成長事業が見当たらないパナソニックの苦悩、営業利益が28.6%減


パナソニックがもがいている。構造改革も思うように行かず、業績を伸ばす成長事業も見当たらない。在任9年目に入る津賀一宏社長も頭を痛めていることだろう。5月18日に発表した2020年3月期連結決算は、売上高が前期比6.4%減の7兆4906億円、営業利益が28.6%減の2938億円、当期純利益は20.6%減の2257億円と減収減益だった。(経済ジャーナリスト・山田清志)

テレビ事業は2020年度も赤字に

オンライン会見を行った梅田博和CFOによると、売上高は事業ポートフォリオ改革、中国での投資需要低迷に加えて、新型コロナウイルス感染症拡大の影響によって減収となり、営業利益と純利益は事業構造改革費用などで減益になったとのことだ。

オンライン会見を行った梅田博和CFO
オンライン会見を行った梅田博和CFO

セグメント別業績では、アプライアンスは空調が増収となったが、スマートライフネットワークの減収やコロナ影響によって全体としては減収になった。営業利益は空調や日本のホームアプライアンスが堅調だったが、減販損および構造改革費用などにより減益となった。

なかでも懸案のテレビ事業は現在、協業先を模索している段階で、あらゆる可能性を持って協業先と協議をしているそうだ。「テレビ事業は、2019年度は100億円を超える赤字であったが、21年度の黒字化の計画に変更はない。2020年度は赤字となるが、二ケタ億円でそれほど大きな赤字にならないと見ている。固定費の改善や地域を絞り込んだ販売、そして協業先との連携により改善を図る」と梅田CFOは説明する。

ライフソリューションズは、売上高が配線器具などを扱う電材事業やハウジングが堅調に推移したが、パナソニックホームズの非連結化影響などで減収となったが、営業利益は住宅関連事業の増益に加え、事業譲渡益を計上したことにより増益を果たした。

コネクティッドソリューションズは、売上高がプロセスオートメーションやアビオニクスの減販、またコロナ影響が全事業に及んだために減収となった。営業利益はモバイルソリューションズやパナソニックシステムソリューションズ ジャパン(PSSJ)の増益、事業譲渡益があったが、減販損が響いて減益になった。

インダストリアルソリューションズは、売上高が米中貿易摩擦の影響やコロナ影響、また営業利益については半導体の減損などもあり、減収減益となった。

在任9年目に入る津賀一宏社長
在任9年目に入る津賀一宏社長

車載関連事業は赤字幅が拡大

そして、オートモーティブ。パナソニックは当初、自動運転や電動化など「CASE」の波に乗って、車載電池などでメガサプライヤーになる成長戦略を描いていた。しかし、それがなかなかうまくいかず、2019年度の営業赤字が466億円に拡大してしまった。

「車載電池の増産投資効果があったものの、市況の減速や新型コロナウイルスの影響、車載機器の製品サイクル移行期による減販をカバーできずに減収となった。営業利益は、円筒形車載電池の北米工場が第3四半期に引き続き、第4四半期も黒字を達成し、収益性を大きく改善したが、角形車載電池の固定費や欧州充電器の開発費増、のれん減損などによって減益になった」と梅田CFOは説明する。

また、黒字化を果たした北米工場は20年3月末に生産能力が32GW/hに達成したが、4月はロックダウンのために生産が落ち込んだそうだ。しかし、すでに35GW/hに向けた設備は入っていて、今後は材料のレシピの改善と技術革新の取り組みを行っていく。「今後の生産拡大に向けては、テスラからは強いデマンドがあり、協議しているところだ」と梅田CFO。

とは言っても、赤字幅は拡大したわけで、早急に車載機器の開発費の抑制や円筒形車載電池の増販、生産性の改善に取り組む必要があるのは言うまでもない。「経営環境は、新型コロナウイルスの感染拡大などで不透明性を増しているが、低収益体質からの脱却に向けた取り組みは着実に進めていく」(梅田CFO)とのことだ。

こうしてパナソニックの事業を見渡してみると、リストラやコスト削減が必要な事業が多く、売り上げを大きく伸ばすような成長事業が見当たらない。それがパナソニックの大きな問題と言っていいだろう。

山田清志
経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。