで、数多くのことを学べたと頼もしいコメントを残してくれています。WRCの道の上で、全てのチームメンバーが成長を続けクルマが鍛えられていること、本当に頼もしく思います。
2年目のシーズンはこれから中盤戦に入ります。今後もファンの皆様に嬉しいニュースをお届けできるよう、我々TOYOTA GAZOO Racing WRTは全力で走り続けます。引き続き、応援よろしくお願いいたします。
トミ・マキネン(チーム代表)
我々チームにとって本当に素晴らしい結果になりました。オットは週末を通して非常に力強く、最終日はやや抑え気味のペースでしたが、とても難しいステージでしたので、この素晴らしい勝利のためにあえてリスクを冒す必要はまったくなかったと思います。
オットがチームに加入して最初の優勝は、もっともハードなラリーのひとつであるアルゼンチンで実現されました。このような困難なコンディションで、我々のクルマが速さと強さを備えていることを皆さんの前でお見せすることができたと思います。
週末を通してこれほどの強さを発揮できるとは、以前は夢にも思いませんでした。アップ&ダウンのラリーが続いていたので、この勝利にはとても重要な意味があります。
クルマに高いパフォーマンスがあることは分かっていましたが、チームがハードワークを続けたことによってついに素晴らしいリザルトを得ることができました。今後も変わらず良い方向に進んで行くことを期待しています。
オット・タナック(ヤリスWRC #8号車)
このチームで最初の優勝を飾ったことに特別な思いを感じます。改善を重ねた結果クルマは急速に進化し、現在は完全に私が望む状態に仕上がり、確固たる自信を持って走ることができています。
また、チームが私をしっかりと支え続けてくれることに心から感謝しています。この難しいラリーで初めて優勝でき、とても満足していますが、決して簡単なラリーではありませんでした。序盤はかなり激しく攻め2位との差が大きく広がったので、以降はペースをうまくコントロールすることができました。
そして今日は、さらに余裕を持った走りをしました。すべてが良い方向に向かっており、上位との選手権のポイント差も縮まってきています。シーズンはまだ長いので、次戦以降も今回と同じように戦い続けたいと思います。
エサペッカ・ラッピ(ヤリスWRC #9号車)
今回のラリー・アルゼンティーナではいくつかポジティブな要素がありました。初出場にも関わらずペースは自分が予想していた以上に良かったと思いました。
我々のクルマが今回のラリーでベストだったことは、オットがラリーを通して速かったことでも明らかです。彼の勝利を心から祝福したいと思います。今週末は何度もパンクをしてしまいましたので、何が原因なのかを精査しなければなりません。
色々な事が起こり多くのタイムを失ってしまいましたが、すべてのステージを走り切り、多くの経験を得ることができたのは収穫です。
シーズン序盤は経験が十分ではないラリーが続いたこともあり簡単には行きませんでしたが、ポジティブな事も多くありましたので、それを次のラリー・ポルトガルで活かしたいと思います。
ラリー・アルゼンティーナ デイ4の結果
1.オット・タナック/マルティン・ヤルヴェオヤ
(トヨタ ヤリスWRC)3h43m28.9s
2.ティエリー・ヌービル/ニコラス・ジルソー
(ヒュンダイ i20 クーペ WRC)+37.7s
3.ダニ・ソルド/カルロス・デル・バリオ
(ヒュンダイ i20 クーペ WRC)+1m15.7s
4.セバスチャン・オジエ/ジュリアン・イングラシア
(フォード フィエスタ WRC)+1m58.6s
5.アンドレアス・ミケルセン/アンダース・ジーガー
(ヒュンダイ i20 クーペ WRC)+2m02.6s
6.エルフィン・エバンス/ダニエル・バリット
(フォード フィエスタ WRC)+3m06.3s
7.クリス・ミーク/ポール・ネーグル
(シトロエン C3 WRC)+3m25.7s
8.エサペッカ・ラッピ/ヤンネ・フェルム
(トヨタ ヤリス WRC)+4m32.6s
9.テーム・スニネン/ミッコ・マルックラ
(フォード フィエスタ WRC)+5m38.6s
10.ポントゥス・ティディマンド/ヨナス・アンダーソン
(シュコダ ファビア R5)+12m15.8s
WRC次戦は、5月17日から20日にかけてポルトガル北部ポルト近郊のマトジニョスを中心に開催される、シリーズ第6戦「ラリー・ポルトガル」となる。
コースはグラベル(未舗装路)だが、砂状の路面や硬い岩盤の路面などコンディションは様々。1回目の走行では路面の表層が「ルーズグラベル」と呼ばれる滑りやすい砂や砂利によって覆われているため、走行順が早い選手は十分なグリップが得られない状況で走ることになる。
また、2回目の走行では路面が掘れて深い轍(わだち)が刻まれ、掘り起こされた石によってパンクの危険性が高まるなど、ラリー・アルゼンティーナと同様タフな戦いが予想される。