11月8日(日)に開催されたMotoGP世界選手権・第18戦バレンシアGPに於いて、Movistar Yamaha MotoGPから「YZR-M1」で参戦するホルヘ・ロレンソが優勝し、世界選手権では通算 5 回目、MotoGPでは3回目となるチャンピオンを獲得した。
これにより、ヤマハ発動機株式会社(本社:静岡県磐田市、社長:柳弘之、以下、ヤマハ発動機)の最高峰クラスにおけるライダータイトルの獲得は、1975年のジャコモ・アゴスチー二以来17回目となった。
J・ロレンソとV・ロッシは、シーズン最終戦バレンシアGPに於いて、「Movistar Yamaha MotoGP」のチームメイト同士がチャンピオンシップを争うという熾烈な戦いに挑んだ。
ロレンソはこうした緊張にも堂々と立ち向かい、スタートからゴールまでトップをキープし、MotoGPでは自己通算40回目の優勝を獲得。
一方、ロッシも最後尾の26位から4位まで挽回するという驚異的な走りでチェッカーを受けた。シリーズポイントでは、ロレンソがロッシを5ポイント上回りチャンピオンを決定。ロッシはランキング2位を獲得した。
レースは、前日の予選でポールポジションを獲得したロレンソは、決勝も完璧なスタートでホールショットを奪い、M・マルケス(ホンダ)、D・ペドロサ(ホンダ)がこれに続いた。
ロレンソは、1分31秒台半ばでコンスタントに周回を重ねながら、徐々にアドバンテージを拡大。一時は0.7秒まで開いたが、レース中盤に入るとマルケスが少しずつ差を縮めて追いついてくる。
これで再びレースの行方は分からなくなったが、ロレンソは、マルケスやその後方から追い上げるペドロサのプレッシャーをはねのけて、集中を乱されることなく周回を重ねた。
終盤に入ると、ペドロサが勢いを取り戻してペースを上げ、マルケスとバトルを展開。ロレンソにとってはこれが絶好のチャンスとなり、再びわずかにアドバンテージを広げて最終ラップを迎えた。
マルケスとペドロサはその後もロレンソの動きに懸命についてきたが、ロレンソのペースは速く、チェッカーまでに0.263秒差を埋めることはできなかった。
一方のロッシは、グリッド最後尾の26位からスタートし、オープニングラップで15位まで挽回。
さらに3ラップ目までに9位へ浮上。次に、1分31秒820の自己ベストタイムでブラッドリー・スミスとの差を一気に縮めたが、そのままパスすることはできなかった。
そこで、これまでの豊富な経験から、1周半の時間をかけてチャンスを待ち8位へ。さらにその数分後には、前方を行くペトルッチがコーナーではらむ間に7位へと浮上した。
次のターゲットはエスパルガロ兄弟。ロッシはまずP・エスパルガロに近づいて、いくつかのコーナーを抜けてからパス。さらにA・エスパルガロ(スズキ)にしかけ、2度目のトライで前へ出ることに成功した。
続いてA・ドビツィオーゾも抜き去ると、ついには4位まで浮上。しかしチャンピオンには、あと5ポイント足りない状況だったため、残り14ラップで、ペドロサまでの11.488秒を縮めなければならない。
ロッシは全力を尽くしてプッシュし続けたが、これによってタイヤを激しく消耗、結局、トップ3のラップタイムに追いつくことはできなかった。
マルケス、ペドロサと競り合うロレンソのペースはわずかに落ちたが、ロッシは近づくことができず、そのまま4位で2015シーズン最後のチェッカー。トップとの差は19.789秒に開いていた。
この結果、ロレンソがヤマハにチャンピオンをもたらし、2位にマルケス、3位にペドロサとなった。これによりヤマハは三冠に加えて、ライダー・ランキングの1位と2位を獲得。さらにはMonsterYamaha Tech 3のB・スミスが6位でゴールし、サテライト勢トップのランキング6位も獲得している。
ホルヘ・ロレンソ、ヤマハ(優勝)
「今回のレースは、とても大きなプレッシャーだった。なぜなら、後ろに2人のライダーがいることがわかったし、彼らに抜かれた場合、僕はタイトルを失うこともわかっていたからだ。
しかも、終盤はマシンの挙動が激しくなっていたため、ペースが落ちていた。でも、最終コーナーを立ち上がりチェッカーフラッグが見えた時は、本当に信じられないような気持ちだったし、最後の最後にチャンピオンを手にすることができたことも夢のようだ。
そこからは涙、涙ですばらしい1日に感激したよ。これで最高峰クラス3度目のタイトル。ウエイン・レイニー、ケニー・ロバーツ、そしてアイルトン・セナに並んだわけだから、本当にすごいことだ!
今日を、今週を、心からエンジョイしなければならない。こんな感動はなかなか味わえるものではないからね。今まで、バレンティーノ、マルク、ケイシー、ダニとともに走ってきた。
僕にとってこの4人が21世紀で最高のライダーだ。最初に獲得したタイトルは特別だったけど、4人のレジェンドとチャンピオンシップを戦ったことがとても重要だった。
今シーズンは初めからずっと追いかける形だったので、最終戦で逆転チャンピオンをつかんだ瞬間は、本当に特別で、これ以上の感動的なエンディングはないと思う。
今は、2016年のことは考えたくない。もう少し経って、テストの間、あるいはテストの後で考えるようになるだろう。今はただ、チームのみんなと一緒に、いつまでもこの喜びを味わっていた
い」
マルク・マルケス、ホンダ(2位)
「とても難しいレースだった。集中していつものように走ったが、ホルヘ(ロレンソ)がトップで力強くプッシュしていて、彼についていくのは大変だった。
ダニは僕たちと2秒離れていた。何周かはフロントタイヤが限界で、かなりの挙動があった。残り6周あたりでホルヘに追いついたので、優勝できると思っていた。
ダニがあんなに速くパスしてくるとは思っておらず、彼はパスした時にコース上で大回りとなり、それを利用して再び抜けたが、ホルヘはすでに0.5秒離れていたので、そのギャップを取り戻すのは不可能となった。最終ラップまで100%で走りましたが無理だった」
ダニ・ペドロサ、ホンダ(3位)
「とてもうれしいです。レースを楽しんだ。特に最終パートは楽しかった。それまでは、少しバトルから離れて3番手を走っていおり、それ以上速く走る方法が見つからなかった。
というのは、ブレーキングとコーナリングに問題があったから。今週末はいいセットアップを見つけるのに苦労した。
結果、上位に上がることができたが、いい感触はなかった。レース中になんとかしようと思っったものの、難しかった。
けれども終盤で速く走る方法を見つけ、いい走りができ、追い上げられた。追いついた時に残り2周だと知り、アタックしようとした。
しかしマルクをオーバーテイクしたときにはらんでしまい、彼にパスされた。
けれど、チャンピオンシップで4位になれたのは嬉しい。これはシーズン終盤で取り組んだ姿勢と進展のおかげだろう。自身もとても強くなれたと思う。この冬と来年も、この調子で続けられることを願っている」
バレンティーノ・ロッシ、ヤマハ(4位)
「初戦から好調をキープして、順調にシーズンを組み立ててきた。素晴らしいシーズンだった。常に上位で戦う力を持ち続け、ミスもまったくなかった。
もてぎのあとはチャンピオンの可能性も見えたが、残念ながら、フィリップアイランドからは何かが変わってしまったんだ」
M・メレガリ、チーム・ディレクター
「ホルヘが好調なときには誰も追いつくことができない… 彼は今日もそれを証明し、こうして5回目のタイトルを獲得した。
今シーズンはずっと全力でプッシュし、常にチャレンジし、決してあきらめなかった。私は今、チームの一員として、この素晴らしい時間を共有できることを誇りに思っている。
もちろん、これはライダーひとりの力だけで成し遂げられることではない。だから、この栄冠を実現させるために、そのプロフェッショナリズムと努力を惜しみなく注いでくれたチームのメンバーたちにお礼を言わなければならない。
一方のバレンティーノも、依然として世界最高のライダーであり、チャンピオン候補のひとりであることを証明した。
今日も26位から4位まで追い上げるという本当に見事な戦いぶりを見せてくれた。このように素晴らしいライダーふたりが互いにチャンピオンを争う姿は、我々だけでなく世界中のファンたちを魅了したことだろう。
ホルヘ、バレンティーノ、そしてチームのみんなで勝ち取った三冠は、我々を支えてくれたすべてのファンへの最高の贈り物になったと思う」